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「・・・ひっ!!」
なんとなく漂ってきたアンモニア臭で気がついた。
何といいますか・・・目の前の剣を摑んでね?
・・・押し倒してました。
先ほどの敵意むき出しの奴を。
押し倒して首に剣を押し付けていた。
やべぇ、やり過ぎたか?
あまりの恐怖にお漏らしなされた様です。
「ご、ごめん。つい・・・」
とりあえず押さえつけていた体の上から退いてやると這いずる様に慌てて逃げ出した。
「あちゃー、またやっちゃった。」
子供の頃からのコンプレックスだけじゃ無いと思うんだけどねぇ。
ボクにはNGワードってのが存在する。
それを聞くと滅茶苦茶に暴れるらしい。
らしいってのは・・・うん、自分じゃ覚えてないんだわ。
だいたいが気がつくと周りに立ってるひとが誰もいなくなってる。
クラスメイトからは『バーサクモード』とか言われてた。
でも、今回の犠牲者は1名だけ。ボクも成長した?
違うか。
それよりも・・・ちゃんとパンツ洗えよ?
なんて余計な事考えてたらまた柔らかい物体に押さえつけられてた。
正確には背後から抱きしめられてました。
「すごい!すごいです!!」
いや、凄いのはこの柔らかい感触だろ?
「へぇぇ、君、強いんだねぇ。」
さっきのチャラそうな男がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「すみません、なんか、やらかしちゃったみたいで。」
妙に照れくさくなってポリポリと頭を掻く。
指先に髪の毛の他の感触・・・あれ?包帯?
「ところで・・・大丈夫ですか?そんな急に動いて・・・」
え?
「うん、そうだねぇ。君、全身血だらけで転がり落ちてきたんだよ?」
血だらけ?
ぷちっ
「あっ。」
「お?」
「あら?」
ぴゅーーーーー・・・
昔、時代劇だかなんかで見たことあるな、これ。
水芸って言うんだっけ?
扇子の先からとか・・・色んなところから水出すやつ。
赤くて綺麗だなぁ・・・って、そういえばこれ、私の血だっけ。
やったね、新たな宴会芸ゲットだぜ!
なんてくだらない事考えてたら再び意識を失った。
夢を見てた。
記念すべき?25回目の・・・自分で言っててちょっと凹んだ。
その告白の日の朝。
確か近所の神社だっけ?そこでの事。
パンパンと柏手っていうの?
んでもって手を合わせたまま目を閉じて祈る。
別に宗教とかハマってないよ?
今日、これから告白する。
んでまぁ、学校行く途中に神社があったんで
こんな時ばっかり都合良いのはわかってたけど・・・
お賽銭?勿論、奮発したよ?
今日のお昼代1000円。
投げ込みやすいようにネットで調べて
英世さん、ターバン巻いた状態になってたけど。
これで成功したら追加報酬、英世さん野球チーム位、払っても良いかな。
んじゃ行ってくるぜ。
ボクに力を貸してくれ。
・・・何の神様だか知らんけど。
あぁ、そうだった。柄にもなく神頼みなんかしたんだっけ。
役に立たなかったみたいだけど。
「そりゃそうだろ?だって、うち、縁結びじゃなくて縁切る方だから。」
なんだ、そりゃ無理だ。
「気付かんかったのか?」
うん、全然。・・・・んぁ?これ、夢だよね?確か。誰と話してんの?ボク。
「うむ、そうじゃな。おぬしの夢の中じゃよ。まぁ、そんな事はどうでも良いではないか。」
まぁ・・・そうなのか?
「んでまぁ、おぬしに謝らなければならん事があるのじゃ。」
謝る?・・・初対面?ですよね?ってか、顔が見えないんですが・・・
「すまんのう、わしに顔とか無いんじゃよ。」
はぁ?
「一応、神と言うんだっけ?そういうの。まぁ、お主が想像した姿なら見せられない事も無いんじゃが・・・ちょいと想像してみ?」
神?ホントかよ・・・試しに想像してみる。
3頭身で小太り、逆モヒカンで背中にクラッシックギター背負って、アロハ、Gパンに下駄・・・
「ちょっ!?おま!!なんつう想像しとるんじゃ?」
・・・想像した通りの怪しいおっさんが目の前にいた。
「まったく、ここまで酷い想像されるとは思っとらなんだ。」
うん、キモい。
「キモいって・・・まぁ、そんなこたぁどうでも良い。」
あ、いいんだ・・・
「お主、階段から落ちたろ?」
そっか、やっぱ落ちたんだ。
「うむ。しかもな、次元の狭間と言うか・・・空間の歪みの中にな。」
は?何ですかそれ?
「すまぬ、わしの開けた狭間に落ちたのじゃ。」
はぁ?
「ほら、わしってば縁切りの神なんぞやっとるだろ?切った縁がどんどんたまっててな。
あまりに溜まりすぎてなぁ・・・ちゃいちゃいっとナイナイしちゃおうかと思ってたら・・・な。」
な、じゃねぇよ。ってか、何で学校にそんなの開けたんよ?
「そこはほれ、縁切りとか言ってたよってくるのってさぁ、ジジババばっかなもんで・・・
たまには若い娘とか見たいじゃん?」
なんか語尾とかどんどんがさつになってきて無いか?このおっさん。
「べ、別に着替えとか覗いてた訳じゃ無いんだからね!!」
何でそこでツンデレ風?ってか、おまわりさん!こいつです!!
「いいじゃん別に。お主が見られた訳でも無かろう?」
開き直ったよ、こいつ・・・まぁ、いいか。・・・いいんだろか?
「んでな?お主が落ちた時に・・・その・・・切った縁が・・・
全部お主についてしもうた。」
え?・・・縁が付いた?・・・それってどうなるの?
「多分なんじゃが・・・縁とは人と人の結びつきじゃ。
害は無い筈。というかむしろ・・・
お主はこの先、色々な縁に恵まれると言うか・・・
嫌でも色々な縁が付いてくるであろう。
つまりは・・・・モテモテじゃな♪」
サムズアップいらねぇよ、おっさん。
・・・・あ、大事なこと忘れてたわ。
「何じゃ?」
その狭間?に落ちたボクって、この後、帰れるの?
「・・・・」
え?そこで目をそらす?ってか、あんたのせいだよね?これって。
「ま、まぁ、あれだけの縁が付いておるのじゃ何処にいても死なんよ、お主なら。」
そういう問題じゃねぇよ。
「ま、まぁ、言葉も通じるようにしといたし・・・頑張れ?って事であとよろ〜♪」
あとよろじゃねぇよ!何とかしろよ!!
「ばいばいきん♪」
おっさんが言っても可愛くねぇよ!ってか、おいっ!
おいっ!!
あーーーもーーーー!!