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ルーシアに飛ばされました  作者: 岡田祐介
第二章 異世界ルーシア
7/10

魔剣と機動戦士

 あろう事かまともな装備なしでラスボス確実、魔王無き魔族を束ねるバラッド将軍の根城であるアベル要塞に捕えられていた俺、山下浩一とエル。牢から脱走、見張りのワニから剣とここがどこか、の情報を奪った後はワニを気絶させ、牢獄エリアからの脱出を図る。


「どうするんですか! 私たちじゃバラッド将軍と戦ったって!」


 ずーっと続く牢獄エリアを駆ける俺の後ろから着いてきているエルが言う。


「戦うわけないだろ。それより、お前天界に戻る手段が何かあるんだろ。とっとと戻れ」

「戻れたら戻ってます。ここ、かなり強い障壁があるみたいで、天界へアクセスできないんですよ」


 全く、上手く行ってりゃエルが俺のお助けキャラになっていただろうに。


「あの、戦わないにしたって脱出してもどうするんです? 私は障壁を抜ければ天界へ戻れますが、あなたは」

「なる様にしかならないだろ。それより、戦えないなら離れるなよ」

「おお……何ですかそのカッコいいセリフ! 元引きこもりのモジャモジャ頭がカッコよく見えてきましたよ!」

「言ってる場合か! いいか、俺達は今のままじゃ将軍の手下どもにサンドバックが関の山だ。まずは俺達の様な脱走者を増やすぞ!」

「お、おお。何だか頼もしい」


 言ってエルは俺の左手を握り、「何だよ」と訊くと「え、離れるなって言いましたよね」とまぁ何だろうなぁ、口開かなきゃめちゃくちゃ可愛いから急に手を握られちゃドキッとしちゃうんだけど。アニメ脳だから一瞬俺に惚れちゃった? もしかしてエルはチョロインなのん? とか思っちゃったのに、こいつの口ぶりはさも普通のご様子。


「まさか、浩一。私とフラグ建っちゃった? とか私が惚れてる? とか勘違いしました? うわぁ、ないっすわぁ。流石に引きますわ」

「う、うるさいな……。とりあえず、脱走者を増やして混乱を起こしてそのスキに逃げるぞ。いいな」

「分かりました」


 よし、俺は走る速度を上げ、牢獄エリアから脱出。出てすぐが十字路になっており、同じような牢獄エリアに続く通路が二つ。残り一つの通路は恐らくこのエリアから脱出できる道だろう。俺が走って来たエリアの牢は誰も居なかった。だったら二つある十字路に必ず居る筈、同じように囚われている囚人を解放し混乱を生み出し、そのスキにこのポンコツと脱出。

 あれ? 俺って策士じゃね? 作戦完璧じゃね? と、胸中で自画自賛しながら、思った通り囚われていた囚人たちを解放して案の定賑やかにさせるまでは良かった。

 が、問題はここからだった。

 囚人を解放した後、十字路に出、エリアから脱出して要塞防衛に使われているであろうでっかい砲台の下に出た時、そいつは空から現れた。灰色の寒空から降ってきたそいつは、十五メートルくらいで、人型でそうその姿はまさしく機動戦士的なロボット!


「ウソ! あれは別の世界の!」


 ほらー! 何か知ってそうなエルだけは巨大ロボットを見て何か言ってるし。


『終わりだ囚人共!』


 巨大ロボットから聞こえた声、直後ロボットの頭のバルカンっぽい武装からの掃射! 俺達を含めた囚人達は逃げ惑い、俺達は手近な木箱の陰に隠れる。


「おい何だよあれ! ファンタジーな世界観一気にぶっ壊したぞ! お前、さっきあれが別の世界のとか言ってたな、何か知ってるんだろ!」

「し、知ってますけど私は悪くありませんよ!」

「よーし知ってるんだな」


 俺が木箱の陰からこそこそと巨大ロボットを覗こうと顔を出すと、エルも同じように顔を覗かせる。


「で、何だあの巨大ロボットは。あ、ビームサーベル使った。すげぇ」


 巨大ロボットは腰のラックからビームサーベルを抜刀、振り回し始めた。いやぁ、オーバーキルすぎですよ。


「あれは、天界が特別危険監視対象として把握していた機動戦士です」


 アウト!


