5 四条凛音・非公式面接②
ガラッ。
突然、教室の扉が開いた。
「咲来さん、杏奈さん、百花さん……何してるんですか?」
四条凛音が立っていた。
「あ……凛音ちゃん……」
咲来が慌てた様子で言った。
「もしかして、雨宮くんを問い詰めてました?」
凛音の声は穏やかだったが、三人は気まずそうに目を逸らした。
「ごめんなさい……心配で……」
百花が小さな声で謝った。
「……ありがとう」
凛音が微笑んだ。
え?
「心配してくれて、嬉しい。でも、雨宮くんは……そんな人じゃないから」
凛音が俺を見て、優しく微笑む。
その笑顔に、俺の心臓が大きく跳ねた。
彼女は、俺を信じてくれている。
誤解から始まった関係なのに、凛音は俺のことを、そこまで信じてくれているんだ。
「雨宮くん、お昼、一緒に食べませんか?」
「え……今日も?」
「はい。今日は購買でパンを買って、一緒に食べましょう」
凛音が嬉しそうに言った。
咲来たちが、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「行ってらっしゃい」
「凛音ちゃん、頑張ってね」
「お幸せに……」
三人に送り出される形で、俺と凛音は教室を出た。
*
購買で凛音がパンを選んでいる姿を見ながら、俺は考えていた。
凛音には、彼女を心配してくれる友達がいる。家族は忙しくても、周りには大切な人たちがいる。
そして、その中心にいる凛音は、みんなから愛されている。
「雨宮くん、カレーパンとメロンパン、どっちがいいですか?」
「え……カレーパンで」
「じゃあ、私はメロンパンにします。半分こしましょう」
凛音が笑顔で言った。
その無邪気な笑顔に、俺はまた心が揺れた。
俺は、凛音のことを意識し始めている。
もう、誤解だからと言って逃げることはできない。
*
放課後、田中が俺の肩を叩いた。
「お前、完全に四条様に認められてるな」
「……そうなのか?」
「気づいてないのかよ。お前、もう学園のヒーローだぞ」
田中が呆れたように言った。
「ヒーローって何だ。俺はただの高校生なのに」
「いや、お前が思ってるより、すごいことになってるぞ」
田中がスマホを見せてくる。学園の掲示板だ。
『雨宮×四条、公認カップルへ』
『四条様の友人たちもお墨付き』
『これはもう確定だろ』
コメントが何百と並んでいる。
「おいおい……」
「でもさ、お前、四条様のこと好きなんだろ?」
田中が真剣な顔で聞いてきた。
「……わからない」
「嘘つけ。顔に出てるぞ」
田中がニヤリと笑った。
「お前、昼休みに四条様とパン食べてる時、めちゃくちゃ嬉しそうな顔してたぞ」
「見てたのか」
「見てないやつの方が少ないだろ」
俺は頭を抱えた。
でも、田中の言う通りかもしれない。
俺は、凛音と一緒にいる時間が、楽しい。
彼女の笑顔を見ると、胸が温かくなる。
これが、恋なのだろうか。
まだわからない。
でも、俺は、凛音のことをもっと知りたい。
そう思っている自分がいた。




