429面倒な人物(オリバー視点)
ウイリアム団長が出かけて2日たち、相変わらず私は団長が残していった仕事の片づけをしていました。まぁ、出かける前にかなり仕事させましたからね、残っているのは簡単な仕事ばかりですが。
ふと気づくと水時計が昼を指していて、それに気づいたと同時に廊下をずかずか歩いてくる足音が。
「よう、昼飯食いに行こうぜ」
「そっちの仕事は終わったのですか?」
「まぁ、後少しって感じだな。お前誘わないと昼抜かして仕事するからな。誘いに来たんだ。ほら行くぞ」
「はぁ、分かりました。用意するので待っていてください」
リアムのせいで仕事を中断されましたが、せっかく誘いに来てくれたのですから、たまには昼食をとるのも良いだろうと、書類をかたづけ上着を羽織って玄関に向かう。
その後お店通りまで行き、私達が良く食事をとるカミラ亭に入り、リアムはステーキを3枚、私はサンドイッチを頼み、久しぶりの昼食を満喫しました。
そしてその後、場所を移動してお茶を飲んでいるときに事件は起きた。騎士達がバタバタと何人か、お店通りを走りぬけていく。
「何だ? 何かあったのか?」
気にしていると少しして、先程走り抜けていった騎士達と、他に新たに何人か騎士が走って戻って来た。よく顔を見れば、先に走り抜けていった騎士は、新しくウイリアム団長の屋敷の警備に配属された、新人の騎士達だった。
走りぬけようとした騎士達をリアムが呼び止める。
「おい、何があった!」
「リアム様! オリバー副団長! 何故ここに」
「そんなことはいい。それよりも何があったのか話せ!」
「ウイリアム団長のお屋敷の方の壁の警備兵から、グリフォンが街に近づいて来ていると連絡が。急ぎ応援の騎士を呼んできた所で」
「グリフォンだと。オリバー、俺達も行くぞ!」
そのグリフォンはかなりのスピードで街に向って来ているらしい。グリフォンのような上級魔獣とまだ戦ったことがない新人騎士達。今カージナルは事件も、魔獣の襲撃などもなく、それならばと、新人騎士達にいろいろな体験をさせるため、今日屋敷の警備を担当している10人の騎士のうち、6人が新人騎士だった。
また壁の方を警備している騎士も3分の1を新米騎士に任せていたのだが。確認されたグリフォンは1匹だったが、後で群れで襲ってくる可能性があるため、ベテラン騎士が応援を呼んで来いと指示を出した。
「まったく、平和な時間が続いていると思ったらこれだ」
リアムがブツブツ言いながら走る。私は走りながら考えていた。屋敷の方へグリフォンが?
屋敷に着いてすぐ、壁を担当しているベテランの騎士が報告に来た。
「オリバー様、リアム様、今のグリフォンは1匹です」
「そうですか」
「なんだってグリフォンが。もしかしてピュイの親か? それともまったく関係ないグリフォンか」
そこまで話した時、私は自分の考えをリアム達に話した。
「あの方という可能性はないか。最近はこちらに来られることもなかったが。あれだけ前はちょくちょく来ていましたが。私も落ち着いた生活に最近慣れてしまっていて、頭から排除していましたが」
私の話にリアムもベテラン騎士も最初何の話だという顔をしていましたが、ハッとしたリアムがその名前を口にした。
「まさかフィオレート様か!!」
私は静かに頷いた。
「何でまたタイミングの悪い。いないと分れば暴れるかもしれないぞ。そうなればグリフォンの群れが街を襲ってくるより被害が大きくなるぞ」
「はぁ、まだ決まったわけではありませんが、もし本当にフィオレート様なら、団長達のことを話して、さっさと街から出て行ってもらいましょう。私達ではどうにもなりませんからね」
一応違う可能性も考えて、そのまま騎士達にはそれぞれの位置に着いてもらう。
あの人が来たならば、おそらく下りてくるのはあそこだろう。私とリアムは屋敷のユーキ君がじぃじの木と呼んでいる木がある裏庭へと移動した。
もしフィオレート様なら、何故もう少し早く来て下さらなかったのか。ほんの2日前なのに。
こうなったらササっと話をして、団長達を追ってもらおう。2日分の距離だ。フィオレート様ならすぐに追いつくだろう。そして後のことは団長に任せる。
裏庭に移動してすぐだった。壁の方を見ていたリアムが声をあげる。
「来たぞ。はぁ、やはり色はオレンジだ」
その答えに私も壁の方を見て確認する。間違いなく連絡用の魔力石はオレンジに光っていた。やはりフィオレート様だったか。
「リアム、なるべく早く話を終わらせますよ。私が話します」
「ああ、任せる。俺じゃあ無理だからな。俺の場合、話してる最中に勝手に向こうが話を終わらせてくる可能性があるからな」
オレンジ色の連絡が来てすぐだった。私達の上に魔獣の影が。見上げれば普通のグリフォンよりも少し大きめなグリフォンが、翼を伸ばし徐々に下へと降りてくる。
そして私達の目の前に着陸するグリフォン。背に乗っている人物が笑顔で、グリフォンの背中から下りて来た。
「私の大切なオリビアは何処かな? いつも出迎えてくれるのですが?」
はぁ、私の些細な休憩は、フィオレート様の到着で、最悪な休憩へと変わってしまった。




