第十二話 製造番号《フィーア》
タイトルどおり。久々のあの女です。
「あ……哀…………」
だが、久しぶりの再会に感動している暇は無い。
その言葉の続きも聞かず、俺はその場から見える機械二体に風の刃を放った。
「その言葉は後で。今は戦場に集中した方がいいと思うがな」
そしてそこから飛び立つ。
俺の風の刃は……効いてない。
流石、『対』能力者兵器と言ったもんだ。
鋼鉄でも細切れにする自信あったんだがな。
機械の巨人は、その腹や腕に軽い切り傷を付けているだけで、
後はどうどいうことも無く、動き続け、周りの能力者相手に機関銃を撃ったり、自らの拳を叩きつけたりしていた。
「これは止めないと……マズイな」
未だに動き続けている機械達と、それに乗じてこちらに走ってくる兵士を相手に、
岩石のみを操って足止めする不知火。
どうみても相性が悪いが、兵だって溶岩のおかげで動き自体、制限されている。
だからこそ、俺が言いたいのはそっちじゃ無い。
俺の視線の先。
銃火器を思い思いに持つ兵士達の奥。
『HEAVEN』陣営からでも、人間陣営からでもない方向から来る、軍。
いや、正しく言えば、それは人間の軍ではない。
強いて言えば、…………何ともふぁんたじぃな、由々しき事態だが、
「またお出ましかよ。HC-Rさんよォ!!!」
目の前に広がる敵を、まとめて軽く、全力は込めずに突風で吹き返す。
一瞬だけ、目の前を広がる虚構を突き抜け、一つの影が土ぼこりを巻き上げる。
―――来たか?
と、思考を変えた瞬間には既にもう、
その影は目と鼻の先にいた。
「ああ? 何だよこのクソが!! まっさかあのふざけた複製野郎の言う通りだってか!?
ま、私にはカンケー無いけどさ!!!!」
「…………フィーアか。
くッ! く……クク……く、くはッ! はははハハはハははは!!!!!!!!」
面白い。ふざけ過ぎて面白すぎて、笑いが止まらない!!!
「何だよお前。狂った? どうでも良いけど、さっさと確保させろよ?
私だって早く帰りたいんだよ」
フィーアは、俺の記憶通り、その口の悪さと汚さを披露してくれている。
対して俺は……
嬉しかったよ。
感動の再会とでも言うのかな?
アインスの時もそうだったけど、嬉しいな純粋に。
だって考えてもみろ。
向こうで、一日も忘れずに、
憎悪と憤怒をぶつけてあげた、その張本人が、
二人も、すぐに会いに来てくれたんだ!! 最早運命ってか!?
「ふッ! はあはははは!! ふ……くっ、くく。ぷっ!
……くく、気分が良いな。
なあフィーア、テメエ、今まで何回死んだ?」
どうやら俺の質問が頭にキタようで、端正に作りこまれた顔が、醜く歪む。
「御神、お前……調子乗ってんじゃねーよこの屑が!!
私をあの複製と一緒にすんじゃねぇえ!!」
一瞬。一瞬だ。
その刹那の時で、俺の手は、掴む。
その獲物の細い首を。
そして言ってやる。忌々しげに、心を込めて。
「そうか、なら良かった。
……これでお前を最初に殺せる人間に、なれるんだな」