プロローグ
初投稿です
その少年は知らなかった。自分が愛されていないことを。
その少年は知っていた。自分が母親にゴミとも思われてもいないことを。
その少年は思っていた。自分は恵まれていると。母親から金、寝処、学校と与えられていたために。
その少年は思わなかった。自分はさみしいのだと。名ばかりの母親というヒトが身近にいるために。
周囲のひとは知らなかった。その少年が母親に放置されているとも。
周囲のひとは知らなかった。その少年が笑わないことを。
その少年は知ってしまった。「異世界」という楽しそうな世界を。それが描かれる小説を。
その少年は知ってしまった。「転生」ということを。新たな家族ができることを。
その少年は知ってしまった。「愛情」が自分に与えられていないことを。転生後の主人公の家族との生活を読んで。
そして少年は思ってしまった。本人も驚くほどの強い思いを。
(僕は―――「愛情」を知りたい―――――)
―――ある日、母親が帰宅すると少年は死んでいた。この世で初めての笑顔を残して―――
そして始まる。「愛情」を知らない少年が異世界で「愛情」を求めゆく物語が。
―――ある日、とある家で母親と息子と思われる遺体が発見された。2人とも微笑んだ不気味な遺体が―――
そして始まる。「愛情」を与えられなかった母親の「愛情」を届けゆく物語が。
短めですが、次から本編