16 半年間の試練④
二ヶ月が過ぎた頃、俺は凛音と一緒に、高級レストランでディナーをした。
凛音の父親が、二人の様子を見るために、セッティングしてくれたのだ。俺は、この二ヶ月で学んだマナーを、全て発揮した。ナイフとフォークの使い方、グラスの持ち方、会話の作法……全部、完璧にこなした。
「雨宮くん、すごいです」
凛音が感心した顔で言った。
「もう、完璧ですよ」
「ありがとうございます。凛音さんのおかげです」
「いえ、雨宮くんが頑張ったからです」
凛音が微笑んだ。その夜、凛音の父親から、また手紙が届いた。
『雨宮大樹殿
今夜の君の振る舞い、見事だった。
凛音を大切にしてくれて、感謝している。
この調子で、努力を続けなさい。
四条厳一郎』
その手紙を読んで、俺は確信した。認められている。凛音の父親は、俺を認め始めている。
*
三ヶ月が過ぎた頃、学校では俺と凛音の関係が、完全に公認されていた。周囲の生徒たちも、もう驚かない。二人が一緒にいるのが、当たり前になっていた。
「雨宮と四条様、お似合いだよな」
「ああ。四条様、最近すごく幸せそうだし」
そんな声を聞くたびに、俺の胸が温かくなった。妹たちも、凛音を家族のように受け入れてくれた。週末には、凛音が家に遊びに来て、一緒に夕飯を作った。蒼葉も、すっかり凛音に懐いていた。
「おひめさま、だいすき!」
「蒼葉くんも、大好きよ」
そんなやり取りを見ていると、この幸せがずっと続けばいいと思った。
*
四ヶ月が過ぎた頃、俺は凛音の父親に直接呼ばれた。四条家の応接室で、二人きりで話をした。
「雨宮くん、この四ヶ月、よく頑張ったな」
「ありがとうございます」
「君の努力、凛音からたくさん聞いている。マナーの勉強、真面目に取り組んでいるそうだな」
「はい」
四条氏が俺を見つめた。
「正直に言おう。最初は、君のことを信用していなかった」
「……はい」
「しかし、この四ヶ月で、君の誠意を感じた。凛音を大切にする気持ち、本物だと思う」
その言葉に、俺の胸が熱くなった。
「ありがとうございます」
「あと二ヶ月だ。誕生日パーティーまで、引き続き頑張りなさい」
「はい」
四条氏が微笑んだ。それは、初めて見る笑顔だった。
「君なら、きっと大丈夫だ」
その言葉が、俺の心に深く刻まれた。
*
五ヶ月が過ぎた。
もうすぐ、凛音の誕生日パーティーだ。俺は、この五ヶ月で学んだことを、全て復習した。マナー、会話、立ち居振る舞い……全部、完璧にこなせるようになった。凛音も、俺の成長を喜んでくれた。
「雨宮くん、もう大丈夫です。自信を持ってください」
「ありがとうございます」
そして、ついに——凛音の誕生日がやってきた。




