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スラスト→トラスト ~最強騎士と半透明ヒロイン、嘘にまみれた世界をぶっ壊す旅に出る~  作者: 羽久間アラタ
第1章 落ちぶれ精霊騎士、旅に出る
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第12話 初めての『パーティー』


 昨夜。

 トラックスとプリム、それぞれとの戦いが終わった帰り道。

 俺は、魔力も体力もすっからかんになったプリムとトラックスに合わせてサンダリアへの道をノロノロと進んでいた。


「で、二人ともこれからどうするんだ?」


 そういって振り返り、二人の方を見る。

 俺の出した"照明"の光は魔法適性の低さを裏付けるような頼りない明るさで、後を続いて歩く二人の表情は窺い知れない。


「どう、って?」


 俺の問いに、プリムが呟くように聞き返した。


「やっぱり戻るんだろ?」


 俺と二人の違うところ。

 プリムはブラークの元へ、トラックスは治安維持局へ。

 そう、彼らには帰る場所があるのだ。


 そして、今回の濃密なコミュニケーションで、彼らにそれぞれ課されたミッションについてはそれなりに達成できたはず。


 『お金に苦労してた』『装備もボロかった』

 『かすり傷程度しか与えられませんでした』『こっちは死にかけました』


 とでも報告すれば二人の"上"もそれなりには納得はするだろう。

 つまり、明日か、それとももう今夜のうちか――この仮のパーティーも解散ということになる。


「意味。わからない」

「そうねえ。ジール君は少し決めつけちゃうところがあるよ?」

「何言ってんだ、二人とも」


 意味も何も、言葉通りだろう。

 しかも、はいかいいえで答えられる質問なのに、こちらがおかしなことを言っているように反応されるのはこっちこそ意味が分からない。


「わたし、『様子を見てこい』っていわれた」

「俺は『腕が鈍ってないか見てこい』、ね」

「ああ」

「でも。まだ、見てない。全然」

「うんうん。同じく」


 ……?

 ごめん、二人が何を言っているのかさっぱりわからない。


(お主は本当に戦闘以外はポンコツなんじゃなあ)


 呆れたような……というか完全に呆れたダリアの声。

 まあ、俺の察しが悪いのは認めるけど、全てにおいてポンコツで役立たずのお前にだけは言われたくないんだが。


「これってさ、一応は正式に命令の出た『作戦』なわけなの」

「『しばらく帰ってくるな』って。言われた」


 え、じゃあ二人とも、もしかしてこれからもしょっちゅうこんなバトルを仕掛けてくるってことか?

 それは嫌だな、めんどくさいし。


「だからさ、今後しばらくの間、同行させてもらおうかな、って」


 がりがりと頭を掻きながらはにかむトラックス。

 そしてプリムはひょいひょい、と俺、トラックス、自分を交互に指さし、ぽそりと言う。


「これからも。パーティー」

(おい、忘れるな。儂もおるぞ)


 仲間外れにされた約一名が何か言っているような気もするが、戦力外の戯言など聞く必要はないだろう。

 いや、そんなどうでも良いことは置いておいてだな。あいつはもう空気みたいなもんだし。

 彼らは要するに、今後は――いや、今後も『パーティー』として俺と一緒に行動する、と言っているらしい。


「……は? いやいや、お前らも知ってるだろ、俺は」

「精霊騎士追放令、禁則十条のことかい?」

「えーと。第一条。精霊騎士たる――」


 プリムが記録誌を開き、俺が追放されたときに定められた厳格な禁則事項を読み上げていく。

   

