第十七話 命令非守《ルールダウン》
「……………………」
「……兄貴……良いんですか?
もしかしたら、まだ間に合うかもしれないんですよ?」
………………
…………
「はぁ……。分かりました。皆に伝えてきます」
そう言い残して、俺から見て下側にいる丈(俺自身、瓦礫の上に座っている)は、
離れた場所で集まっている5人のもとへ行く。
結果、結局漫画みたいにご都合主義、とはならなかったよ。
紫を慰めて、その後すぐドカン。
いや、ドボン?
ま、いくら総隊長代理っつっても、まだ高校生。
頭の固い幹部連中の意見を曲げることができたり、偽装をすることができた。
なんてご都合進行無かったのさ。
今、再び俺は、戦場にいる。細かく言えば、ついこの前戦場と化していた、
『HEAVEN』の近くの瓦礫の山だ。
そこで、一つの煙を上げている。
俺の力で、負荷はかかるが無理矢理物質を強制変換。
勿論、察しがつくと思うが……そう。線香だ。
線香代わりのモドキと、街で買った花束をお一つ。
これじゃまるで事故現場に来た遺族みたいだな。……いや、家族か。
実際、コイツらとは会って一ヶ月も経ってるわけ無いのに、ずっと家族みたいに仲良くしてきた。
それで能力を鍛えてやったり、体そのものを鍛えてやったり、
精神ボコボコにしたり。
色々な事をしてきた。
だけど、少し早かったかな。俺の責任だよ。
アイツらに、まだ戦場は早すぎた。
結局、命を残したのは6人。
椙軒 鼎、庸丈 丈、白代 城、
ユー(ミー? アイツの本名は謎だ)、御免通 切捨、
山郷 嗣矢。
能力はそれぞれ、『人口奇跡』『火計火車』、『嘘死魂魄』
『阻害伝播』、『武志法率』、『能業幾世』
自分で決めてなんだか、途中途中で変なのがあるが、割愛。
コイツらの能力名は俺が決めた。(一部違うが)
俺自身、コイツらはそれぐらいの実力になってるって思ってるし、思ってなきゃやってられない。
それほどの成長率だ。
戦場に介入してからまだ少しの期間しか経っていないが、まだまだ伸びるよ。
だから、もしこのまま一生、『UnInstall』に入れなかったとしても、
俺達は俺達で、この戦争を終わらせる。
それが『HUMAN』の逆鱗に触れて、世界の人類全員が敵に回ろうとも。
「なあ、お前ら」
「兄貴! もう大丈夫なんですか?」
「心配かけたな! もう大丈夫だよ! さて、街に戻るか!
お前ら、何か置いたか?」
置いたか、というのは勿論供え物。
家族の墓参りに供えるのは当たり前。
「はい。俺らは……」
チラッと後ろを向く庸丈。
それにつられて俺も簡易の、瓦礫の一部を使って作った墓を見ると……
そこには千切れた黒い布が6つ。
……
「なら俺も」
俺は、機械の右手を軽く動かして、
丁度すぐ傍にあった黒い布を、ブチッと、少し千切り、それを墓の元に挟んだ。
「…………戦場ってのは、人の命が軽く死ぬ場所だ。
だが、諦めるな! 俺達はまだ生きてる。だからこそ、できることもあるんだ、と考えろ!!」
「「「「「「はい!」」」」」」
「良い返事だ!よし、行くぞ!! 奢ってやる!」
途端、まるで後輩が先輩に飯を奢ってくれるような雰囲気になり、
それぞれがそれぞれ、喋り始める。
良い傾向。
このまま、時が進んだら、俺はきっとホムンクルスを殺すまで止まらない。
それで、…………
死ぬかもな。
「兄貴、早く行きましょうよ!!」
「! あ、ああ。分かってるよ」