「どこの兵器だよ……連邦か? 連合? それともザフト? ジオン? まさか、ヴェイガン?」

「何言ってるんですか。ガンダムじゃないですって。あの機動戦士はアメリカ製です」

「ウソ吐け! アメリカでもあんな兵器作れるわけないだろ!」

「作っちゃってたんですからしょうがないじゃないですか……というか、あの機動戦士を作ったアメリカはあなたの居た世界のアメリカとは違いますよ?」

「あ、ああそう。……で? あれについて詳しく」

「えぇー、まさか巨大ロボット好きなんですか?」


 好きなんですか? だと? バカかお前は! 巨大ロボットに魂が揺さぶられないわけがないだろ。とか何とか言ってる間にも巨大ロボットは暴れ回って囚人たちは逃げ惑っている。


「まぁ、あれがこの要塞で暴れて囚人を狙っているという事は、あの兵器は将軍の軍に配備されたわけですから。情報は必要ですよね」

「おう。ほら、とっとと教えろ」

「はいはい……。あの機動戦士は湾岸戦争直後の陸戦歩行兵器理論の―――――って、なに頭抱えてるんですか?」

「なにじゃねぇよ、どっから話そうとしてるんだよ。もっと兵器の性能とか、開発経緯はいいから」

「はぁ、注文の多い方ですねぇ。機動戦士の基本武装は20mmバルカン、ビームガン、ビームソード、確か対空ミサイルと対地対艦ミサイルもあった筈です。それに反応装甲のシールド、飛行能力もあります。稼働時間に限界はありません。まぁこんな感じです」


 うわぁ……どー考えてもファンタジー世界に持ってくる物じゃないだろ、それに魔剣でチートになったんなら後使いこなすだけなんだろ? だったらそれで我慢してろよ。どうやって巨大ロボットと戦えばいいんだよ。


「エル、機動戦士の弱点は?」

「核爆発の衝撃にも耐えうる外部装甲に内部フレーム。深海活動も想定されててそうそう圧潰しませんし、爆装した戦闘機が亜音速で突っ込んだって無傷ですよ」

「おい、弱点無しじゃんか、どうすりゃいいんだよ」

「逃げが得策かと」


 まぁ、そうなんだけど。何だかなぁ、強さを見せつけられただけだから何か手土産に情報でも持って帰れたらって思ったんだけど。


「とりあえず要塞から出ましょうよ。まだ機動戦士に見つかってませんし」

「だな、よしコソコソっと移動するぞ」


 と、俺達が移動しようとした時、機動戦士は突然空に舞い上がったではないか。


「あれ? 機動戦士が飛びましたよ」

「ああ――――っ! エルしゃがめ!」


 首を左右に振ってアワアワしかけたエル、俺はエルの頭を掴み無理やりしゃがませると宙を赤の衝撃波が幾つも駆け抜け、上に飛んだかと思った機動戦士がミサイルをばら撒き始めた。ミサイル着弾後、オレンジの爆炎が幾つも立ち上がり、衝撃波で建物やらがガラガラと崩れこの世の終わり状態。


「今の衝撃波! 魔剣ゼロでの攻撃です!」

「じゃあ将軍がいるわけか、エル、とっとと逃げないと将軍に見つかっ―――――!」


 立ち上がってエルの手を引いて、崩れた壁から外に逃げようとそう思ったのだが目の前には久しぶりに見た魔剣の切っ先があり、エルが俺を呼ぶ声を最後に意識は途切れてしまった。


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