   【第一条 精霊騎士たる名誉を私利私欲のために利用することを禁ず。】

   【第二条 自らの異能・武威をもって民を脅かし、秩序を乱すことを禁ず。】

   【第三条 王都・内環に属するいかなる勢力への助力・加担・帰還を禁ず。】

   【第四条 外環にて新たなる組織・集団を興すことを禁ず。】

   【第五条 精霊の名を以て新たな契約・召喚・干渉を行うことを禁ず。】

   【第六条 在籍時に得た一切の知識・秘術・軍事技術を他者に伝えることを禁ず。】

   【第七条 外環にて新たなる組織・集団を興すことを禁ず。】

   【第八条 己の素性・出自・過去の栄光を明かすことを禁ず。】

   【第九条 王命に背く一切の行為を禁ず。】

   【第十条 前諸条に反すると見做された場合、協力者、関係者含む全員を粛清または厳罰に処す。】


  改めて聞いてもやはり厳しい内容だ。ここまでするならいっそのこと死罪にでもしておけばよかっただろうに。


「な、危ないだろ。特に四条あたり」

「いやいや、『新たなる』集団でしょ? ギルドのパーティなんて新しくないし集団でもないって」

「大昔から、ある」

「あと、九条も。ディルベスタに行くって言ってるんだぞ?」

「行って何するかまでは聞いてないし。善良な国民が国内を移動するのを邪魔するほど治安維持局ウチは野暮じゃないよ?」


 プリムはまあ、ブラークの配下だし、あいつも「勝手にするがいい」とか言いそうだしな。それでいいとして……トラックスの方は法律違反を取り締まる立場だろ。

 完全に癒着じゃないのか、これは。


「まあまあ、そうやって眉間に皺寄せてないで。もう少し気楽にいこう、ね?」

「顔。怖い」

(まったくじゃ。本っ当に、融通が利かん奴よのう、お主は)



 ……ということがあり、なし崩し的に今後もパーティーとして行動することになったのだ。


 だが、あの時は二人とも疲労困憊で判断力が落ちていた可能性もある。

 下手すると言ったことすら覚えてなくて「え? そんなこと言いました?」なんて言い出すかもしれない。


 ――という、俺の精いっぱいの気遣いのつもりだった、のだが。


「ああ、お姉さん。この人のことはもういいからさ、依頼人さんをさっさと連れてきちゃって」

「話、進まない」

「あ、おい」


 受付嬢は、トラックスの言葉イエスを待ってましたとばかりに返事と同時に素早くバックヤードへ引っ込んでいってしまった。


 いや、俺はだな、『仲間になる』という重大な決断を……


 と、思考をめぐらす俺の背後から特大のため息が聞こえてきた。


(お主なぁ、自分のこと以外となると何故そうやっていちいちウジウジと考え込むのじゃ。老け顔になるのもそのせいじゃぞ。たまには頭以外で考えてみたらどうじゃ)


 はあ?

 頭以外で考えるってなんだよ。意味わかんねえぞ。

 どういうことだ、頭以外でも考える特殊なやり方でもあったのか。


 ――など、結局頭の中でぐるぐると考え込んでいるうちに、受付嬢が帰ってきた。


「お待たせしましたぁっ!」

「あららら、これは」

「可愛い」


 その傍らに立っていたのは、手をもじもじさせてやけに恥ずかしそうにしている、まだあどけなさの残る少女だった。


「その……エルデ村の、アイリスです。みなさん、よろしくお願いします!」


 アイリスと名乗ったその子は、緊張しながらも、しっかりした声で挨拶してきた。


 ――金貨1枚の護衛依頼って聞いたときは、どうせどっかの金持ちか偉そうなジジイだろうとばかり思ってたのに……。


 くりくりの目、紺碧の瞳、浅葱色の髪。短めの癖っ毛。

 小麦色の肌に、真ん中に穴を開けた一枚布をスッポリと被ったような、特徴的な民族衣装。

 まあ、どこからどう見ても可愛らしい少女としか言いようがない。


 こんな子が依頼人って、不意打ちにもほどがあるだろ。


「はい、どうもね。俺はトラックスだよー」

「わたし、プリム」


 金縛りにあう俺をよそに、パーティーメンバーの二人は自然な感じで前に出て軽やかに自己紹介を終えてしまった。


「……え、あ、ああ。お、俺はだな。その」

「ジール君。こんなだけど一応俺たちのリーダーね」

「あ、おい、トラックス!」


 俺は不意打ちからの立ち直りが遅れてしまい、すっかり挙動不審な人物にされてしまった。

 あ、アイリスがくすくす笑ってる……。

 なんて第一印象だ……。

 あと、ほかにも何か変なことを言われた気がするが……いや、まずは落ち着こう。


 深呼吸、深呼吸。そして咳払い。


「――すまん。ジールだ。これからよろしく」

「はい! よろしくお願いしますね!」


 今のやりとりですっかりほぐれたのか、アイリスはとても良い、輝くような笑顔で答えてくれた。

 なんというか、汚れた心が浄化されていく気がする……。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

☆やブクマして頂けますと作者のやる気が100倍になる!…かもしれません。

軌道に乗ればこちらの作品も挿絵を入れていきたいと思います。

どうかよろしくお願いします!!

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