125王様と王子様
「………もういいわ。許してあげる。この小さい主も、ちゃんと貴方のこと叱ってくれたし。この子に感謝しなさいよ。じゃなきゃもう1度、怪我させてやるところよ。あんなにしつこく誘ってきて。」
ん?どっち?許してくれたの?それともまだエシェットの事怒っててお怪我させるの?
「まだおこってるでしゅか?おけがさしぇるっていいまちた。」
「ああ、違うわ。今は許してあげたわよ。怪我はさせないからね。」
ドラゴンさん許してくれました。良かったあ。僕はドラゴンさんにありがとうしました。そしたらドラゴンさんが私はシャーナよって。さっきサルバドールさんが言ってなかった?って。そういえば言ってたかも。
サルバドールさんとシャーナに、皆んなのこと紹介しようと思ったんだけど、お父さん達がお城で待ってるから、帰ってから紹介してほしいって。お父さん達心配してるよね。エシェット急に居なくなっちゃったから。うん。早く帰ろう。あっ、でもここの木、元に戻さないとね。
「キミル、ここのき、もとにもどしぇるでしゅか?」
「うん。大丈夫だけど。」
キミルがマシロとエシェットの方見ました。2人が小さな声で何かお話してます。それから、マシロが、
「帰って紹介が終わったら決めよう。今はもう遅い。ウイリアム達が心配しているはずだ。今だって主は気づいてないが、ここが明るいのは、リュカが明るくしてくれているからだぞ。」
あれ?そうだ!今、夜だった。ずっと僕の周り明るかったから、忘れちゃってたよ。やっぱり早く帰らなきゃ。ここの木は、いつでもキミルが直してくれるもんね。それに僕、お父さん達に報告しなきゃ。ドラゴンさんに会ったこと。
マシロに僕達が乗って、くろにゃんにサルバドールさん達が乗りました。
「エシェット。だっこちてくだしゃい。」
「分かった。さっきは途中でウイリアムに抱っこ代わったからな。」
「ん?ユーキ君は一応1人で乗れるんじゃないのか?」
「この洋服が嫌らしい。動き辛いし首が締まると言っていた。」
僕はこのお洋服が、どんなにダメダメなお洋服か、一生懸命お話しました。僕のお話聞いてサルバドールさん、ちょっとだけ笑ってました。
「そこまで細かく説明してきたのは君が初めてだ。私も子供の頃この洋服が嫌いだった。ふむ。やはり、これは改善した方が良いようだな。」
途中からぶつぶつ言い出しちゃったサルバドールさん。マシロがもう行くぞって言って走り出しました。
帰りも来た時と同じ道から帰るみたい。マシロ達早いからね。すぐにお城についたよ。穴の開いてるところが入り口です。
穴を通ったら、お母さんがすぐに駆け寄って来ました。お父さんも駆け寄って来て、僕を抱っこしました。
「ただいまでしゅう!」
「はあ、怪我とかしてないな。良かった。」
「あのね、とうしゃん、とうしゃん、ドラゴンしゃんにあったでしゅよ!とってもきれいでカッコいいドラゴンしゃんでしゅ!!あとね、あとね、けんかもしゅごかったでしゅう!こう、バキバキバキって!!」
「待て待て、一体何の話だ。そんなに鼻息荒くして。」
「ユーキ君。さあ、部屋へ入ろう。ゆっくり話をしようね。」
サルバドールさんが先頭でお部屋に入って、僕達は後からゾロゾロお部屋に入りました。中にはじいじとばあばと、あと、とってもキラキラで飾りがたくさんついてる、カッコいいお洋服着てる男の人が居ました。お父さんが僕を下に下ろして、ご挨拶しなさいって。僕ははいって言って、手を上げました。
「ゆーきでしゅ!2しゃいでしゅ。よろちくおねがいでしゅ!」
それからお辞儀しました。おじさんが僕に近づいてきて頭を撫でてくれました。とっても大きいおじさんです。背も高いし、体も大きいの。
「ちゃんと挨拶できてえらいのう。それにとっても元気がいい。ウイリアム、良い子じゃな。」
「ありがとうございます。」
誰だろう。じいじと居たんだから、じいじのお友達かな?おじさんがお部屋の中にある、1番大きな椅子に座りました。その隣にサルバドールさんが座ります。
「さあ、ここからは友との再会と、友の家族として、お互い接しよう。さあさあ、座れ。そして話をしようじゃないか。」
おじさんがそう言って、お父さん達が椅子に座ります。僕はお母さんのお膝の上です。僕の隣にマシロ達が座りました。反対にはくろにゃん達です。エシェットはドアの近くに立ってます。何で?僕がこっち来てって言ったら、シャーナの近くは嫌なんだって。シャーナは今サルバドールさんの隣に立ってます。さっきごめんなさいしたから大丈夫だよ。そう思ったんだけど、リュカがエシェットはシャーナのこと怖いんだって、教えてくれました。ふーん?まあ、いっか。
最初はじいじが僕のこと、おじさんに紹介しました。僕が森でお父さんに会った事とかです。おじさんは黙ったまま、ずっとお話聞いてました。僕の事お話終わったら、今度はおじさんが、僕に自己紹介してくれました。
「ワシはこのボルフィスの国王じゃ。王様じゃぞ。名前はリチャードだ。よろしくのうユーキ。隣に居るのはワシの息子じゃ。もう名前は知っているようじゃな。」
「おうしゃま?」
絵本に書いてあった王様?1番偉い人?
