第5話 宿での少年
下ネタ?あり
―――???
とても明るく無限に広がる白い空間。その空間に一人の女性と寝ている少年がいた。
「・・・ぃ」
「・・・ぉい」
(・・・ん・・・?)
「・・・あおい」
(なんだ?もう晩御飯か?でも、おかみさんの声にしては高いような・・・?)
「・・・藍・・・」
(!? この声っ、母さん!?)
少年は起き上がり、女性の姿を凝視した。
「・・・藍、お母さんもそっちに行くわよ・・・」
(そっちに行くって?まさか、この異世界に!?)
「・・・あ・・・い、ご・・・ね・・・」
(なんだ?声が、いや違う僕のいしき、が遠く、なって、き・・・)
女性は聖母のような慈しむ顔で少年の顔を見つめていた。そして、少年の意識の浮上と共に白い空間は霞んでいった。
「・・・藍、いやアオイ。必ず会ってあげる。そして面倒を起こした罰を受けてもらうから・・・」
光に満ちた部屋の中、女性の目に一切の光はなかった。
―――ヤック亭二階 アオイの部屋
「母さん!!!」
「うわぁ!!?」
な、なんだったんだ?今のは・・・母さん、だったよな?しかも「そっちに行く」って・・・
「あ、あの?ア、アオイさん?大丈夫ですか?すごくうなされていましたが・・・」
「あ・・・アリシアちゃん・・・ごめんね、驚かしたみたいで」
「い、いえ大丈夫です!それよりアオイさんは?」
大丈夫、なぜかその言葉が口から出なかった。変わりに出たのは、
「・・・もう晩御飯かい?」
「あ、はい!」
そして二人で食堂へ歩いた。しかし、さっきのは何だったのか・・・それにあんな笑顔の母さん、一度も見たことない・・・いろいろどうなってるんだ?
―――ヤック亭一階 食堂
「それじゃ、食べましょうか!」
「はーい!」「いただきます」
異世界初のご飯はいわゆる黒パンとシチューのような匂いのスープに鮮やかなサラダ、果物とおいしそうなメニューだった。カップ麺とはちがう、とてもいい匂いがする。
では、いざ実食。・・・もぐもぐ・・・・・・むぐむぐ・・・。・・・やばい、うますぎる!一言でいって最高よりも最高だ!まずシチューもどき、前世のレトルトより何倍もうまい!少ないが肉もありやや薄く質素だが味がまろやかでおいしい。そこに黒パン、やや硬いのだがシチューもどきにつけると柔らかく甘くなって最高だ!
続いてサラダ。まず見た目が鮮やかだ。買い出しの時に思ったがこの世界の青果は色がとても鮮やかなものが多い。それがきれいに盛り付けてあってさらに美しくなっている。そして味、これは驚いた。おかみさん曰く、洗って切って盛り付けただけらしいが一切の青臭さや苦み、渋みがないのだ。先ほど分かったことだが、スキル:五感強化によって味覚もやはり良くなっている。にも関わらず、苦みなどが一切ないのは驚愕だ。よほど品質も鮮度も良かったのだろう。それをタダでくれた商店街の方々はすごいな・・・
最後に果物。見た目は梨のようで丸く緑がかっているが、味はリンゴそのものだった。しかも甘さが半端じゃない。前世でも食べたことのないほど甘く、しかもクセがなかった。
「・・・すっごい一心不乱に食べてるね・・・お腹すいてたのかい?」
「・・・もぐもぐ・・・」
「・・・お~い、アオイ~?」
「・・・もぐむぐ・・・ごっくん・・・ばくばく・・・あ、おかわりお願いします(キリッ」
「お、おぉ。(なんでそんな真面目そうな顔なんだい・・・?)」
「ふわぁ~アオイさんよく食べるね~」
・・・数十分後
「・・・ごちそうさまでした」
「?さっきも気になったがその”いただきます”と”ごちそうさま”ってなんだい?」
「ああ、これは・・・僕の住んでいたとこの習慣です。食事の始めにいただきます、終わりにごちそうさま、というんです。食材と料理人に感謝を、という意味です」
「ふ~む、いい習慣だねぇ。で、お腹いっぱい一心不乱に、人の話も聞こえないほど一心不乱に食べた感想は?」
「・・・おいしかったです」
「そうか!ならよかった!ま、若いうちはいっぱい食べんさい!」
「はい・・・」
どうしてだろう、おかみさんには一生かなわない気がする・・・
そんなこんなで晩御飯を食べ終わったころに気になっていたことを聞いた。
「あの、ひとついいですか」
「ん?なんだい?」
「ここって宿ですよね?三階まであるのに誰もいないような・・・」
