プロローグ
季節は巡るし、時代は流れるし
小説のページは変わって、物語は前へ歩を進める
でも次の季節はわかっても、次の時代がどんな風になってるかはわからないし
小説の次のページがあることはわかっても、物語がどうなるかはわからない
その中で、ひとつだけ
ほんとにひとつ、気になってしまうのは
たったひとつの…確信
僕の未来がどんな風になるかはわからないが
その未来のなかで、僕の瞳に何が映っているのか、ということ
きっとそこに、なんにも映っていない、という確信
それが持ててしまうことが異様に悲しいし、それを持っている自分を投げ捨てたいとすら思う
僕の瞳には今も、何にも映ってくれないし、虚空を見つめるこの瞳は焼け焦げた色をしてるだけ
別に擦り切れたとか、特別悲しいことがあった、苦しいことがあった、辛いことがあった…そういうわけでは全然ない
きっかけはとても単純で、でもそれが起こした変化はとても大きくて
僕は合唱が好きだったんだけど、それからも遠ざかって
後に残ったものはなんだったんだろう
なんにも残ってない気がするからひどく悲しいし
何にも残ってないのを嘘だって言いたくて、必死にペンキを塗って押し隠して
それが良くなかったんだろうな、と今になってから思う
その時期を嘘で塗り固めて過ごしたから、僕の一番大事なところが空っぽのまま今になっても埋まっていない
季節は流れるし、時代は巡るし
小説のページは変わって、物語は前に歩を進める
そのきっかけはわからないけれど、きっと確かにそこにあって
一度にあまりにも変化するから、僕は全くついていけない
でも
未来は確かに目の前に訪れていて、そこでなにかを掴めると信じているから
僕の瞳に何かが映り出す、その始まりだと信じているから
だから僕は歌いあげよう
過ぎ去った過去と見たことのない未来を
全力で、この場所から
まだ見ぬ誰かに届くように
まだ見ぬ誰かのきっかけになるように
かつて好きだった歌になぞらえて
精一杯歌ってみよう




