神子は姫君の願いから
「小…紅?」
悠斗には今起ころうとしている事の意味が解らなかった。それでも聞き返すと小紅と名乗った少女は「はい」と頷いた。
「私は…この世界に十二人存在する神子の一人、火神…そして貴方は、生命を司る神子、クウロ。姫の望みにより、再びこの地にお連れいたしました」
「待てよ!意味がわからない。きちんと説明してくれ」
悠斗は小紅の言葉を途中で遮って言葉は発した。
状況が理解できない。
まずは自分がどこか別の世界に来てしまったことはわかった。
そして彼女が小紅だということも。
後、わからない事で知りたいこと……。
「神子ってなんだ」
「貴方は天つ神の存在はご存知ですね。天つ神は人にとって無くてなならない存在です。一番身近なのは太陽神天照です。その力が消えたらこの国も統べてが終わりを迎えてしまう。それで………」
彼女が言いたいのはつまりはこうだ。
――小紅は神子という存在で天照大神に仕える立場なのだそうだ。だが現代の天照大神は人間と神との混血で力が弱い。そのために心の揺らぐ原因を作っていた側近であるクウロ(つまり前世の悠斗)を抹殺するという計画がだされた。しかしクウロはかなり高い位の神子だったらしく当然抹殺を望まない者もいる。その者によって前原悠斗として生きるように異世界にとばされた……。
「……とこんな感じでいのかな?」
悠斗が理解の出来た事を端から並べていくと納得がいく。
「はい」
小紅はふと微笑んで頷く。
「で?」
「はい?」
さっきとは違って今度は疑問符がついている。
「貴女はクウロ派なのですか?」
「私は…はい。クウロ様には借りがあります。一生かかっても返しきれないほどの……大きな借りが……」
「そうか…」
小紅は申し訳なさそうに俯いた。
「私の力が及ばなかったばかりに……でも姫は、クウロ様の事を本当に心より想っていらした。トウカ達はそれを知らぬゆえの行動です。それだけは、心に留めおきください」
「俺は何をすればいい?」
――姫を、我らの主を救ってください。貴方の心の奥底に眠る生命の力で。
悠斗は悲しそうに俯いた。
出来ない
出来ない
だってこれは人を傷つける力だから……
知らないはずの力の事が不意に脳裏に浮んで消えた。
「あれは…人を傷つけることしか出来ぬ、呪われた力だ……誰かを救うことなんて、出来ないよ。皆がよく知っていることだろう」
そして誰よりも、自分自身が――