7 生徒会の介入①
放課後。
教室で荷物をまとめていると、クラスメイトの女子が俺の席にやってきた。
「雨宮くん、生徒会から呼び出しだって」
「え?」
「生徒会室に来てくださいって。生徒会長から」
女子が伝言だけ告げて去っていく。
生徒会? 俺が?
田中が心配そうに声をかけてきた。
「お前、何かやらかしたか?」
「いや、心当たりはない……」
「生徒会長って、氷室冴だぞ。学園一怖いって噂の」
「マジか」
俺は嫌な予感がした。これは、おそらく凛音のことだろう。
生徒会室へ向かう廊下を歩きながら、俺は心の準備をした。生徒会長がどんな人物かは知らないが、凛音を守ろうとしているのだとすれば、厳しい言葉が待っているだろう。
生徒会室の扉をノックする。
「どうぞ」
中から、凛とした女性の声が聞こえた。
扉を開けると、そこには一人の女性が立っていた。
長身で、眼鏡をかけている。髪は腰まで届く長さで、一つに束ねられている。鋭い目つきと、近寄りがたい雰囲気。これが氷室冴、生徒会長だ。
「雨宮大樹くんね。座って」
冴が椅子を指差した。
俺は促されるまま、椅子に座った。冴は机を挟んで向かい側に座る。
——なんか、めちゃくちゃ怖い。
沈黙が数秒続いた。その間、冴は俺をじっと見つめている。まるで値踏みされているような感覚だ。
「単刀直入に言うわ」
冴が口を開いた。
「四条凛音さんと、どういう関係?」
やはり、凛音のことだった。
「……誤解から始まって、今は……」
「今は?」
冴の目が鋭くなる。
「…………友達、だと思います」
俺が答えると、冴は眉をひそめた。
「友達」
その言葉を、冷たい声で繰り返す。
「四条さんは、学園の誇りよ。名門四条家の令嬢であり、品行方正、成績優秀。誰からも慕われる存在」
冴が立ち上がり、窓際に向かった。
「彼女を傷つけるようなことがあれば……私が、あなたを許さない」
その声には、明確な威圧感があった。
——マジで怖い。
俺は喉が渇くのを感じた。
「あの……生徒会長は、四条さんと仲が良いんですか?」
俺が恐る恐る聞くと、冴は振り返った。
「……ええ」
冴の表情が、少し和らいだ。
「凛音ちゃんは……私の幼馴染なの」
「幼馴染……」
「小さい頃から、ずっと一緒だった。家が近所でね。彼女の両親が忙しくて、よく私の家に遊びに来ていたわ」
冴が窓の外を見つめる。その横顔は、先ほどの冷たさとは違う、どこか懐かしむような優しさがあった。
「凛音ちゃんは、いつも笑顔だった。でも、時々寂しそうな顔をすることもあった」
「寂しそうな……」
「ええ。両親が家にいないこと、兄弟がいないこと……そういうことを、口には出さないけれど、私にはわかった」
冴が俺を見た。
「だから、私は……彼女を守りたいの。彼女が傷つかないように、いつも見守っていたい」
その言葉には、強い想いが込められていた。
「でもね、最近の凛音ちゃんは、いつもと違う」
「違う?」
「ええ。すごく……楽しそうなの。あなたの話をする時、顔が輝いている」
冴が微笑んだ。それは、今まで見せなかった柔らかい笑顔だった。
「あなたが、本気で凛音ちゃんを想ってくれるなら……私は応援する」
冴が一歩近づいた。
「でも、軽い気持ちなら……今すぐ離れて。中途半端な優しさは、彼女を傷つけるだけだから」
その言葉の重さに、俺は息を呑んだ。




