257僕お家に帰りたい…
シーラお姉ちゃん達と遊んでたら、やっとルトブル戻ってきました。タタタタタッて駆け寄って、ルトブルの足に抱きつきます。もうお話終わり? もう帰れる?
僕ね思い出したの。大きなイカさん魔獣のこと。えと名前は…クラーケン! お父さん達みんな戦ってたでしょう。もしかしたらお怪我してるかも。ディルがいるから大丈夫かもしれないけど、僕がそばにいた方が、ディルの力強くなるんでしょう。お父さん達とっても酷いお怪我してたら大変です。
「ルトブル! もうかえれるでしゅか? はやくかえろ」
「すまないがユーキ。まだ話が終わっていないんだ。今度はアンソニーも一緒に話をするから待っていてくれ。アンソニーついて来てくれ」
「分かった。ジョシュア、ユーキのことお願い」
「おお! ユーキもう少し俺達と遊んで待ってような」
すぐにルトブルとアンソニーお兄ちゃんがお部屋から出て行っちゃいました。え~、僕帰りたかったのに。ちょっとプンプンしながら、お絵かきしてた所に戻ります。
「ユーキ。今度は何描いてやろうか?」
「うんと、ドルンかいてくだしゃい」
「え? 俺達?」
「うん!」
あのねポーロ、とってもお絵かき上手なの。僕がお願いしたもの全部描けるし、本物そっくりに描きます。ポーロはたまに人の姿に変身してお絵かきしてるんだって。お水の中なのに平気なのって聞いたら、海の中にも洞窟があって、洞窟の中にお水がない所があるんだって。そこでお絵かきしたり、海の中で拾った面白いもの集めてしまってるって教えてくれました。面白い物どんなかな?
シーラお姉ちゃんとアラトお兄ちゃんは、ジョシュアお兄ちゃんみたいに運動するのが大好きです。シャボン玉ボールを、バシッ! バシッ! って投げてたんだけど、途中からボール見えなくなっちゃいました。音だけ聞こえてヒュンッ! って音がします。ジョシュアお兄ちゃんが一緒にやりたいって言って、アンソニーお兄ちゃんにとっても怒られてました。
僕がボール投げるとふわふわふわって飛びます。凸凹ボールみたいに、上に飛んだり横に飛んだり。1度戻ってきたボールがお顔に当たっちゃったけど、ふわふわだから全然平気です。お姉ちゃん達がバシバシ投げても僕がふわふわ飛ばしても、ボール壊れなくて凄いね。あんなにふわふわなのに。
ルトブルのお話もとっても長かったけど、アンソニーお兄ちゃんのお話もとっても長いです。もう1回ジュース飲んで遊んで待ってたけど、僕眠くなってきちゃいました。ジョシュアお兄ちゃんがベッドに乗せてくれて、アンソニーお兄ちゃん達が戻ってきたら起こしてくれるって。絶対だよ。シーラお姉ちゃん達も僕が寝てる間に帰らないでね。お兄ちゃんが頭なでなでしてくれて、僕すぐに寝ちゃいました。
「………、………」
「………、………」
誰かのお話してる声が聞こえます。静かにお話してね、僕寝てるから。
「………だ」
「はぁ~、………んだ」
うう~、煩い。そっとお目々開けます。ボヤってしてるからお目々擦ってよく見ます。ジョシュアお兄ちゃんと…、アンソニーお兄ちゃんとルトブルだ! ジョシュアお兄ちゃん起こしてくれるお約束だったのにダメダメです。うんしょうんしょってベッドから下りて駆け寄って、今度はアンソニーお兄ちゃんの足に抱きつきます。
「おかえりでしゅう! おはなちおわったでしゅか? もうかえるでしゅか?」
僕がそう聞いたら、お兄ちゃん達もルトブルも静かになっちゃって、それでアンソニーお兄ちゃんがしゃがんで僕のお目々とお兄ちゃんのお目々あわせました。
「ユーキ大事なお話だからちゃんと聞いてね。僕達まだ帰れないんだ。もう少しここにいないといけない」
「うゆ? どのくらい? あとジュース1回飲んだら?」
「違うよ。もっとたくさん。じぃじのお家にたくさんお泊まりしてるでしょう。それよりもっとお泊まりしないと帰れないんだ」
「いっぱい? マシロもみんなも、とうしゃんかあしゃんもあえないでしゅか?」
「うん。そうだね。会えないよ。」
会えない。みんなに? マシロ達もお父さん達もみんな…。僕涙ポロポロです。早く帰りたいのになんで帰っちゃダメなの。僕みんなお怪我してないかとっても心配です。それにみんなにギュウってしてもらいたいの。何で? 何で…。
「うわあぁぁぁぁぁぁん!!」
僕丸くなって泣いちゃいます。早く帰りたい!!
