第十三話 油断大敵《ミステイク》
これでやっと殺せる……!!
そう思っていたのも、浅はかだったな。
油断していた。
コイツは、あの事件の時に聊爾を半殺しにした張本人だ。
直接触れて発動する能力に、キーワードは『骨』。
しくったな。
そう思っていた瞬間に、俺の腕の骨は、ヒビが入っていた……と思う。
「ぐっ!?」
左腕に激痛が走る。最初っから右腕で掴めば良かったものを。
逃がしたか。
「あーらら。随分と頑丈な骨してんじゃねーよ。
私、一応その腐ったスカスカの骨をボキッと逝っちゃうつもりだったのにさ」
俺の目の前に体勢を立て直して、こちらにゆっくりと手を伸ばす。
勿論、俺だって黙って立っていた訳では無い。
ゆっくりと手を横薙ぎに振りながらも、大気を圧縮。
そして相手の腹のど真ん中にブチ当てる――――
ドッッッ!!!!!!!!
もの凄い、C4と同等程度の爆音が、戦場に鳴り響く。
空気が渦を巻いて、周りの土ぼこりを空中にあげながらも、その挙動を止めようとしない。
そして、それと同時に、その動きに巻き込まれて、
俺の予想通り、フィーアは吹き飛んだ。……まるで塵屑だ。
数十メートル先の地面が抉れる。
そして、半分めり込んだ状態のまま、地面がまた数メートル抉れていく。
しばらくそれが続いた後、風の動きは止まり、土埃も舞うのを止めた。
「ナイスショットッッってか?」
また翼を構成し、飛ぶ。
その地面の抉れが止まっている場所めがけて、飛び、着地。
地面に倒れ伏すフィーアを見下ろす。
その、あの事件のときと同じ服は、またしてもボロボロ。
「ったくさあああ……」
「ああ゛?」
何だよ。しぶといなぁ、オイ。
「だからこの服、お気に入りって言ってんだだろーがああぁぁぁぁ!!!!!!!」
ゴッッ!!!!!!!
鈍い音が響く。
それは勿論、骨と骨が皮膚をはさんでぶつかる音だ。
俺の肋骨に、フィーアの拳がめり込む。直撃だった。
だが―――――
またとない好機の訪れに、また少しだけ笑ってしまった。
ガシッと、フィーアの強烈にぶつかる拳の、手首を握る。
能力発動に一秒もかけねえ。
やはり手首は、次の瞬間、折れ曲がって、そして破裂した。
血が舞う。
血液が、その無数の血管を破ったおかげで、外気に噴出す。
静脈と呼ばれる大きな血管も、その例外に漏れないようだ。
ぶしゃっ!
素人目が見ても、軽く血が致死量以上出たであろう。
だがそれでも……
「いてーなぁぁあ!!!!!!!!!」
もう一つあるフィーアの拳が、俺の頬に勢い良く当たり、
そして遂に俺はその場に立つこともままならず、地面に倒れ伏した。
「『噴骨再身』。
油断大敵なんだよこの戦場じゃ。テメエだってまだまだ経験不足って訳だ。
ま、私は別に構わないけどさ。楽だし」
そしてフィーアはその手を俺の頭に――――
「じゃ、本物か知らないけど、さよならってことで。御神哀」