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優しい家族と、たくさんのもふもふに囲まれて。〜異世界で幸せに暮らします〜  作者: ありぽん


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47対峙の時

<黒服ブラック視点>

 夜中に奴らに逃げられてからすぐ、奴はここに到着した。

「まったく逃げられるとは、何という失態だ。次に捕まえるのが大変になるぞ。」

「分かっている。戻る前に、この辺りをもう少し調べてから帰るつもりだ。」

「分かった。昼までだ。全員で探せば、何か見つかるかもしれん。だが、見つからなければ、この建物は放棄して、次の場所へ移動だ。」

「そうだな。今日中に、証拠になりうる物も、持ち出さないといけない。」

 私達は、数組に分かれ、暗い森の中へと進んだ。建物の見える範囲であれば問題はない。それ以上は、他の者達が迷う可能性がある。

 暗闇の中、少しでも何か奴らに繋がる物があれば、家へ逃げられる前に見つければ、捕まえられる可能性が、少しでもあるのではないか、という考えでいた。

 それにこの森を去る前に、奴らではなくとも、うまくいけば、強い魔獣を1匹でも捕まえられるかもしれない。


 屋根がギリギリ見える距離まで来たのは、朝を通り越して昼前といったところだった。昼までと言ったが、もうこれ以上は無駄だろう。

 新たに魔獣を2匹捕まえられた。これで一応の報告は出来る。フェンリルの事は正直に伝え、指示を仰ぐとしよう。

「戻るか?」

「そうだな。建物の中を片付けて、我々の居るべき場所へ帰ろう。」

 我々は建物に向かった。

 しかし、街にいる仲間の報告が遅れ、すでにあの建物に騎士どもが到着しているとは思ってもみなかった。あのガキを捕まえてから、最悪な事ばかりだ。


<ウイリアム視点>

 我々が目的の場所に着いたのは、昼前の事だった。

 黒い点に示されたところには、3階建ての建物が立っていた。しかし今は誰も居ないようだ。

「いつの間にこんな建物が…。」

 街の騎士も、この建物の事は知らなかったようだ。しかしなかなかに立派な建物だ。闇ギルドで死んだ男の仲間が、建てたのだろうが、人員がかなり必要なはずだ。

 中に入り、手分けして中を捜索する。外の外見と違い、中はボロボロになっている所が多かった。証拠になりそうな物を、片っ端から集めていく。

 そんな最中、マシューが私達を呼んだ。2階に上がり、呼ばれた部屋の前に行くと、その部屋の前の壁には、大きな穴が開いており、その穴は次の壁にも開いていた。何処かへ続いているようだ。

 穴を通り抜け行き着いた先は三階の部屋だった。その部屋の天井には同じように大きな穴が開いており、そして部屋の中には、下半身だけの死体が転がっていた。

「ここで何があった?」

「これは噛みちぎられた様な痕だな。もし、ここが事件に関係している場所なら、捕まえた魔獣にでも逃げられて、殺されたか?」

 天井の穴には血がついていた。多分この死体のものだろう。どんな魔獣がやったのか?ここにユーキ達が居たとしたら、マシロがやったのかもしれない。そして外へ逃げた。そうであって欲しいが、ここにユーキが居た証拠は何もない。

「団長、外へ来てください。ザクス様もお願いできますか?」


 オリバーに連れられ、今度は外へ出る。連れて行かれた場所には、大きく掘られた穴が。そしてその中には、たくさんの死体が転がっていた。余りのことに言葉が出ない。

「これは…。」

 ザクスが横に立ち、同じように穴を覗く。

「よくもこんなに人を殺したものだな。街に帰って、身元の確認をしなければ。…ん?あれは…。」

 その時ザクスが、ある死体に目を留めた。

「あれは、あの死体は知っている顔だ。確か俺の街でそこそこ有名な冒険者だ。最近姿を見ないと、街の住民が言っていたが、まさかこんな所に居たとは。魔獣は確かジャイアントロックだったか?」

 ジャイアントロック、石に目や手や足が付いていて、大きな体をしている。かなりの力を持っている魔獣だ。

 拐っている奴らは一体何が目的なんだ?ここの死体だけでも、相当な数の魔獣が、奴らの手の中にいる事は間違いない。早く目的と奴らの正体を突き止めなければ。

「ユーキちゃんは大丈夫よね…。」

 後ろからオリビアの声が聞こえた。

「ユーキちゃんはこの中に居ないわよね…。」

 オリビアが、その場にしゃがみこんでしまった。しまった。こっちに来させるんじゃなかった。オリビアのユーキへの心配は、もうかなり限界に近いはずだ。こんな死体を見て平気なはずがなかった。

 「大丈夫だ。ここにユーキは居ない。ここの死体はかなり時間が経っている。ユーキが拐われたのは2日前だ。」

 私はオリビアを支える。

「それに建物の中に、天井まで大きな穴が開いていた。もしかしたらだが、ユーキはここに連れてこられたが、マシロが逃げる事に成功したのかもしれない。それにまだここに、ユーキが居たという証拠は何もない。」

「でも生きているか分からないわ。生きていたとしても、今頃泣いてるかもしれない。あなたどうにかならないの?」

 私はどうにか、オリビアを落ち着かせるために抱きしめると、少しの間2人にしてもらった。そして、オリビアに言い聞かせる。いいや、自分自身に言い聞かせたのか。

 大丈夫。アイツは歳のわりに、しっかりしている。いやしっかりし過ぎているくらいだ。最近は甘えてくれるようになったがな。

 それにユーキには色々やらかし癖がある。マシロや妖精や精霊、遊び方にしたって、まだほんの少ししか一緒に暮らして居ないのに、俺たちはほぼ毎日驚きっぱなしだ。

 そんなユーキが、簡単にどうにかなるとは思えん。必ず何かやらかして無事なはずだ。もしかしたら、すぐにでも、あの可愛い笑顔を見せながら、ただいまでしゅ!と言って、帰ってくるかもしれない。

 私がそう言うと、オリビアは何とか、自分を奮い立たせたようだった。まだ心配そうな顔をしていたが、それでも、先程の様な顔色の悪さは無くなった。

 私達は建物に戻ると、証拠品を集めて一箇所におき、見張りを何人か残し、後でそれを取りに来る事にした。荷物が多過ぎて運べなかったからだ。


 我々が現場を離れようとしたのは、昼頃だった。

 そしてその時、奴らは現れた。あの闇ギルドで死んだ男と同じ格好をした、黒服の奴らが30人程度、突然森の中から現れたのだ。

 お互いがすぐに感じとった。奴らは敵だと。怒りが湧いてきた。もしかしたらこの中にユーキを拐った奴が居るかもしれない。

 一瞬の沈黙の後、最初に動いたのは、オリビアとアメリアだった。


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