16 半年間の試練①
四条家の応接室を出た時、俺と凛音は思わず顔を見合わせた。
信じられない、という表情が、お互いの顔に浮かんでいた。
「認めてもらえた……」
凛音が小さな声で呟いた。その目には、涙が浮かんでいる。でも、それは悲しみの涙ではなく、喜びの涙だった。
「はい……半年間ですけど……」
「雨宮くん……」
凛音が俺の手を握った。
「ありがとうございます。一緒に来てくれて……お父様と、ちゃんと話してくれて……」
「いえ……俺も、ちゃんと伝えたかったですから」
執事が俺たちを玄関まで案内してくれた。外に出ると、秋の涼しい風が吹いていた。門の前で、二人は立ち止まった。
「雨宮くん、送ります」
凛音が言った。
「いえ、大丈夫です」
「でも……」
「大丈夫です。それより、凛音さん、お父さんとゆっくり話してください」
俺が言うと、凛音が少し寂しそうに笑った。
「そうですね……でも、また明日、学校で」
「はい」
二人で、しばらく見つめ合った。そして、凛音が小さく手を振った。俺も手を振り返して、門を出た。振り返ると、凛音がまだ手を振っていた。その姿が見えなくなるまで、俺も手を振り続けた。
*
駅へ向かう道を歩きながら、俺は今日のことを振り返っていた。四条厳一郎。凛音の父親。確かに厳格で、威圧感のある人だった。でも、娘を思う気持ちは、本物だと感じた。だから、半年という期間を設けたんだろう。本当に娘を幸せにできるのか、見極めるために。
その期待に、応えなければならない。どうすれば、凛音を幸せにできるのか。どうすれば、父親に認めてもらえるのか。考えることは山積みだ。でも、不安よりも、決意の方が大きかった。絶対に、凛音を幸せにする。その想いだけが、胸にあった。
家に着くと、妹たちが玄関で待っていた。
「お兄ちゃん、お帰り!」
「ただいま」
「どうだった?」
さくらが目を輝かせて聞いてきた。
「……認めてもらえた」
「本当!?」
すみれが驚いた顔をした。
「ただし、半年間の条件付きだけどな」
俺が説明すると、二人が顔を見合わせた。
「半年か……でも、認めてもらえたんだから、すごいよ!」
「そうだよ。お兄ちゃん、よく頑張ったね」
蒼葉も駆け寄ってきた。
「おにいちゃん、すごい!」
三人の言葉に、俺の顔が少し緩んだ。そうだ、まずは一歩前進したんだ。これから半年間、ちゃんと凛音を大切にして、父親に認めてもらえばいい。




