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カモにしちゃいけない奴ら

作者: わかんむり

とある男子高校生3人と女子高生2人は休みの日、街中でブラブラしていた。


「なぁ、何処行く?」

「ゲーセン行かね?」

「止めときなよ。あそこ今日先生が張ってるってさっきサトちんからメール来たよ」

「マジかよ!何でそんなとこ見回りしてんだよ…」


遊ぶ場所を何ヵ所か上げるが、この街は治安が悪い。

暴力沙汰や危険物の密売、不純異性交遊等、様々な違法行為が行われている。

その為、先生方が休日でも見回りする事が多い。


「あっ!じゃあカラオケはあそこは個室だし、入って来ねえだろ」

「そうだな。でも、あんまお金持ってねえんだよな~」

「じゃああんた何でゲーセン選んだのよ…」


すると、1人が辺りを見回すと、ある提案をする。


「なあ、あの2人も誘わね?」


彼が指を指した先に2人の男子が立っていた。

1人は少し地味な顔で眼鏡を掛け全身黒の服、背中にはリュックを背負っている。

もう1人は長い前髪で目を隠して、猫背の体勢でワンショルダーバッグを掛けている。

いかにも根暗なオタクといった感じの2人だった。


「うわ…マジオタじゃん。ヤッバ!」

「でも金持ってそうだな」

「あいつらなら騙せそう。身ぐるみ剥がす?」

「良いなそれ…じゃあ誘うか」


5人は2人に近付いていき、カラオケに誘う。


「なあなあ君ら暇?俺らとカラオケ行かね?」

「ん?僕達ですか?」

「そうそう今なら可愛い女の子も居るよ~」


黒い服の男子は案外話しやすそうな感じだ。

しかし…。


「ひー!どどどどうするの!佐吉さきち君!ぼ、僕行かないよ!」

「ま、まあまあそんな事言わずにさあ~」


もう1人は挙動不審といった所か、隠れながらどもっている。


「う~ん、でも暇だし、滅多にこういう誘いは受けないもんな…。良いよ」

「佐吉!」


佐吉という男子は了承すると、もう1人は突然呼び捨てで叫ぶ。


「え?」

「こら」

「あ…」

「ハハッ、ごめんねぇ~。何しろこいつ人付き合いが慣れてないから。駄目だろいきなり叫んじゃ、ビックリする」

「す、すいません…」

「い、いや良いよ。じゃあ行くか」


結局、2人は行く事になり、5人は呼び捨ての事が少し気になったがオタクの素なのだろうと気にせずカラオケボックスへと向かった。







カラオケボックスに着くと、それぞれ好きな歌を歌い始める。


「佐吉君、歌上手えのな!」

「いや~それほどでも~。あっ!でも賢池けんちの方が上手いと思うよ?」

「えっ!ちょっ、佐吉…君…」

「そうなの?じゃあ1曲歌ってみなよ」

「え…えぇ~…」

「はいマイク?」

「へ?ほわぁー!」


賢池は隣に座っていた女子からマイクを受け取ろうとすると、顔がかなり近くにあり、大胆にも服から谷間が見えていた。

賢池はそれに驚きながら、目をそらした。


「そんなに緊張しなくて良いのに…」

「す、すいません…」


そう言うと賢池は曲を入れ、歌い始めた。

一方の女子は他の仲間と目を合わせ、ニヤニヤと微笑み合っていた。






1人ずつ歌い終わった頃、佐吉の隣に座っていた女子がリュックの中身が気になっていた様で。


「ねぇねぇ佐吉君。このリュックサックって何が入ってるの?」

「ん?ああこれ?これはね…」

「ちょっと佐吉君!だ、駄目だって…」


見せようとした瞬間、その行動を賢池が止めに入る。


「良いじゃん別に~」

「駄目だよ!絶対駄目!何かあったらどうするんだよ!」


何やら頑なにリュックの中身を開けないように言っている。


「何何、何かヤバい物とか入ってんの?」

「う~ん…ヤバいというか。もう法り…ムグッ!」


賢池は正気か!と言わんばかりに咄嗟に口を押さえ、首を横にブンブンと振る。


「ん~、じゃあさ君達って口堅い方?」

「ん?まあそうだな。俺ら秘密主義者だからよ」


男子がそう言うと佐吉はフムフムと考える姿勢を見せる。


「そっか。じゃあ見せてあげよっ…」


プルルル!プルルル!