「かえるでしゅう!! わあぁぁぁぁぁぁん!!」
アンソニーお兄ちゃんが僕のこと抱き上げて、ギュッて抱きしめてくれます。それからずっと背中ポンポンです。ジョシュアお兄ちゃんは頭なでなでしてくれます。でもいつもは嬉しいのに今は全然嬉しくありません。それに何回も帰りたいって言うのに、みんなダメって言うの。僕のお願い誰も聞いてくれません。
ずっと泣いてお顔涙と鼻水でぐしゃぐしゃだけど、それでも僕ずっと泣いてます。ヒックヒックしてたら体が熱くなって来ちゃいました。
「ユーキ? もしかして熱が?」
お兄ちゃんが僕のおでこにお手てつけます。それからバッてお手て離してなんかとっても慌ててるの。どうしたの。僕早く帰りたいの。
「凄い熱だ! 体冷やさないと!」
「凄いって…本当だ! おい何か頭冷やすもの持って来てくれ!」
「こんな時にディルが居てくれたら」
お兄ちゃんが僕のことベッドに寝かせます。お兄ちゃんが離れようとしたから僕慌ててお兄ちゃんの腕にしがみつきました。どこにも行かないで。そばに居て。
「にいしゃ、かえりちゃい…」
「………うん、そうだね。帰りたいね」
そのときお部屋に誰かが入ってきました。アイリーンさんとさっきお椅子に座ってて、アイリーンさんに頭叩かれて怒られてた男の人魚さんです。アイリーンさんが僕のこと見て、慌てて駆け寄ってきてベッドの横にしゃがみました。それから僕の頭にお手てつけてなんかボソボソ言います。アイリーンさんのお手てがポワッて光って、頭もお顔も体も全部、今よりもっとあったかくなってきて、でもすぐにあったかいのがなくなりました。アイリーンさんがお手て離したら、全部熱いのなくなっちゃったよ。
「どうですか。もう熱くありませんか?」
「うゆ…?」
体は熱くなくなったけど、涙はぽろぽろ止まりません。男の人魚さんが近づきてきて僕にごめんなさいしました。僕2人にもお家に帰りたいってお願いします。アイリーンさんがとっても悲しいお顔しました。その時。
男の人魚さんの前にアンソニーお兄ちゃんが立ってすぐ、バキッ!! て音がして男の人魚さんが後ろに倒れました。倒れた人魚さんをお兄ちゃんがたたせて、バキッ!! ってまた凄い音です。アンソニーお兄ちゃんが人魚さん殴ったの。
お兄ちゃんとっても怖いお顔してます。いつもニコニコ笑ってるお兄ちゃん。ときどき怒るけどでも優しいお兄ちゃん。こんなに怖いお兄ちゃん僕初めてです。びっくりして涙が止まっちゃいました。
「あ~あ、キレちゃったよ。兄さん怒ると母さんぐらい怖いからな。ユーキ。今は兄さんに話しかけるのやめような。兄さんが落ち着くまでユーキはベットでゆっくりだ」
お母さんと同じくらい怖いの? お母さん怒るととっても怖いです。いつもお父さんがお仕事ダメダメな時に怒ってるお母さんとっても怖くて、僕やディル達みんなでぴゃあぁぁぁって逃げるんだよ。
ジョシュアお兄ちゃんが言った通り、アンソニーお兄ちゃんそのあと何回か人魚さん殴って、ブツブツ言いながら人魚さん引っ張って、お部屋のお外に出て行きます。
「さっき殴ったけど、やっぱり許せないや。ユーキ、兄さんもう少しこのバカ人魚とお話して来るから、大人しくベッドで寝てるんだよ。アイリーンさんさっきの何かの魔法ですよね。ユーキのこと頼みます。ルトブルついてきて!」
バタンッ!! ってドアが閉まりました。僕反対側向いたらシーラお姉ちゃん達がベッドの所に隠れて、チラチラドアのほう見てます。ジョシュアお兄ちゃんに大丈夫か聞いて立ち上がりました。みんなアンソニーお兄ちゃんが怖いって。絶対怒らせないようにしなくちゃって言ってました。
アイリーンさんに上向いてって言われて上向きます。今度はおでこにお手て乗せてまたボソボソ言ったらお手てが光りました。それが終わったらイルンさんがジュース持ってきてくれて、僕そのジュース一気に飲んじゃったよ。
「これで大丈夫だと思います。ですが少し大人しくしていた方がいいかと」
「ありがとうございます。ユーキ。今日は遊ぶの終わりにしような。ほら兄さんも一緒に寝ててやるから」
お兄ちゃんが僕の隣にねっころがります。シーラお姉ちゃん達もお椅子に座ってゆっくりです。アイリーンさんは1度お部屋から出てすぐに戻ってきました。それでお兄ちゃんに何か渡します。絵本でした。お兄ちゃんが絵本読んでくれます。お母さんより全然ダメダメです。男の人も女の人も、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな声が一緒。お母さんはちゃんと真似してくれて、絵本読むのとっても上手です。
でも…、僕ちょっとだけホッとしたの。気付いたらまたいつの間にか寝ちゃってました。




