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ルーシアに飛ばされました  作者: 岡田祐介
第一章 異世界へ
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松土真楠

 よろしければ楽しんでいってください。


 やっとこさ手に入れたゲーム用PCを起動させるも、まだゲームソフトが無い。サイトに登録して基本無料オンラインゲームでも始めよう、とか思ったのだがたまたまゲーム情報サイトで面白そうなゲームを見つけた。

 どうもファンタジー世界が舞台で、剣と魔法で仲間と共にファンタジーライフを送れる様だ。正直、カースト上位の連中に陰口叩かれたり何だったり、まぁ高校生活は上手く行ってないしもう夏休みだ。これを機に引きこもればいいわけだな。

 さ、そうと決まればゲームショップまで行くか。



 今の時代、こんな連中がいるのだろうか――――――そこそこ田舎の俺の家からそのソフトを取り扱っているショップまで電車で七駅、しかも駅に向かうまでに結構歩かなくてはならない。俺は無事、夏休み初日にそのゲームを入手し、さぁと最寄り駅まで戻って人通りの少ない川辺を歩いていたのだが、ターミネーターが乗ってそうなバイクに跨った短ランボンタンのリーゼント四人に囲まれていたのである。


「よぅもじゃもじゃのあんちゃん、ここで会ったが運の尽きよ」

「ここは俺達、松土真楠マッドマックスの縄張りだ!!」

「松土真楠ってのは、松崎、土井、真壁、楠野の名字から来てるんだ!!」

「どうだ、ビビったか!!」


 いや訊いてねぇよ……。つか何だよこれ、カツアゲだろ? ってかこいつらいつの時代の人間だよ。二十一世紀の人間の格好じゃねぇぞ。というより、俺が気にしてるモジャモジャの頭をよくも。


「ってわけであんちゃん、俺達に渡すモン渡してもらおうか。通行料一万、怪我したくなきゃサンドバック回避料三万だ!」


 四万だと……。カツアゲの相場は千円から五千円じゃないのか。


「おい、訊いてんのかよオイ。あぁ?」

「いや……残金三千円しかないんだけど」


 俺が正直に答えると、松土真楠の連中はバイクをブォンブォン鳴らし始めたではないか。まるで処刑決定とでも


「はい処刑決定!!」


 案の定!? クソ、この血の気の多い野蛮人どもめ。俺はPCゲームデビューをするんだ。こんなところで処刑されてたまるか! と、逃げ出そうとしたのだが一番ガタイのいい……えっと、何君かな? みんなリーゼントだからわかんないや。まぁ彼に捕まり、あっという間にシートの余ったスペースに固定されてしまった。


「これからお楽しみだ。それまでこの真壁と楽しくツーリングといこうや」


 ああ、君は真壁君と言うのか。えっと、よく見るとその制服は超有名進学校の制服じゃないか? よーし、学校に連絡しちゃうぞ? と俺はパーカーのポケットからスマホを取り出したのだが


「おぉっと、これでも俺達は超有名進学校での成績優秀者四名なんだ。国立大学への進学の妨げになる行為はご法度だぜ」


 とか言いながら俺からスマホを取り上げる。いや、そう言うならこういうのやめろよ! とは口に出さない。もう彼らのペースに乗せられてしまっている。あ、時間が悪かったのだろうか。もう夜の八時回ってるし、辺りも暗いし。車は通るけど見えないだろうし。

 見えてたら誰か助けに来てくれたのだろうか……いや、まだ。どこかで逃げる事が出来る筈、諦めるのは早いぞ!

 とか、未来に希望を持っていた時期が僕にもありました……。

 七月だと夜風は温い……。


「これからお前は俺達の編み出した処刑、漢飛びをするわけだが何か言い残す事は?」


 真壁君の言う男飛び、それが一体いかなるものか訊くまでもない。俺の足には荷物を縛る様な粘着性のない紐がグルグルと巻かれており、そんな俺は都市部に入った所にある巨大な橋の手すりの上に立たされているのだから。


「漢飛びって……何をするのかなー、とか訊いてみたり」

「いい質問だ。この俺、土井が答えよう。漢飛びとはとは、漢気溢れる度胸試しの一環よ……俺達がGTOを読みながら編み出したんだ」


 いや、どっかで見た事あるなって思ったら


「ま、真壁! やべーよ! 十円玉が海に落ちるまでに何秒かかかったぞ!」


 真壁君と土井君以外のリーゼントが十円玉を海に落として時間を測っているではないか、ってか止めろよ。マジでGTOで見たぞこのシチュ。


「お、おいこれは流石にまずいんじゃ……まだバイクで都市高速引き廻した方が」

「いや、ダムからダイブの方が」


 どれもヤバいだろうが。これでよく進学校に入学出来たなこいつら。


「バカ野郎! ビビってんじゃねぇ、今から飛ぶこいつは覚悟決めてんだぞ! よっしゃ行って来い!」


 ―――――え? トン、と押されたかと思えばジェットコースターで味わう浮遊感とは違う、俺は絶叫を上げ海面に叩きつけられ溺れる未来を想像したが―――天はまだ俺を見離してはいなかったらしい。

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