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第一話 うん、馬鹿なの?

 青々とした草原。

 揺れる木々たち。

 そして上には炎を吐くドラゴンが飛んでいる。


 それが、僕が異世界転移して数秒たった光景だった。

 僕はそれを見て思う。


「うん。馬鹿なの神様?」


 さかのぼること数十分前、僕北条(ほうじょう)理人(りひと)は机にくっつく勢いで創作をしていた。僕の趣味はなんといっても創作!誰かの人生を自分なりに作れるってやっぱり素敵じゃない?まるで神様になった気分だ。そんなつもりは一切ないけれど。

 どちらかというと、その人生を観察したり傍観するほうが好きだ。マジで。かといって自分を後回しにしているつもりもないけど。


 僕が特に好きなジャンルはファンタジー。なぜなら自分は知らないことが多すぎるからだ。そんなわけで、いつも通り冒険ものの小説を書いているときだった。あの異変が起きたのは。


 文字を書き進めていた手がふいにとまった。いや、自分の体なんだからわかるはずだ。体がだるかったことに。


「……だっる……おっも。」


 体が鉛のように重いって、こういう感覚なんだって思うぐらい重かった。指先は針金でも通されたかと思うほどガッチガチ。


 これ、死ぬやつ?


 そんな最後の意識が途切れて、僕は気絶した。




 そして目が覚めて、冒頭のあの場所にやってきている。うん。神様は馬鹿なの?こんな妄想癖に、傍観者に異世界転移の主人公を任せないでいただきたい。メタ読みなんてする余裕もないが、あいにく僕は、何が起きても取り乱さないタチだ。


 さて、それよりも困ったな。このまま草原にいると、空飛ぶ炎ドラゴンに食われるか、そこら辺の魔物に襲われる。それに、普通の主人公とは違い僕にはこれといって特殊能力もなさそうだ。あるのは妄想癖が詰まった脳だけ。


 周囲には何もない。ただ、自然がそこにある。

 ……ん、まてよ?

 ふと、何かにひらめいた僕が目線を下に移すと、そこには草が生えていることがわかった。さらに、少し木に近づくと周りの雑草とは違うきれいな形をしたものがある。


 もしかして薬草かもしれない。


 そう脳裏に走った思考で、僕は集めだした。まずはこれで資金稼ぎだ。

 普通の主人公なら暴れるだろう。「げ、ドラゴン!?」とか「やれやれ、異世界転移ってやつか。」とか言って歩き出すだろう。


 僕はとりあえず薬草を集めていた。自分のみの安全のために。





 しばらく薬草を集めていると、にぎやかな声が聞こえた。多分冒険者か何かだろう。僕は急いで物陰に隠れた。ええと、僕コミュ障だからさ。魔物じゃなくてよかったけど、一応隠れとく。山賊とかだったら身ぐるみはがされちゃうもんね。


 声が聞こえる。


「今日も、疲れた~。」

「依頼達成したし、今日は飲むぞー!!」


 物陰から見ると、四人組の冒険者だった。赤毛の女性は楽しそうに宝石を抱えて歩いている。茶髪の男性は手を頭の後ろで組み”お酒”のことを考えていた。後方に二人いて、水色の小柄な女性は杖を持ちながらため息交じりに「お酒は嫌だな。」とつぶやいている。


 そして、その後ろの男性に目線を向けた時だった。

 金髪で青い瞳をした男性。その人だけがその会話にかかわっていなさそうで静かな空気を漂わせていた。すると、その人はこちらを見たのだ。


 ああ、そういう系。小さな気配にも気づく気優しい主人公タイプか。いや……なんか見たことあるんだよな。そう達観していた次の瞬間だった。その人が、列を外れてこちらに”走ってきている”。


 いやなぜ!?


 僕は物陰に引っ込み、奥へ奥へとほふく前進で進んでいく。

 無我夢中に進んでいたが、途中で首元をつかまれてしまう。まるで、逃げ出した猫が捕まえられた時のように。


 そして振り返った先には、男性がいた。さっきの人だ。金髪で青目で……よく見ると鎧などディティールの凝っている。僕はそれを見て少しだけ既視感を覚えた。


「……なんで逃げた。」


 低く透き通った声が耳元で聞こえる。目を合わせて気付いた。


「……あれ、君レオン?」

 思わず口走ってしまった。目の前にいるのは、かつて僕が描いたキャラクターそのものだったからだ。

 眉をひそめて不安がる僕を見て、レオンは……くすっと、低く笑った。

 「そうだけど。創作者様?」

 思考がフリーズした。今の、聞き捨てならないな。

 呆然とする僕の視線を追うように、レオンが僕の手元——泥のついた薬草——に目を移す。

 「それ、薬草か?」

「……っ、待ってくれレオンくん。いや、レオンさん? なんで僕の名前を、いや、そもそも僕を知ってるんだ?」

 混乱する。彼のことは、お蔵入りさせた作品の一つとして記憶の隅に追いやられていた。小学生の頃に勢いで書いた、今となっては恥ずかしい設定集。あれはもう、燃えて塵となったはずなのに。

 問いかける僕に対し、レオンは青い瞳を丸くした。そして、僕の顎に手を添える。

 にやりと、少し意地の悪い笑みを浮かべて。

 「北条理人。俺たちを見捨てて、放置した創作者様?」

 ……めちゃくちゃ怒ってる気がするんですけど。

 顎に添えられた手袋の感触が妙に生々しい。いや、それよりもだ。

 これはまずい。非常にまずい。

 傍観者になんて、なれそうにない。


 知りあいがいたら……知り合いと言っていいのかはあれだけど、どうあがいても逃げられない。馬鹿なのはこの世界に呼んだ神様ではなく、この世界を作った僕なのかもしれない。


 冷や汗をながしながらしばらく宙ぶらりんになっていると、レオンがそのまま地面におろした。


「……別に怒っても、恨んでもない。」


 首根っこは掴まれなくなったがいまだ顎に手を添えられている。ここで変な設定出てきてるわぁ……。


 レオン。レオン・アルファードは王国騎士の一人で僕の考えた小説では主人公だ。冷静沈着でパーティーのリーダーを務めている。そして、癖として問い詰めるときは顎クイをすると謎の乙女心を入れてたのだが……。


 まさか自分がされるとは思うまい。


 レオンはしばらく僕の目を見ていたが、満足そうに鼻を鳴らす。


「……質問の答えを聞いているんだが。薬草採取はスローライフ用か?」


 そして、バレている。自分の思考回路が。観念したように頷くと、レオンは手を離してため息をついた。


「はぁ……俺たちの恩師がこんなに臆病者だとは。」


 僕はすかさず言い返す。


「臆病じゃない。慎重なだけだ。」


 そういえば、レオン相手にはコミュ障が発動していないようだ。

第二作品目です!

こっちは設定をあまり凝っていませんが、チャレンジしたかったので始めました!

定期的に投稿しようと考えていますが、二日に一回程度になると思います。六時投稿を目指します!

(こっちから見始めた方はもう一つの作品”記憶の管理者”も見てくれると嬉しいです!)

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