438フィオレートとこれからの事(ウイリアム視点)
いつもより早い出発のために早く起きているのだが、今日はそれよりも早く起きた。横を見ればオリビアはすでに起きていて、着替えも終わっていた。いつの間に起きたんだ?
それからユーキ達の様子を伺い、まだぐっすり眠っているユーキの頭を撫でると、私も着替えようと、アンソニー達が泊っている部屋へと移動した。
アンソニーもジョシュアもまだぐっすり眠っていたが、ジョシュアの寝相は相変わらずだ。それからいびきもな。ユーキがいびきの音を聞いて、寝ているときのジョシュアはガーガー魔獣だと言っていたのを思い出し、思わずニヤついてしまった。
着替えを済ませ部屋に戻り、2人で宿の食堂に向った。食堂にはアシェルとアメリアが居て、朝食を済ませた所で、これから出発の準備に取り掛かるところだった。
「おはようございます旦那様、奥様」
「私共は準備の方を。フィオレート様は少し前に」
2人が食堂を出て行く。そして食堂の奥の席を見れば、そこにはフィオレートの姿が。私達がその席に座ると、アシェルが頼んでいてくれたのか、すぐにお茶が運ばれてきた。
「それでお兄様、今回はどうして私達の所へ? 話を戻すようで悪いけれど、どうしていつも連絡を下さらないの?」
「それはすまないと思っているよ。だが、ようやく長い仕事から解放されて、お前のところへ行けると分かったら、手紙など書いている時間が惜しかったのでね」
「そのせいでユーキちゃんは怖い思いをしたのよ。転んでけがをしてまで私を守ろうとしてくれて」
「その事なんだがね。父上に話は聞いていたのだが、それにしては話よりも反応が酷かったようだが?」
私とオリビアは、これまであった事をフィオレートに話して聞かせた。オリビアの実家に行ったときの事までは、お義父さんが話していてくださったようなので、それからのことを簡単に。だが大切な所は詳しく話した。
それまではオリビアを見てニコニコしていたフィオレート、話を聞いているうちに、表情が険しくなっていった。そして話を聞き終わるころには、その険しい表情はより険しいものに。
「そんなことが」
「これでも最近落ち着いて来ていたのよ。それなのに私にそっくりなお兄様が急にあらわれて。ユーキちゃん偽者って慌てちゃったわ。それで泣かせるなんて。あの時お兄様をぼこぼこにしなかった私を褒めてほしいわよ」
「まったくもって、すまなかった」
フィオレートが頭を下げる。
「それにしても、予想以上に可愛い者達に溢れているね。本人も含めてだが。怖がらせたお詫びと言っては何だが、私は可愛い者が大好きだからね。当分仕事は休みだし、彼らのことを思いきり甘やかしてあげよう」
険しい表情からすぐにあの笑顔に戻ってしまった。あの独特の笑顔だ。ユーキ達が逃げたな。
「お兄様、そのままではユーキちゃん達はお兄様から離れるだけですよ。普通にです、普通に。私がいつも言っているでしょう」
オリビアがため息をついた。
それからこれからについて話した。先程聞いた通り、少しの間フィオレートは仕事が休みらしい。まだ詳しくは話せないと言っていたが、何か重要な仕事に関わっているようだ。まぁ、彼はもともとそういった、特殊な仕事に関わることが多いからな。私達に話せないような仕事もしていると、前にオリビアに聞いた事がある。
その仕事が長期休みに入った事で、オリビアとゆっくり過ごそうと考え、急いでカージナルまで来たのは良いが、私達は出発した後で。今度は急いで追ってきたが、リリースとお互いを褒め合っていたら、私達に気づかず通り過ぎたと。この前のことだ。
オリビアに私達がこれから冒険に行くと聞き、あの森の話は聞いていたらしく、行ってみたいと思っていたと。私達とこのまま一緒に行動すると言ってきた。もちろん冒険の時もだ。
「勿論、可愛い者達を探すために、1人で中に入ることもするが、オリビアやユーキと触れ合わなければいけないからね。それにリリースも、一緒に行動したいと言っていた」
リリースはフィオレートがかなり若い時から一緒に居るグリフォンだ。普通のグリフォンの個体よりも大きく、珍しい部類に入る。
「ユーキの所にグリフォンの赤ちゃんが居るからね。かなり気にしていた」
「名前はピュイちゃんよ。親グリフォンが住んでいる森は知っているのだけれど、まだ会いに行けていないのよ」
そう、何度かくろにゃんの魔法で会いに行こうとしたのだが、その度にいろいろ問題が起きたからな。まだ生まれたことを知らせに行けていなかった。
「すぐに会いに行けないのならば、リリースはちょうど良いだろう。もしピュイがグリフォンのことで聞きたいことがあれば、リリースに聞けばいい。ピュイは変異種だろう? ずいぶん丸っこくて可愛いね」
またニヤニヤし始めるフィオレート。オリビアに再度注意される。
「まぁ、何にしろ、私は当分帰るつもりはないよ。それにちょうど調べたい事もあるからね。その間にユーキ達と仲良くなって、抱きしめられるくらいにはなりたいね」
そう言って立ち上がるフィオレート。
「お兄様どこへ?」
「勿論リリースの所だよ。まだ朝の挨拶をしていないし、完璧な彼女を褒めていないからね」
食堂から出て行くのを見送り、私は思わずため息をついた。
「君の兄さんは相変わらずだね。ユーキ達が心配だ」
「普通に仲良くしてくれるのなら良いのだけれど、昨日もお兄様のあの変な圧に、ユーキちゃん達逃げていたものね。ディルちゃん達なんか攻撃のマネしてたし」
はぁ、何も起こらなければ良いのだが。




