第十五話 怠慢時間《プリズン》
別にブレイクしません。
なお、短い設定となっております。
いつも通り、この作品に見られがちな、
時間飛ばしすぎ端折りすぎの物語をどうぞ。
がちゃんと、鍵……頑丈で、どんな怪力男でさえこじ開けられないように思えてくる、
一本一本が太い鋼の棒で出来た、牢の鍵が閉まる。
閉められる。
誰かなんて、明白。勿論『UnInstall』の奴らだ。
俺だって、いくら何でも『UnInstall』を奴ら呼ばわりしたくない。
だけど今の状況じゃ、イライラすることなんていっぱいあるんだし良いだろ。
壁に寄りかかっていたが、流石に寒くなってきたので、
ついさっき小さい格子窓から浴びせられる日向に向かう。
足元と手元でガチャガチャと迷惑で邪魔な低い金属音が聞こえる。
鎖が擦れる音だ。発生原因は俺に決まってるのに、どうしてもイライラしてくる。
日向に這いずって向かって、置いてある飯を食べる。
クソ不味いスープに、クソ不味い乾パン。ただそれだけ。
「暇だな。何で…………こんなことになったんだろうかね」
『そりゃ『俺』よぉ、俺たちのせいに決まってんだろ。
勝手に相手殺したりしたらこっちの評判悪くなるだけなのにさ』
「うるせえ。俺はあの時ちょっとハイになってただけだ。もう二度とやらねーよ」
『そりゃどうだか。『俺』ってばよ、『HC-R』を相手にするたび、
笑って正気失くすもんだからなぁ、ははははっ――――
「うるさい」
こちらの世界に来てから、何かとうるさくなってきた『俺』との思考内会話を断線する。
最後に何か文句言ったみたいだが、知るかそんなの。
あのとき、フィーアを殺した時は、どうかしてた。
この黒い力は危険だ。どうせなら、精神も一緒に『俺』に任せた方が良いかもしれない。
段々、段々と……半悪魔の体の人間部分が、悪魔に侵蝕されていく気がして収まらない。
殺した後、放心状態だったらしい(『俺』と、面会に来た丈、鼎に後日聞いた話だ)俺を素早く気絶、
淡々と迅速に部下に指示を出した総隊長代理……もとい紫は、一旦戦線を後退。
それと同時に人間軍も退却し始めた。お互い深追いしたら負けだと分かっているように。
痛むなぁ。
いや別に、心がとか言わないが、無性に痛い左腕。
高い金払って買い占めたのに、ボロボロになっている黒スーツを脱いだ時は、すげえ焦った。
左腕の付け根が、黒く変色してた。
前に言ってたな、自分でも、皆からも。
『魔術は言わずもがな。悪魔になった体には、魔法でさえ高い負担がかかる』って。
いわゆる『ハイリスク・ハイリターン』。
所詮悪魔と人間の半端者。大きな力を扱うには、それ相応の代償が必要。
魔法を使えば悪魔側に負担がかかり、
魔術を使えば人間側に負担がかかる。
能力と義手のみなら侵蝕を一時的にでも止められるが、
それだけでは勝てない。
戦争の裏に潜む『HUMAN』と『HC-R』には。
…………なんて小難しいこと考えても、解決策が見つかる訳でもない。
今は早く、紫に会いたい。
だって俺は、紫のために生きてるようなものだから……。
もし紫が居なくなるなら、俺は―――――
「御神哀、面会だ。
……総隊長代理、ご苦労様です」
牢の前にある扉が開けられる。
一瞬入ってくる蛍光灯の明るい光にくらくらしながらも、その姿を視認する。
「……やっと来たか。
久しぶりだな、紫」
牢の前まで降り注ぐわずかな太陽の光に照らされ、
その端正な顔を無表情で固めた、我が愛すべき人が現れた。…………自分で言ってて恥ずかしいなオイ。
「久しぶりねアイ。
だけど、建前上そう呼べないの。今は御神哀と呼ばせてもらうわ」
どこかその呼び方によそよそしい雰囲気を感じなながら、
俺たちは話を始めた。