97怖いけど、でも楽しくね
<ユーキ視点>
黒ねこさんをなでなでしてたら、黒ねこさんいつのまにか寝ちゃってました。お疲れだったのかな。小さいねこさんが近寄ってきました。
「しー、でしゅよ。ねんねしてるでしゅ。」
「うん。ねえ、いっちょにあしょぼ。」
「はいでしゅ!」
小さい魔獣がいる中に入ります。皆んなで何して遊ぼうかな。おもちゃここにないし。カバンにお菓子と折り紙入ってるけど、皆んな出来ないよね。うーん。考えてたらねこさんが、僕のお洋服の事聞いてきたよ。
「しょれ、おみみちゅいてる。あたちたちといっしょ?」
「しょうでしゅ。ぼくもシルフィーも、ねこしゃんでしゅ。ちゃんとおしっぽも、ちゅいてるでしゅよ。」
僕はしっぽ見せました。そしたら、まねっこしてって。ねこさんの動きをマネするんだって。僕上手だよ。前にもやったことあるもんね!
最初はお座りの格好から。前足上げて、後ろ足上げて、ブルブルして、まずは簡単なまねっこです。おしりフリフリもしたし、鳴き声も真似したよ。でもねやっぱり足でお首掻くの出来ませんでした。転がっちゃった。
「おりょ?」
「ユーキできない。あたちたちのかち!」
「ありゃりゃでしゅう。まけちゃったでしゅう。」
次は何して遊ぼうかな。このお部屋僕のお部屋より小さいけど、僕達も小さいから、ちょっとだったら動けるよね。
皆んなで何して遊ぶか考えてたら、キミルが黒ねこさんの方から飛んで来ました。それでいつものやる?って。皆んなうんうん頷いてます。何するの?わくわくして待ってたらキミルが光って、お部屋の中がふわふわな種で埋まりました。僕のひざくらいまで。
「たねいっぱいでしゅ!」
「種はもうついてない。わたぼこだけだよ。」
たくさんのわたぼこに皆んなが飛び込んで、飛んだわたぼこが、ふわふわふわふわ部屋の中飛びます。楽しそう。僕も!僕もシルフィー達も皆んなで飛び込みます。ふわわわわあ~。きれいだし、面白いし。
「キャキャキャッ。」
いつも黒ねこさん達がこのお部屋に帰って来たとき、これで遊ぶんだって。僕ここ来て怖かったけど、皆んないるし面白いから、ちょっとだけ楽しくなったよ。
たくさん遊んでお腹すいたと思ったとき、黒ねこさんが近付いてきました。キミルにわたぼこしまうように言って、わたぼこが全部なくなっちゃいました。それからねこさん達に大人しくしてろって。
「人の子、お前もだ。奴らが戻ってきた。いじめられたくないだろう。いいか、静かにしてるんだぞ。」
皆んなでお部屋の奥の方に行って座ります。遊んでると怒られて、いじめられちゃうから、悪い人達が戻ってきたら静かにお座りなんだって。いじめられるのやだ。僕も静かにしなくちゃ。シルフィーは僕の隣にお座りして、ディルとリュカはいつもと同じ。僕の肩に座りました。
少しして、僕をここに連れてきたお頭が、お部屋の前に来ました。お部屋の中見て、次に僕の事見て、ニィって笑いました。なんかやな顔。僕はシルフィーをぎゅうううです。お頭が中に入って来ました。
<黒ねこ視点>
いつのまにか眠ってたのか、ハッとして起きる。そしてチビ達の方に目を向ける。よかった。何も変わりはない。まさかこんなぐっすり眠るなんて。チビどもを守る者として失格だ。…あいつがかってに撫でてくるから。ちっ、と気づかれないように舌打ちをした。あいつのあれはダメだ。もう2度とさせてたまるか。…まあ、気持ちよかったが。
キミルがいつもどおりわたをだし、皆んなが遊び始めた。あのガキも一緒に遊び始める。外の手下の見張りしかいない、今しか遊ぶことができない、ほんのちょっとだけの息抜きの時間だ。キャキャキャッと声をあげて遊ぶあいつを見ながら、外に注意を向ける。
早くこいつらを自由にしてやらなければと思いながら、未だにそれが出来ないでいる。逃げるならば、他の場所に閉じ込められている、他の全員と一緒に逃げなければ、結局脅され命令され、最悪殺されてしまう。時々親に会いたいと泣くチビを見て、心が痛くなる。それに今回は…。
楽しそうに遊ぶチビ達を見ていた時だった。もの凄い力の塊が、この洞窟へと向かって来ているのに気づいた。あいつが来たのか?今回盗賊達が狙っていた、変異種のフェンリル。だがこの力は…。
確かに変異種のフェンリルは、どの魔獣よりも強く恐れられる存在だが、こんなに桁違いの力を持っているものなのか。体が勝手に震えてくる。
と、あいつの存在を感じ、キミルにわたを消すように言うと、チビ達にいつもどおりに奥で静かに座ってるように言う。人の子も大人しくチビ達の隣に座った。
おそらく偵察に出ていた魔獣の誰かが、あの力の塊がこっちに向かって来ていることを、あいつに伝えたんだろう。牢屋の前に来たあいつは1度中を見渡し、それから人の子を見て、にぃっと笑った。人の子は精霊をぎゅうっと抱きしめている。これから起こることは分かっていないだろう。自分がどういう扱いを受けるか…。
すまない。あの時本当に早く、お前を返していれば。お前が俺の前に現れた時、すぐに今回の狙っている子供だと気づいた。怪我を見て治すと言い張り、怪我を治してもらった時、お前の魔力をかすかに感じた。かすかにだったのに、それはとても暖かく気持ちいいもので。傷を治し、その場でお菓子をくれようとした。久しぶりに優しい気持ちになりそして嬉しかった。が、そんなことよりも、逃げて欲しかった。ここのチビ達のようになって欲しくなかったんだ。それなのに…。
扉を開け、あいつが入ってくる。いざとなったら人の子お前と、チビ達は俺の命に代えても守ってみせる。