その時、店員さんからであろう電話が鳴り出した。


「はーい」

『もうすぐ終了10分前ですが、どうなさいますか?』

「あー、じゃあ延長無しで」


そう言うと男子は電話を切り、作戦を実行する。


「あれ?鞄の中は見なくて良いの?」

「うん。もう大丈夫よ。ありがとう」

「いや~実はさ、俺ら今日ちょっと遊び過ぎて金がなくてさ~」


1人の男子が金が無いアピールで先手を打ってくる。

それに続いて他の男子女子達も加わる。


「今月ピンチだったんだけどさ。でも遊びてえじゃん?」

「うんうん」

「そうそう、今日凄い楽しかったし。そん中でカラオケが1番だったよな」

「ぼ、僕も今日歌ったのひ、久しぶりでした…」

「佐吉君と賢池君て、お金持ってる?」

「ま、まあ…」

「じゃあさ…奢ってくんね?」


ニヤニヤとしながら5人は2人を見て、返答を待つ。

当の本人達は数分間ポカンとした表情を浮かべていたが、ここで佐吉が。


「良いよ」

「は?」


了承をした佐吉に対し、賢池が横を向き驚く。


「えっ!マジで良いの!」

「えっと確か財布何処にあったかな~」


直ぐに受けてくれた佐吉に5人はヒソヒソとしながら笑う。


「ラッキー」「チョロいな、へへっ」「オタクは騙され易いのよ」


そんな陰口を尻目に佐吉はリュックの中を探す。


「ええっと…確かあっ!」


佐吉は財布を見つけ、一気に取り出した瞬間、引っ掛かって何かが一緒に出て来た。


「何か落とし……ひっ!」

「おっと」


床に落ちたのは拳銃だった。

隣の女子はそれを見て驚愕していた。周りも同じく顔が青白くなっていた。


「あ、あの佐吉君…それは…?」

「ああ、護身用だよ。ほらこれとかこれも」


そう言ってリュックの中からナイフやスタンガンを取り出す。


「ここら辺犯罪やら多いから…あっ、でもこの拳銃はニセモノだから……バーン!」

「うおっ!」


大声で擬音を叫ぶと、賢池も含み全員が驚いた。


プルルル!


「おっ?電話かな?」


佐吉はポケットのスマホが鳴り出し、耳に当てる。


「はーい、お疲れ様~。また殺しの依頼?」

「へ?」

「馬鹿…」


彼らは耳を疑った。今、佐吉は何と言ったのか。


「うん、うん、報酬は?ふ~ん…」


周りを気にせずそのまま続ける佐吉。呆れ、ため息を吐く賢池。

しかし、その周りである彼らは未だに固まったままだ。


「賢池、ごめん。予定出来ちゃった」

「妊娠しちゃったノリで言うなよ…。後この人達を見てよ」


佐吉は今気付いたのか、彼らは先程の勢いは何処へやらずっと黙りしている姿を見た。


「その…」

「ああー、思わず口が滑っちゃったか~。怖がらしちゃった?」

「えっと…まあほら人それぞれだし…な!」

「お、おおう…」


何とか空気を戻そうと肯定的な発言をする。


「後、さっきも言ったけど……その事内緒にしてくれるよね?」

「!!」


首を傾げ、笑顔でそう言っているが、目が明らかに黒ずんでいて笑っていなかった。


「も、勿論…」

「はぁ…佐吉君予定出来たんなら先帰って良いよ。僕が払っとくから」

「あはは、ごめーん。賢池頼む」


佐吉は顔の前に手を合わせ、カラオケボックスから出て行った。


「ええっと…賢池君には害は無いよね…」

「ん?が、害って…」

「い、いや何でも…」

「じゃ、じゃあ僕が払い…」


ピロピロ!ピロピロ!


