33謎の男達と黒服の人
最初に声をかけてきた男の人が、近寄って来ました。マシロが威嚇して唸ってくれて、男の人が止まりました。他の人達も、マシロの威嚇に近寄って来ません。
「さすがフェンリルだな、この威圧は俺達はこれ以上近寄るのは無理だ。」
「ねえ、あれがこの前の奴じゃない。」
「そうだな、だがあの方の指示があるまで、何にも出来ないからな。交代で見張りするぞ。」
「おい、ガキ。怪我したくなきゃ大人しくしてろよ。そっちのフェンリル、お前頭いいんだろ。今この部屋がどういう状況か分かってるよな。変なことするなよ。主人の命が大事ならな。」
そう言い残して、皆部屋から出て行きました。
「マシロ…。ここどこ?」
「分からん。だが。」
マシロが教えてくれたのは、この部屋には魔力封じがしてあるってこと。だからマシロもディルもリュカもシルフィーも皆、力が使えないんだって。無理に使ったら、お部屋が爆発しちゃうかも知れないんだって。
ドアはさっき男の人が出て行ったドアしかなくて、窓もありません。
マシロは気配で、ここが森の中だっていうのは分かるって言ってる。ディル達もそうだって。何があっても離れないように、もう1度言われました。
どのくらい経ったか分からないけど、誰かか部屋に近づいて来て、バンッて勢い良くドアを開けました。
黒いお洋服を着ていて、お顔に黒い蛇の絵が書いてありました。
何かね、分かんないけど、とっても怖い感じの人。お父さん達と全然違う。
マシロが僕を庇いながら、また威嚇してくれます。
「ちゃんと全員運べたな。フェンリル、妖精、精霊。こんなに1度に手に入れられるのは珍しい。あの街へ行ったのは正解だった。」
黒服の男の人が、1つだけ置いてあった椅子に座ります。
「いいか、1度しか言わん。よく聞いておけ。お前はこれから私のため、私達の為に力を使え。お前の魔力、そしてフェンリル達を使い、私の言う通りにするんだ。反抗は許さない。分かるか?」
黒服の人の目がとっても怖いです。
「…いやでしゅ。おうちかえるでしゅ…。」
言う事聞いちゃいけない気がする。
「…そうか。ならば、お前が私達の為に力を使うと言うまで、この部屋から出さず飯もやらん。それで弱って死んでも構わん。まあ、お前の力も欲しいところだが、仕方ないだろう。そして死んだ後、力は落ちるかも知れないが、そいつらと私が無理やり契約しよう。」
黒服の人は立ち上がると、さっさとお部屋出て行っちゃった。残った人達は、誰が見張りするか決めて、それからお部屋出て行ったよ。マシロがドアの前に1人居るって言ってた。
「マシロ、かえりたいでしゅ…。とうしゃん、かあしゃん、にいしゃん…。ふええ…。」
「大丈夫、どうにかする。いいか、あの黒服の話は絶対に聞くな。アイツは他の奴らよりも危ない。」
「うん…。」
「だけどご飯貰えないんだぞ。ユーキご飯食べないと死んじゃうぞ。」
僕の肩にとまってたディルが、マシロの顔の前まで飛んで行ったよ。
「分かってる。だからどうにかして主が元気なうちに、ここから逃げ出したい。今、その方法を考えている。何しろこの部屋では無理に魔力が使えん。」
「じゃあどうするのさ?」
リュカも加わって、お話し合いが始りました。僕はマシロにくっついてて、マシロがしっぽで包んでくれてます。包んでもらってた方が安心する。
黒服の人が言った通り、たまに最初の人達が様子見に来るけど、何にも持ってこなかったよ。それに外に出さないように、トイレもこの部屋でしなさいって、バケツ置いてった。
「でもさあ、ボク達の力が欲しいなら、どうしてすぐユーキのこと殺さないのかな?」
「言っていただろう。あの黒服が。主人の魔力も使いたいと。」
「でも、死んでもいいって。」
「アレは脅しだ。我々を従わせるためのな。だからと言って、言うことを聞かなければ、本当に殺すだろうが、そんな事はさせん。無理やりの契約もさせるものか。我らを何だと思っている。」
無理やり契約…。契約ってお友達になることでしょう。オリバーさんが、無理やりお友達になっちゃいけないって言ってたよ。ちゃんと相手のことを考えなさいって。あの黒服の人、何でそんないけない事するんだろう。
「ねえマシロ、僕あの人達知ってる。」
と、今までマシロの背中に乗って、静かにしてたシルフィーが話しかけてきたよ。
そしたらあの黒服の人以外の人、知ってるんだって。初めてシルフィーに会った時、怪我してたでしょ。あれね、あの人達がやったんだって。あの人達がシルフィー虐めた人だった。やっぱり悪い人達だったんだ。
シルフィーが怪我した日、暗かったから顔は分からないけど、臭いで思い出したって。
それから何回か、最初の人達はお部屋に来たけど、黒服の人は来なかったよ。
「シルフィー聞きたいのだが。奴らはお前から見て強い者達だったか?」
マシロが急にシルフィーに、虐めた人達のこと聞いたよ。
「えーと、僕は弱いからダメ。でもマシロは全然平気。勝てる。」
「ならば、あいつらをどうにかすれば、逃げられるかも知れん。黒服はずっとここに居るわけではない。我らがここに来てから、何度も気配が消えては、現れている。奴がいない隙に外に出られれば…。」
その為には、まずここがどういう所か分からないとダメだって。窓がないから、僕にはさっぱりだけど、マシロ達は気配で森だってことは分かってるから、後はどのくらい森の奥なのか知りたいって。
「あ!ボク良いこと思いついた。」
リュカがマシロの鼻先へ。何かいつもよりキラキラ光ってる気がします。
「ボクは光の妖精だからね。ボクこのキラキラ消して飛べるよ。キラキラ消すくらいなら魔力使わないから大丈夫だし、あいつらがドア開けた時、隠れて外に出て、周りの様子見てくるよ。」
「そうか!それが出来るならやってくれ。」
「おそとのひと、みちゅかりましぇんか?」
そんな事してリュカは大丈夫なの?見つかったら、虐められちゃうよ。聞いたら人の気配はあの黒服の人がいる時は多いけど、いない時は最初の4人だけなんだって。
「あいつら様子見に来る時、全員でこの部屋に入って来るんだもん。外に誰も居ないんだ。だから出られるよ。ボクが居ないのがバレないように、毛の中に隠れてるって言っておいて。」
そんなので騙せるかな?でも、リュカはとっても自信満々です。それにとってもにこにこしてました。リュカが大丈夫って言うなら、僕リュカの事信じるよ。でも、危ないと思ったら、すぐにやめてね。意地悪されて、お怪我するの見たくないからね。
リュカが外へ出るのは、次にあの人達が来た時になりました。




