第1話 再誕する少年
ある所に一人の少年―――森琳藍―――がいた。彼は「愛情」を知らずに育ち、享年15歳だった。
ある所に一人の母親―――森琳風有紀―――がいた。彼女は「愛情」を与えられずに藍を育て、藍の死後1年後に享年35歳で亡くなった。
藍は異世界を考えながら「愛情」を求めた。そのとき、光が彼のからだを包み、彼の意識は薄くなっていった。しかし彼には不思議と恐怖も驚きもなかった。彼が薄れゆく意識の中思ったのは、
(僕・・・死ぬな・・・)
という、感想であった。光が収まり彼は倒れた。この時すでに彼の魂はこの世になかった。その文字通りに・・・。
―――ユグドラシル城下町のとある民家
「ちっ。子供なんかできやがって。」
「どーでもいいわよ、別に。どうせめんどくさいのは産むまでよ。」
「フン、そうだなすぐ捨てるんだ。でもきみが辛そうにしているのが最も許せない。すべてこれのせいだ。」
「もう、貴方ったら・・・。」
「しかし、いつ産まれやがるんだ?これは?」
「医者が言うにはあと2か月だそうよ。」
―――2か月後、城下町の裏路地
(・・・ここは、どこだ・・・?)
(布に包まれている?それに体が小さいような・・・)
(・・・そうか僕は藍、前世で死に、転生した・・・のか?)
「ふぅ、ここでいいわ。」
(ん?今、僕を抱えているのは母親、か?)
(しかし、赤ん坊のはずなのによく見えるな・・・ってここは、家ではないよな・・・)
「よいしょ・・・じゃ、さよなら。私のかわいい息子さん。」
(・・・)
(・・・は?)
母親らしき人は藍を置いてどこかへ行ってしまった。二度と振り返らずに。
(まさか・・・すてられた、のか?)
(転生した先ですぐ捨てられる・・・か)
(前世の幸せだったころがうらやましく思える。)
(さて、どうしようか・・・)
藍は頭の回転も速かった。前世では15年しか生きられなかったのはずなのに、その精神と頭脳は並みの大人よりも何倍も優れていた。その冷静かつ超ハイスペックな頭はコンピューターにも似た思考をもつ。そして今その頭脳は警報を発していた。
(まずいな・・・赤ん坊の体で布1枚はかなり危険だな・・・。体が動きにくくなってきた・・・)
〔生命力の低下を確認。体温の低下が原因と判断。・・・・・・スキル:耐寒を得ました。〕
(ん?なんだ今の声?誰も周りには・・・いないよな?)
(スキル:耐寒って・・・体が、寒くない?まさか・・・)
〔生命力の低下を確認。栄養不足が原因と判断。・・・・・・スキル:飢餓耐性を得ました。〕
(今の通りなら・・・うん、間違いない。体が動く。)
藍が不思議な声を分析していると再び声が聞こえた。
〔魂魄体と物質体の年齢差を確認。・・・・・・物質体を魂魄体と同じ年齢にします。プログラムには激痛が伴います。・・・セットアップ完了。カウントダウン。10、9、8、・・・〕
(・・・激痛?)