生まれた時からの宿命
神子が生まれた時から、姫を守る事が決まっているように、姫にも変えられない宿命がある。
どんなに心が動かされようと、決して恋をしていけない。
そしてユグドラシルの成長と世界の光だけを願わなければいけない。
天照は、己を持ってはいけない。
「私は、異端者だから…己を押し殺す事が出来なかった。それが、どんな結果になるかも知ってたのに…それなのに、貴方達はそれを、身を持って知っているのに……私を姫と呼んでくれるの?」
姫は泣いていた。
「本当はこんなんじゃいけないのだろうけど、我らにとっては世界よりも人の心が大切だと思うのです。人よりも貴女のお心の方がずっと大事なのです。心を殺して生きる天照様をずっと見てきたけど、そんなのただの人形と同じだから、姫の思うままに生きてください」
朱雀の言葉に四神たちは頷いた。
「ありがとう」
姫の本当の名前を知っているのはこの四人とクウロだけだ。彼らだけが天照の己を持つものなのだ。
ここは暗い。闇神の美夜が作り出した異空間だ。
トウカが四神に手出し出来ぬように空間を隔離した美夜。
闇を司る彼女は忌み嫌われる。
それでも姫は彼女を嫌いだと思った事は一度もない。
不意に視界が開けた。
四神が目覚めた事により役目を終えた美夜の空間が消えたからだ。
そこはユグドラシルのすぐ近くだった。
ユグドラシルを守る事が役目なのに、自分一人では何も出来なくて、結局はクウロの力を借りてしまった。
異界の地で幸せに暮らしていたかもしれないのに、この世界で重荷を負わせてしまった。
嫌だと言っていたのに…。
重荷だと、言っていたのに…。
私といる事でクウロが辛い思いをしていた事も、知っていたのに……。