語り部の部屋
~語り部の部屋へようこそ~
そこはただ一本の廊下が続いていた、
窓は無くかすかな明かりで照らされた薄暗い道に留まるわけにはいかず、
アナタは突き進んで行く。
そのうち目の前に一つの扉が見えてきた、
アナタはその扉をゆっくりと開けた。
「オヤ、珍しいですネ。」
そこにいたのは一人の長身で細身の男性、
カレはアナタの事を知っているかのような口ぶりで語りかけてきた。
「初めましテ、“読者”サン。
ワタクシは……そうですネ、“語り部”とお呼びくださイ。」
男性、“語り部”はアナタに向き直り、気取ったように腰を曲げた。
「ココはドコだ、と思っていらっしゃるかと思いますガ、
ココはワタクシの、“語り部の部屋”なのでス。」
“語り部”はアナタの前を横切り壁側を示した。
そこでアナタはその部屋の壁、全てが本棚であることに気が付く、
30帖ほどの室内の中央には長めのソファー、黒塗りのテーブルが置かれていた。
そして、アナタは天井が見えない事に気が付く、
天井は見えずそしてその周りの壁も全て本棚であることも。
「素晴らしいでしょウ。」
気が付くと“語り部”はアナタの隣に立ち、話しかけてきた。
「本というのはそれ自体が“小さな世界”なのでス、
そして世界というのは限度などはありませン、無限に存在するのでス。」
“語り部”はいつの間にか手に持っている本を広げた。
「ワタクシはその“小さな世界”に魅了されたモノなのでス、
アナタは……どうでしょうカ。」
“語り部”は広げていた本を閉じ、アナタに差し出してくる。
「この無限に広がる本の中には勿論アナタの本もあるでしょウ。
それだけではありませン。
幸せな結末も、
悲しい結末も、
不幸な結末も、
空しい結末も、
様々な本があるものでス。」
本を手渡した“語り部”は後ろに下がりながら両腕を広げ、
アナタに頬笑んでくる。
幸せな結末に暖かな想いを抱くように、
悲しい結末に哀愁に浸るように、
不幸な結末に愉悦を感じるように、
空しい結末に皮肉を帯びるように、
“語り部”は微笑んだ。
「アナタはどうでしょうカ。
この“小さな世界”を観ていきますカ?」
アナタは手渡された本を見て――
―――ゆっくりとその本に手を掛けた。
始めまして、榊 趣理です。
今年より初めての投稿を始めようと思います。
個人的な事情で投稿がかなり遅れると思いますが
できるだけ投稿していきたいと思います。
よろしくお願いします。<m( _ _ )m>