「あぁ、そんなことか。えっと、うちは今休みなんだよ。というか宿には休みを取る日があってね、大体一年に三から十日ほど休むとこが多くてね。うちはこの時期にお客さんの入りを制限して五日間閉じるんだよ。で、休みの間に大きな買い物をしたり大掃除や旅行、実家帰りなんかしたりするんだよ。まぁこの宿はお客さんの入りもそこそこで二人でも回ってたぐらいだけどね、それなりに稼ぎはいいんだよ?それに普段掃除は細かくやってるし、特に大きな買い物も必要ないからこんな風にのんびり過ごしていたわけよ。」
「なるほど、あ・・・休み中なのに泊まらせてもらってすみません」
「ん、いいよいいよ。この子が―――って寝てるし・・・もうこの子は・・・まぁあんたはアリシアがわざわざ休みなのを承知で引っ張て来たんだ、きっとこれが最善だろうよ・・・ところで、この子を寝室まで運んでくれないかい?」
「ありがとうございます・・・えっと、アリシアちゃんの部屋は?」
「あんたの隣の部屋だよ。わかんなくっても扉にスタッフって書いてあるから。はいこれ部屋の鍵」
「わかりました。では―――」
「あぁまった!一応この子の部屋に風呂があるから借りてきなさい!」
「ありがとうございます」
僕はアリシアちゃんを持ち上げ階段を上った。
―――ヤック亭二階 アリシアの部屋
「よいしょ・・・っと」
僕はアリシアちゃんをベッドに下ろし、一息ついた。
しかし彼女はよく眠っている。僕の一個下なのにずいぶん幼い寝顔だ。少し和む・・・
さて、風呂を借りるとするか。確か自分の部屋に替えの服一式とタオル(というか布)があったはず。脱衣所で服を脱ぎながら考えた。あれいつの間にそろえたんだろう?おそらく買い出し中だろう、ありがたい・・・が、が!
なぜリボンなんだ!?
いや、リボン以外は男女どちらも使えるものだし、パンツもいわゆるカボチャパンツ?だ(ラノベにそう書いてあった)。だが、ネクタイでもよさそうなところになぜリボン!?これのせいでパンツルックにもかかわらず女性的なんだが!?
・・・まぁ用意してもらったものにケチをつけるのはよくない。とにかく風呂に入ろう。
(・・・ん、あれ、ここ私の部屋だ・・・)
私は気が付いたら自室のベッドに横になっていた。
(たぶん、アオイさんが、お、お姫様抱っこ、をしてくれたんだよね・・・?)
眠気のせいでぼーっとしていたがそこだけ覚えていた。何せ今の私の顔はおそらく真っ赤なのだから。顔が熱い、とても恥ずかしかった。同じ女の子のはずなのに自分を軽々と運んでしまう姿は―――
(お姉さま・・・アオイ、お姉さま・・・///)
そんなことを考えていた時、風呂の方から音がすることに気が付いた。ヤック亭は何部屋かには魔道具でお湯を出せる風呂を設けている。自分の部屋もそうだが魔道具を使えない人のためにボタン一つでお湯が出るようになっている。そのお湯を出すときに魔道具独特の低い音―――少しうるさい―――が出るのである。その音がまさに風呂から聞こえていた。
(まさか、泥棒!?)
泥棒は風呂に入らない、そう突っ込む人はこの場にいなかった。
(え、えっと、とりあえず・・・あった!)
私は近くにあった箒を手に取り構えた。そして風呂場の前、脱衣所のドアに手をかけた。
ふぅ、さっぱりした。しかしシャワーがないのがここまで不便とは思わなかった。決して苦ではないのだがどうも慣れない。そして風呂場から出ようとドアに手をかけると―――
「てぇいやぁ―――!!!」「―――え?」
ドカーン!
「いてて・・・なんだ?」
何か、赤茶色の物体が突っ込んできたような・・・?ん?待てよ・・・赤茶・・・ここはアリシアちゃんの部屋そしてこの下半身の柔らかな重み・・・!
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
パオーン
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?え、えぇぇぇぇぇ――――――――――――!!!???」
アリシアちゃんの顔のど真ん前に僕の・・・があった。
「えっ、あっあの、えっ?えっ?あ!ん?えっと、えぇ~~、えっ?」
アリシア ちゃんは こんらん している
「・・・あっ、い、いやぁぁ―――――――――!!!!!!!」
バン!!!
「いっっだぁぁ―――――!?」
アオイの ・・・に だいダメージ!
アオイは もんぜつ している!
「あぁ・・・あ、ああ・・・」「う、うぅ・・・し、しぬぅ・・・」
アリシアの部屋脱衣所にて負傷者一人の事件が起きた。
少年は食べることも好きです。前世でも食う寝るしまくってましたが、運動していたのでむしろ健康的だったそうです。(うらやま)