追憶の邂逅
懐かしい景色。
ここにきたのは、何年ぶりだろうか。
最愛の人との別れを余儀なくされて、一人で生きてきた。
たくさんの木々と優しい風の吹く場所。
遠くで聞こえる水のせせらぎに萌えるような太陽の日差し。
この世界は、今も昔も神々によって守られている。
自分も、かつてはこの時空を守る神だった。
「嵐…」
貴女を守る事だけが、私の生涯であるはずだった。
神として生を受け、罪を犯し、人としての生涯を送った。
その生も、もう終わり。
前原悠斗は、死んだ。
26歳という短い人生。
後悔なんてしていない。
最後に一度だけ、貴女に会える。
嵐……。
天照大神の血を引く混血の少女。
見慣れた大樹が目に入る。
その傍らでたたずむ少女も。
私は急いで少女にかけよった。
「嵐!!」
少女はゆっくりと視線をこちらにに向けた。
だがなにも言わない。
冷たい瞳が、ただ私を見つめるだけ。
天照大神……。
君は心を捨てしまったのか…。
私の願いは貴女が貴女であることだった。
天照の存在など無に返してでも、貴方の心を守りたかった。
天照の血を引く娘、嵐……。
私はクウロとして、悠斗として、
貴女を、愛していたよ。
END。
そらいろ とうとう完結いたしました。
長らく待っていてくださった方がいらっしゃったら大変申し訳ございません。
番外編を書く予定でしたが、このような形で一応完結させていただきました。
また修正を加えるかも知れないのでそり他のほうもよろしくお願いします。
矢乃 麻瑚。