38バカな奴ら(黒服視点)
「くそ!くそ!」
せっかく捕まえた駒に逃げられるなど、何という失態だ。あの方に何と報告すれば。
奴らがあの家へ帰った所を、もう1度奴に捕まえさせるか?
いやダメだ。あの家の人間に警戒されては、いくら奴でもこの間のように、簡単には拐えん。
あの4人は何をしていたのだ。たかが見張りだぞ!あんな最後には捨てるようなゴミでも、見張りくらいは出来ると思ったが。やはりゴミはゴミだったか?
それともフェンリルがあの部屋で、無理やり魔力を使ったのか?まさかな。主を危険に晒すような事はしないだろう。
ならどうやって?とりあえず現状を観なくては…。
建物に入る。あの部屋からすぐの壁に大きな穴が空いている。あのフェンリルが穴を開けながら逃げたか。その穴を辿り、進んでいく。女の錯乱したような声が聞こえて来た。何個目かの穴の先に女達はいた。
女2人に男が1人。座り込んでいる。目線の先には下半身だけの死体が転がっていた。あの洋服は確か、こいつらの仲間の履いていたもの。ふん、フェンリルに食い殺されたか?肉片も転がっている。間違い無いだろう。
「おい、これはどう言う事だ。何故こんな事になっている。」
「ああ、ブラック様。良かった。あれが無理やり逃げたのです。私達は逃がさないように追いかけたのですが。でもブラック様がお戻りになられたのなら、またすぐにでもあのカーバンクルを捕まえに行けますね。」
女が私にすり寄って来た。気持ちが悪い。大体この女は何を言っているんだ。カーバンクルの事しか頭に無いのか。あの部屋に閉じ込めている間は、奴らは何も出来ない。それが出来たと言うことは、これからもまた、同じ事が起こる可能性があると言う事だ。それをさせない為に、何が起きたのかが大事だと言うのに。
イライラする。すがり付く女の腕を切り落とした。
「ぎゃああああああ!腕が、腕がああああ!」
女の声が建物の中に響いた。
「な、何をなさるのですか?ブラック様!こ、こんな…。」
もう1人の女が僅かに下がりながら、声をかけてくる。
「何故こんな事になったか聞いたはずだが?今、この女は、ちゃんと答えたか?」
「い、いいえ、それは…。」
腕を切り落とした女はそのうち死ぬだろう。放っておけばいい。それよりも話を聞いて対処しなければ。残りの2人に話を聞く。
見回りに行ったら、突然強い光に襲われて目が見えなくなった。目が見えるようになった時にはすでに奴らの姿はなく、急いで追いかけたが、突然の叫び声が聞こえ、その場所へ急ぐと、先に追いかけていた仲間の死体を見つけた。
これが奴らの説明だった。突然の強い光?部屋の中でそれだけの力を使えば、タダではすまない。では何処からの光だ?外から?まさかな。確かに妖精の1匹は光の妖精だった。しかし…。
「おい、お前達は、ちゃんと私に言われた通りの見張りをしたか?」
「え、ええ、勿論です。」
男の声が一瞬震えたのを、聞き逃さなかった。
「必ず1人見張りをドアの前に立たせたか?見回りの時にも常に。そしてドアは必ず閉めてから、人数の確認もし、ちゃんと自分たちの目で、人数が合っているかチェックしたのか。1度でも誰かを見ない事がなかったか?どうなんだ?」
2人が目を逸らし黙った。そんな態度を取れば、自分達が仕事をしていなかった事を、認めるようなものだが、本当に頭の悪いことだ。
妖精は部屋の外にいたのだ。奴らの隙をついて。奴らはその少しの隙を見逃さなかった。バカな奴らの隙を。
そして私も馬鹿だったのだ。奴らもカーバンクル欲しさに、ちゃんと見張りくらいすると思っていたが、ここまで馬鹿だったとは。
最後に口封じに殺すつもりでいたから、今この場で、奴らが死のうが関係ないが、少しでも役に立たせてから殺すか…。
そう言えば今朝移動させたあの魔獣は、契約してから命令をした事がなかった。コイツらを使って、練習させるのも良いかもしれない。そうだ、そうしよう。
私は近くにいた手下に、魔獣を閉じ込めている場所へ、連れて行くように指示を出す。あの半分死にかけの女はどうするか。あのまま餌にでもするか。私のイライラもこれで少しは収まるはずだ。
「な、何するんだ。何処へ連れて行くんだ!」
「ブラック様、私達をどうするのですか!」
わーわー、ぎゃあぎゃあ、煩い奴らだ。
「これからもう1つの、魔獣を管理している場所へ移動するだけだ。お前達はそこで待っていろ。」
さて、逃げた奴らをもう1度捕まえる計画を立てねば。
すぐにでも奴らは街へ向かうだろうか?それとも主人の回復を待ってから、移動を再開するか?
このあたりを探すにしろ、もうすぐ奴が戻ってくる。それから探し始めた方が、見つけた時捕まえやすいだろう。私も一応この大きな魔力石のおかげで、あの闇魔法は使えるが、奴程強力なものは使えない。確実に捕まえる方がいい。
捕まえたら今度こそ逃げられないように、捕まえたらすぐ奴隷の首輪をつけよう。あれがあれば、我々には逆らえない。
私は、少しの情報でも手に入れようと、手下に周りを見てくるように命令して、自分はもう1度奴らが逃げ出した部屋へ向かった。外からの攻撃にも対処出来るようにしなければ。2度とこのような失態は起こさない。
部屋の前にたつ。そこに居たはずの魔獣共。あれが手に入ればかなりの戦力になる。あの方の理想を実現させる為にも、もっと気を引き締めなければ。そしていつか。
この世界を我々の手に!!