すると、次は賢池のスマホが鳴る。


「も、もしもし…」


賢池は弱々しく電話に出る。彼らはそれを見て賢池が普通の男子だと分かり、安堵する。


「良かったな…こいつは普通だ」「電話終わらしたらさっさと払わしてズラかろう」


佐吉の事もあり、まだ恐怖心が治まらない彼らは早く帰りたい気持ちでいっぱいだった。


「うん…うん…はあ!!」


賢池のこの叫び声によってカラオケボックスの空気が一変する。


「三阪組が乗り込んで来た!?それで何人やられた!」


突然の事に固まる5人。

賢池は鬱陶しい前髪をかきあげ、そのまま通話を続ける。


「ちっ!こうなったらこっちからも不意打ちかけて殴り込むぞ。親父と佐吉にも伝えとけ!」


そう言うと賢池は通話を切り、苛立っているのか机を蹴飛ばす。


「くそが!」

「きゃっ!」


悲鳴が上がると、賢池は周りの反応に気付き、我に帰る。


「ご…ごごごめんなさい!ついイライラしちゃって!」

「つ、ついって…」


賢池は焦りつつも、急いで財布を取り出そうとしたその時。

財布と共にポケットから何かが落ちる。


「な、何か落ち…」


隣の女子は落ちた物を見た瞬間、立ちくらみしてその場で気絶してしまった。


「やべっ!」

「お、おい大丈夫か!?」

「お前何者何だよ!つーか今落としたやつ何だ!?」


賢池は落ちた物を素早く拾うと、彼らに約束を告げる。


「言いたく無いですけど……まあここまでバラしちゃったからな~」


佐吉の拳銃、賢池の鬼の形相。ここまでボロが出るとカミングアウトせざるを得ない。


「僕は山越賢池やまごえけんち。山越組の一応若頭かな?」

「や、山越組ってここの市を制圧してるっていう極道の家紋…」


賢池が言うには極道一家の子息である為、学校でそれを知られようものなら、生徒どころか先生とも付き合えない普通の学校生活を送れない事になる。


そして、それは佐吉も同じ。


「佐吉は捨て子で…親父に拾われて家のスパイ兼殺し屋として育てられたんだ。あっ、だから義理の兄弟って感じかな?」


佐吉は心の無い親に河原で捨てられ、賢池の父が拾ったという。

賢池と同い年と分かった父は双子の兄弟の様に厳しく育て、悪の道に進ませた。


賢池は組の若頭。佐吉は殺し屋。それぞれが辿り着いた場所だ。


「神様のイタズラだよね。本当に…だからさ…」


賢池はそう言うとショルダーバッグから拳銃を取り出し、こう告げる。


「この事を言ったら殺す…」

「!!!」


最初の根暗なオタクとは違う、ドスの効いた低い声で伝える。


「わ、分かったから…言わないから!そ、それも仕舞ってくれ!」

「本当?」

「本当!マジマジ!金も俺らが払う!」

「金持ってたんだ…騙したのか」

「すすすすいません!許してください!」


拳銃を向けられ、賢池に謝罪が飛んでくる。


「まあ、チクらないなら許す。言質取ったし」

「すいません…」

「良いよ。じゃあ俺帰るから」


そう言うと賢池はカラオケボックスから出て行った。


「ぷはっ!焦ったー!」

「何か…とんでもねえ奴を連れてきちまったな…」

「本当だよな」

「はっ!」


すると、気絶していた女子が目を覚ます。


「ちょっと大丈夫!?」

「う、うん…」

「なあ、お前あん時何を見たんだ?」

「ゆ、指…」

「え?」

「人の…生身の…指がぁぁぁーー!」


フラッシュバックして、あまりの恐怖に泣き出してしまった。

それを聞いて、彼らは青ざめる。


「俺達…ヤバい奴らをカモにしちゃったって訳か…」


その後、彼らはこの様な行為はしなくなった。







「あっ!賢池ー」

「よう」


次の日、抗争を終わらせた2人は昨日の事を話す。


「昨日面白かったねー。あの驚きよう」

「ったく…拳銃といい電話といいボロが出過ぎだ、てめえは」

「痛っ!」


能天気な佐吉の頭を叩く。賢池からのお叱りを受けた。


2人の平和で平和じゃない日常はまだまだ続く。

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