紫髪の白装束
可哀想に……。と目の前で女の子が呆れていた。自分よりも年下であろう、リアルで見るのは初めての紫色の髪に白装束、ってかここは? 周りに見えるのはかなり高いところに窓があって、足元はレンガ造り? で、椅子に座っている。
女の子はと言えば正面に立ってこっちを見ている。可愛い。
「可哀想に……不良に逆らう事も出来ず、死んでしまうなんて」
「え? 死んだの? 俺」
「はい」
なんて事だ。俺は右手で顔を覆い、絶望する。
「ってか、俺どうやって死んだわけ? バンジーだったし紐の長さも調節されてただろ?」
「あなたは確かにバンジーをしました。ですが、あまりに紐が脆く、あなたの全体重がかかる前に紐は千切れあなたは海に落下。かなりの速度で海面に叩きつけられたのでその衝撃もあり、足は縛られていましたし自力では泳げず溺れて……」
「溺死?」
だとしたらしたくない死に方トップレベルに入るな。
「いいえ、あなたは溺れましたが溺死ではありません。実は紐が千切れてすぐに松土真楠の四人が海に飛び込み、あなたを岸まで引き上げてからバイクで病院に運ぼうとしたのです」
「は?」
「その道中、交差点でドリフトしていたタクシーに突き飛ばされ、五人とも救急車で運ばれ体力の落ちていたあなただけ天に召されたのです」
言葉が出ない。
「ちなみに、四人はあなたを助けようとしたヒーローとして地元新聞の一面を飾ったそうです」
「なんじゃそりゃ! ふざけんな、おい! さっさと生き返らせてくれよあの四人絶対許さねぇ!」
つか、俺のゲームは? PCゲームデビュー……とか言ってる場合じゃないか。
「一応言っておきますけど、あなたにはチャンスが与えられたんですよ? 一度死んだ人間は生き返る事なんてありません、ですがあなたはあまりにも哀れ、というか無様でしたので我々のお情けです」
「無様って……まぁそうだけど」
「これからあなたは、もう一つの世界、ルーシアへと出向いてもらいます」
「は? ルーシア?」
「ええ。そこで生き抜いて、成すべき事を成してください。成すべき事は一つだけ、それが終わればあなたには元の世界に戻り、病院で目覚め、生き返る権利が与えられます。あ、拒否した場合は天界規則に則って全く別の人間になってもらって、全く別の人生を歩んでもらいます」
つまり、断れば山下浩一は消えてしまうわけだ……。いや、それはいかん。俺は俺でありたいからな、選ぶまでもない前者だ!
「はい、承知しました―――――――」