511ユーキの美味しいじゃがいもスープと報告(エシェット視点)
部屋を移動してすぐだった。話を始める前に少し休ませろと言い、ソファーに座りゆっくりしている所へ、アメリアがやって来た。それに付いてくるように、ユーキ達の気配も。何故かゆっくりゆっくり、つかず離れずといった感じで、アメリアに付いて来ていたが。
「旦那様、よろしいでしょうか」
「ああ、まだ話を始める前だ。入れ」
「とうしゃん、ぼくもはいってい?」
「何だ、ユーキまで来たのか? これから話し合いを始めるから、少しだけだぞ」
ウイリアムがそう言うと、先にユーキが部屋の中に入って来て、後からアメリアが台を持って入ってきた。ふむ。良い匂いがするな。
「えと、エシェットとルトブル、ちゅかれてるでしゅ。ぼくのとったジャガイモのスープたべて、げんきなって」
ユーキが一生懸命背伸びをしながら、台に載っていて大きな蓋のようなものを開けようとする。それを手伝うリュカ達。なんとか蓋を開けると、さらに良い匂いが部屋の中に充満し。
「ああ。そう言う事か。じゃあエシェット達がそれを食べ終わたら話を始めよう。それで良いか?」
「ああ」
「我もそれで良い」
我とルトブルの前に、アメリアと一緒にスープの入ったお皿を、そっとそっと運んでくるユーキ。そしてお茶の入っているカップとスプーンを持ってくるリュカ達。なんとか我等の前にすべてを準備すると、じっと我等のことを見て来た。どうも我等の反応が気になるようだ。
すぐに2人でスープを一口食べる。どうだと言わんばかりに、ニコニコというよりもニヤニヤといった感じの表情になったユーキ。
「ホクホクしていて美味しいジャガイモだな」
「それにこんなに具が入っているという事は、ユーキ達は収穫を頑張ったんだな。美味しいジャガイモをありがとう」
2人で褒めてやれば、ニヤニヤからニコニコに戻るユーキ。そしてさらにニッコリとなり、少し照れるようにしてもじもじした。
「さぁユーキ。2人にゆっくり食べさせてあげなさい。それから話し合いだ」
「うん!! みんな、エシェットたちゆっくり。おへやもどるでしゅ!!」
『わぁぁぁぁ!』っと部屋から出て行くユーキ達。アメリアも後で片付けに来ると、そのまま部屋から出て行った。
その後、我等はゆっくりと、ユーキの採ったジャガイモを味わい。しかもおかわりがあると聞き、もう1度スープを味わってから、話し合いをすることになった。
しかし、本当に美味しいスープだった。前までの物よりも美味しくなっているのではないか? ユーキの力によって、キミルの力が強くなり、その影響がこの街の畑にも表れたか?
ウイリアム達は何も言っていなし、ただ美味しいと思って食べていただけかもしれないが。まぁ。これくらいなら別に言わなくとも良いだろう。作物が美味しくなる。それは良い事だからな。
ようやく食べ終わり、そろそろ話を聞かせてくれとウイリアムが。まったく、せっかくユーキが採ったジャガイモの、美味しさを噛み締めているというのに。そう思ったのは我だけではなかったようで、一瞬ルトブルが嫌そうな顔をしていた。
仕方がない、話を始めるか。きっとこの話し合いが終わる頃には、ユーキ達はすでに眠ったあとだろう。明日もう1度ありがとうを伝えるとするか。
ひと口お茶を飲み、ソファーに座り直すと、今日見て来た森の様子をウイリアム達に伝えた。
「お前の話と、我らが見たもの。違いはそんなになかったが。だが場所によってはかなり酷い事になっている森もあった」
「あれではハゲ山と言ってもおかしくないだろう。地面が丸見えになってしまっている山がいくつかあった」
「そんなにか!?」
「1番酷い森を中心に色々見て来たが、そういう森もあった事は事実だ」
「そんなに酷い状況だとは。全ての森を調べられていなかったからな」
「もともと自然に起こった事は、キミルが力を貸してもダメな事は分かっていたが。あの状況では、いくら頑張っても、何もできないだろう。」
『僕、そんなに酷いの見た事ないよ』
「だろうな。たまたまなのか。それともそれだけ酷くなる程、森と土地を酷使したのか」
「そういえば…」
ウイリアムがそれだけ酷い状況なら、空から森の様子が良く見えただろうと、魔獣達の姿はなかったかと聞いて来た。
勿論魔獣達の姿は良く見えた。どの森の魔獣も、魔獣達の群れがいくつかできていたが。あの様子から、森を支配している魔獣達が中心になり、それぞれ対処している、という感じだろう。1番酷い森の魔獣達も集まって何かしていたからな。
と、我はあることを思いだした。何処の森だったか? 少し人間の街に近づき過ぎている魔獣の群れが居たな。人に危害を与える魔獣ではなかったから、放って帰って来たが。一応魔獣達に注意してやれば良かったか?
そのことをウイリアムに言えば、それは何処の森だと慌て始めた。だから人に危害を加える魔獣ではないと言っただろうに。我が心配なのは魔獣の方だ。魔獣達に争う気がなくとも、人間は食料に、街に被害が出ないようにと魔獣を狩るからな。まぁ、それも自然の流れなのだから、仕方ないのだが。我も狩るしな。
はぁ、ウイリアム達の慌てているのも煩いし、ここはもう1度、あの森へ行くべきか。モリオンに俺の記憶を見せれば、何処の森か分かってすぐに移動できる。我はキミルにモリオンを連れてくるように言う。今から行けば間に合うだろう。
明けましておめでとうございます。ありぽんです。
昨年末、色々とあり、更新をお休みして申し訳ありませんでした。
また休んでいる間、皆様からたくさんの優しいお言葉をいただき、ありがとうございます。
まだ本調子ではないのですが、少しずつ更新を始めようと考えております。お待たせしてすみません。
皆様に楽しんでいただける1年になればと。
本年度もよろしくお願い致します。




