1
続く・・・・といいな。
頑張る。
No,01 序章
「好きだ!」
・・・ボク、妹尾 瑞樹は
「ごめんなさい。」
「・・・お、俺は、諦めませんから!」
いい加減、うんざりしてた。
このやり取り・・・今日だけでもう20人位になる。
え?爆発しとけ?そりゃそう思うよね。ボクもそう思うわ。事情を知らなけりゃね。
こんな経験、した事ないわ。ってか、したくもなかったけど。
昨日まではこんな事無かった。どちらかといえばモテない、なんの特徴もないタダのオタだった。
そりゃまぁ、ちょっとばかし剣術には自信あったけど・・・みんなしてからかってる?
いや、それにしては相手がまちまち。
年齢、身分とかみんな違うし・・・
モテ期到来?
そんなもん、実際にある訳ないじゃん。
何か裏がありそうで怖い・・・なんて考える位にはモテない奴だったのだ。
それにだいたい、今のボクの格好・・・どうしたもんか・・・
はぁぁ・・・昨日までは何もかも普通だったのに・・・
「ボ、ボクと、つ、付き合ってください!」
階段の突き当たり、屋上へと続く扉の前。
めったに人の来ないここはこの学校一番の告白ポイントだ。憧れだったクラスメイトに一世一代の覚悟で想いを告げた。
「ごめんなさい。」
「・・・・」
「だって、わたしより可愛い彼氏って、考えられないし。」
「・・・へ?」
何だよその理由は・・・
「君の事、別に嫌いってわけじゃ無いのよ?でも・・・どう見ても百合カップルにしか見え無いでしょ?それはちょっと・・・ねぇ?」
え?
「それにわたし、男らしい人がタイプなのよね。だから、ごめんね。」
そう言って走り去っていった。
これで何回目だろう・・・
なんだよ可愛いって・・・好きでこんな見た目じゃ無い。
子供の頃から華奢だった。
体を鍛えるために剣道とかやってみた。
道場でも一番貧弱で虐めの対象だった。
ただ悔しくて、がむしゃらに鍛えてたらいつの間にか通っていた道場の中で一番になっていた。
それでも・・・いくら鍛えても筋肉がつかなかった。
終いには『美少女剣士』なんて言われる始末。
人生ってままならないよね。
全体的に線が細いだけならまだしもウエストはくびれ、お尻は若干大きく、シルエットはまるっきり女子だ。
いや、シルエットだけじゃ無い。肌の感じもそうだし顔つきも・・・
たとえ詰襟の制服を着た今の状態でも・・・ヅカなのか?って位違和感ありあり。
オマケに名前が『瑞樹』って・・・・女みたいな名前だし。
なので今回の様に告白を断られるのも慣れてしまった訳だがそれでも直後となるとかなり凹む。
うな垂れたまま階段を降りてくるとクラスメイトの一人が待ち構えていた。
「瑞樹・・・どうだった?」
心配して来てくれたのかも。
「また・・・駄目だった。」
その一言を聞くとニヤッと笑った。あれ?心配してたんじゃ無いの?
「おっし、儲けた。いや〜、賭けてたんだよ。倍率は低いけど今回も儲けさせてもらったわ。ありがとな。」
そう言ってまるでスキップでもしそうな勢いで帰っていく。
実際、スキップしてたし。
だれも心配なんかしてくれない・・・か。
まぁ、予想はついてたけどね。
「はぁぁ・・・ここに居ても仕方ないか。さっさと家に帰ろう。」
と、ため息とともに踏み出した足が階段の縁、俗に言う滑り止めの上を綺麗に滑り・・・
ボクの体は重力に引っ張られるままに階段を転げ落ちていった。
とっさのこととは言え、受身もキチンととったはず。
なのに何だろう、この痛みは・・・
身体中が痛い。
まるで身体が動かない。
あまりの痛みに目も開けられない。
ボク、階段から転げ落ちただけだよな?
せいぜい10数段。
しかも校舎内。
普通に廊下に転がっただけにはず。
やっとの思いでうっすらと目を開けた先には・・・
ボクのことを見下ろすメイド服姿の数人の女性がいた事を確認したところで意識を失った。
「いったい、何者なんでしょう。」
「わからんが・・・ひどい怪我だったな。」
「怪我もそうだが・・・どこから現れたんだ?」
先ほどこの・・・所謂、冒険者ギルドの訓練場に突然、血だらけの人が現れた。
正確には降ってきた。
今日は丁度、剣術の講習と称して騎士団長や隊長クラスの騎士が大勢、講師として招かれていたのだが・・・
彼らの眼の前に突然、人が降ってきたのだ。
見たことも無い黒ずくめの服、ボロボロで血だらけ。
アサシンか何かとも思ったけど、そんなものに狙われる様な人物はいない。
まぁ、いるとしたら私くらいだけど。
この国は至って平和。
暗殺とかまるで無縁だし、だいたい、降ってきただけだし、丸腰だったし。
よくわからない状況だがかなりの怪我だし、取り敢えず医務室へと運んだ。
今は講習も終わり、先ほどの降ってきた人の様子を見に騎士団長、ギルドマスター、そして私の3人で医務室へと向かっているところだった。
え?私?いや、私のことなんてどうでもいいじゃ無い?
「取り敢えず、意識が戻ったら聞いてみるしかあるまい。」
「そうだな。それくらいしか出来ないか。」
そんな会話をしながら歩く騎士団長とギルドマスター。
「とは言え、何者かわからないのです、姫はあまり近づかないで下さいね?」
「わかってるってば!」
うん、そう。
私、一応、この国のお姫様なのよね。
と言っても第3王女、継承権も3番目。
要はいざって時のスペアのスペア。
娘を政治の道具にするのは絶対に嫌だと言う父王のおかげで政略結婚とか考えなくていいし結構好き勝手にできる身分。
今日も騎士団長に連れてけって駄々こねたらあっさり連れて来てくれた。
私が見てるからなのか講習中、みんなすごい張り切ってたけどほとんど見てなかった。
それよりも私はあの突然現れた人が気になって仕方なかった。
だって、すっごい綺麗な人だったんだもん。