「ふわわ、ふわわわ!おうしゃまでしゅか!!しゅごいでしゅう!」
僕は足をバタバタ。頭の上で拍手です。王様、凄い凄い。絵本のお城も見れて、王様にも会えちゃうなんて。僕とっても大興奮です。嬉しくて暴れる僕を、お母さんは全然離してくれません。ほんとはお部屋の中走りたいのに。あっ、でもお洋服動きにくいから無理かも。そうだ、王様にもお洋服の事言おう。皆んなにお洋服のこと言ったら、このお洋服、着なくても良くなるかも。
「おうしゃま、おねがいあるでしゅ。にいしゃんたちも、きらいでしゅ。あの、このおようふくダメダメでしゅ。うごけないでしゅ。でも、とうしゃんもかあしゃんも、きなしゃいっていいましゅ。だから、おうしゃま、このおようふく、べつのにちていいでしゅか?」
「こ、こらユーキ!」
何かお父さん赤いお顔して慌ててます。ん?震えてる?お母さんが震えてるの?振り返ったら、お母さんも赤いお顔してました。どうしたの?そしたら僕のお話聞いてくれてた王様が、ガハハハッて笑い始めました。
「ガハハハハハッ!ダメダメか。そうかそうか。確かにこの洋服は昔から、子供たちに嫌われていたが、こうハッキリとダメダメだと言われたのは初めてじゃ。よし、ワシが許す。好きな洋服に着替えてきなさい。その方が、ゆっくり話が出来るじゃろうからな。オリビア、洋服を着替えさせてやるのじゃ。」
「も、申し訳ありません。それでは、少々失礼いたします。ユーキちゃん行きましょう。」
僕を抱っこしたまま、お母さんはお部屋に戻りました。
(ウイリアム視点)
ユーキの発言に、顔から火が出る勢いだった。まさか国王様に直接、服の文句を言うなんて。自分でも顔が赤くなっているとは分かるが、同様に顔を赤くしているオリビアが慌ててユーキを着替えさせに部屋を出て行った。多分いつもの少し良い洋服に変えてくるだろう。ユーキが出て行った後を、マシロ達が当たり前にゾロゾロとついて出て行った。
「しっかり、契約出来ているようじゃな。」
「父上、ユーキは伝説もしっかりコントロールしていますよ。」
「そうか。しかし、幼いとはいえ、しっかり自分の考えを言えるとは、ウイリアム達の育て方が良いようじゃな。」
「ありがとうございます。そして申し訳ありません。」
「何を謝る。あの服はワシもきらいじゃった。が、父が怖くて、ワシは何も言えんかったからな。これを機に、新しい洋服に考え直そう。」
国王様が心の広い方で安心した。本当にユーキにはドキドキされられっぱなしだ。これから大事な話があるはずなのに、その緊張がなくなってしまった。本当に頼むぞユーキ。これ以上ドキドキさせないでくれ。国王様と普通に話している父さんにも、こっちはドキドキしているんだが…。
「どうじゃリチャード、ワシの孫は可愛いじゃろう。」
「何を、ワシの孫だって、負けてはいないぞ。まあ、今留守にしていて会わせられないのが残念じゃが。」
それにしても…。サルバドール殿下の隣に立っている女性は何者だ。さっきエシェットの事を攻撃して、廊下に穴まで開けていたが。おそらく普通の女性ではないだろう。後で紹介があると思うが、きっと父さんが言っていた、国王様の秘密にも関係あるはずだ。
そう言えばさっきの廊下の穴、国王様の関係者は誰も驚いていなかったな。それどころか通りかかった使用人は、またですかと言って、さっさと通り過ぎていたし。いつもの事なのか?
まあ、それもすぐに分かるだろう。オリビア頼む。早くユーキを着替えさせて、戻って来てくれ。




