第七話 御神侵入《バックホーム》
???SIDE
「あ!! そんな…………お前……ッ!!」
何でだ!? 何でコイツが目の前にいる!?
つい、暇つぶしで門番をしていたことにも忘れ、目を見開き、ソイツの顔を確かめる。
黒い肩にかかる程度の髪。
女のような容姿。
それは、奇しくも俺達が、生きていると信じていた奴の顔と同じだった。
あの、時。炎がアイツを包んだ瞬間、多分俺と同じ系統だと思うが、能力であろう光が部屋を包んだのだ。
そして、燃えカスの服の欠片だけを残して消え去った。
……その光を見たのは俺達だけだし、それに俺自身だってあの時の記憶なんて確かなもんじゃない。
だけど、信じていた。
信じていたソイツの容姿を持った男が、目の前にいた。
だが、何でここに……??
「あ~、この街に入りたいんだけどさ、良いか?」
その言葉に意識が戻される。
思考が吹き飛び、現実だけを見る。
その男は、右手に手袋をしていて、何だか何処かの学生みたいな格好をしていた。
このご時世、ここ新生『HEAVEN』に学校などまだ出来ていないのだが。
「あ、そうですか。では、こちらに来て検査を……」
闇雲すぎたか。
そんな訳無い。
そう自分自身に納得させて、淡々と仕事をこなすことにする。
ここに来たのなら、能力者なのだろう。
ここを通ったのは見たことがない人だ。
勿論、二度、通りでもしたら絶対に見逃さなかったが。
「あ、はい。能力の検査ですか? 俺ここに来たの初めてなんですけど?」
「こちらの指示に従ってくれれば幸いです。では、奥に向かって下さい」
そのまま、敵意も害意も無いらしいので、扉を通し、
能力検査を受けさせた。
~門内簡易検査場~
「ほっ」
その男が手を振ると、その動きに合わせて風が動き、そして目の前にある岩を両断する。
時には風が固形化し、剣となったりもした。
「……『風向制御』の一種か。
検査終了です。今検査で、貴方は晴れて『HEAVEN』に自由に出入りできます。
…………ご協力ありがとうございました」
慣れない丁寧語を使いながら、男に向かって見送りをする。
目の前で開く扉の先には、見慣れた商店街が広がって、
今や、昔の五分の一まで増えた人口の一部がひしめいているのが見える。
そして、そこを先に進もうと扉をくぐろうとしている、男。
連れの奴らは、いっつも頻繁に出入りしている奴らだ。何か関係があるのだろうかと思いながら、
そこから背を向けたその時、
後ろから声が聞こえた。
「よ、強くなってんな。聊爾」
「―――――――ッッッ!!?」
後ろを再度向いた時、既にソイツは人ごみに紛れ、姿を消していた。
「御神…………哀……」
SIDE END
「……良かったんですか兄貴? アイツ、古い友達とかじゃないんでしたっけ?」
「良いんだよ。今無駄に姿見せたって、『UnInstall』が混乱するだけだ。
それに、俺が居た場所見たか? 人間達、また攻めてくるつもりだな。
そんな時にてんやわんやさせちゃ、ならねーよな……」
「はぁ、色々考えてるんですね兄貴」
「ま、そんなもんだろ」
ま、実際は……泣いちまうし、もう少し覚悟を決めてからじゃないと、
中途半端に帰ったって、…………こっちが足手まといになるだけだしな。
今は顔見せだけで良いだろ。