17 誕生日パーティーの誓い②
パーティーが始まった。俺と凛音は、会場を回りながら、様々な人と挨拶を交わした。
四条家のビジネスパートナー、凛音の親戚、学校の関係者——みんな、上品で知的な人たちばかりだった。
俺は、この五ヶ月で学んだマナーを思い出しながら、一つ一つ丁寧に対応した。
「雨宮くん、凛音さんの彼氏さんですか?」
中年の女性が話しかけてきた。
「はい、そうです」
「まあ、素敵。凛音さん、お幸せそうですね」
「ありがとうございます」
凛音が微笑んだ。俺も、礼儀正しく会話を続けた。
緊張はしていたが、凛音が隣にいてくれるおかげで、何とか乗り切れた。
しばらくすると、ディナーの時間になった。
大きなテーブルに、客たちが着席した。俺と凛音は、上座近くの席に案内された。四条氏の隣だ。
「雨宮くん、緊張しているか?」
四条氏が小声で聞いてきた。
「少し……ですが、大丈夫です」
「そうか。今日は、君の振る舞いを見させてもらう。この五ヶ月の成果を、見せてくれ」
「はい」
俺は深呼吸をした。これが、最終試験だ。失敗は許されない。
*
ディナーが始まった。前菜から始まり、スープ、魚料理、肉料理、デザート——全てが、高級レストランのフルコースだった。俺は、凛音から学んだテーブルマナーを一つ一つ思い出しながら、丁寧に食事を進めた。外側のカトラリーから使う。スープは音を立てない。ナイフとフォークの置き方で、食事中か食事終了かを伝える——全部、完璧にこなした。
「雨宮くん、素晴らしいマナーですね」
向かいに座っていた老紳士が言った。
「ありがとうございます」
「凛音さんから、よく教育を受けたのでしょうな」
「はい。凛音さんが、丁寧に教えてくれました」
「ほう。凛音さん、良いパートナーをお持ちですな」
老紳士が微笑んだ。凛音も嬉しそうに笑った。食事が終わると、四条氏が立ち上がった。
「皆様、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
会場が静かになった。
「今日は、娘の凛音の誕生日です。凛音、こちらへ」
凛音が父親の隣に立った。
「凛音、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、お父様」
四条氏が凛音を抱きしめた。会場から、拍手が起こった。そして、四条氏が俺を見た。
「雨宮くん、こちらへ」
俺は驚いた。でも、すぐに立ち上がり、四条氏の前へ向かった。会場中の視線が、俺に集まった。
「皆様、紹介します。こちらは、雨宮大樹くん。凛音の……大切な人です」
会場がざわついた。俺は深く一礼した。
「初めまして。雨宮大樹です」
四条氏が続けた。
「雨宮くんは、この五ヶ月間、凛音を大切にしてくれました。そして、私の条件にも、真摯に応えてくれました」
四条氏が俺を見た。
「雨宮くん、君は合格だ」
その言葉を聞いて、俺の目が熱くなった。
「ありがとうございます」
「これからも、凛音を頼む」
「はい。必ず、幸せにします」
会場から、大きな拍手が起こった。凛音が涙を流しながら、俺に駆け寄ってきた。
「雨宮くん……」
「凛音さん」
二人で抱き合った。会場の拍手が、さらに大きくなった。




