緊急事態②
楽しくやってます
ぼんやりとした意識のまま、どんどん深くへと進んでいく。降りたくても身体がいうことが聞かない、暴れたくても脳が指示をだせない。
「何を、しようとしているんですか」
「それは着いてからのお楽しみです。先に教えてしまってはつまらないでしょう」
当の本人は楽しそうにしているが、こちらは楽しみどころか恐怖すら感じている。下へ進むに連れて視界がどんどん薄暗くなっていく。
かなり深いところへ進んだところでまた扉があった。暗証番号のようなものを打ち込んでロックを開けると、ゆっくりと扉が動いた。
室内なのに少し薄暗く、打ちっぱなしのコンクリの壁による圧迫感と威圧感が強い部屋だった。
天井には人が1人通れるくらいの大きさをした通気口のようなものがあった。でもたぶんリベリオは通れないと思う。
「少しそこに座っていてください」
そういってウバルドは私を床におろした。床もコンクリがそのまま剥き出しになっていて冷たく感じた。
やっと身体の痺れも弱くなったが、まだ指先は思い通りに動かせない。
意識もはっきりしてきて改めて室内を見渡してみると、鉄パイプのベッドと簡易的な小さなテーブルがあるだけで本当になにもない部屋だった。なんだか独房のような部屋だ。
何を目的に使っていた部屋なのかはわからないが、彼らがマフィアである以上あんまりいい場所ではないことくらいわかる。ルカが嬉々として使ってそうなぐらいヤバそう。
ウバルドが天井の通気口を外す。ファンタジーの見すぎかもしれないけど、絶対あの通気口を通ろうとしている。ファンタジーの見すぎだったとしてもここは実際ファンタジーだ、たぶん。てことは私の仮説が行われる可能性も高い、たぶん。
「お待たせしました、どうぞ」
上に向かって声を掛けたと思ったら、通気口から知らない人が降ってきた。上から降ってきた割にはとても身軽に着地をしている。
「ちっ…おせぇんだよ」
「すみません、色々と長引きまして。彼女がレイさんです」
グレーの髪に赤色のメッシュをいれた少年がこちらを見る。目つきが悪い、怖い。マフィアっていうより不良って感じがする。
「へぇ、お前が…」
まだ痺れが残っている身体では逃げられず、顎を捕まれ無理やり目を合わせられる。
しばらく目を合わせただけだったが、ふと少年が私の首元に視線を落とした。
「はっ、もう事を始めたのかよ。お前からよがったか?随分と淫乱なんだなぁ?」
「なっ…これはそういうことじゃなくて」
ルカに噛まれた跡がそう取られるのは無理もないけど、それを私のせいにのように言われるのはちょっと聞き捨てならない。
「誰にされたんです?」
「…え?」
ウバルドはあのとき止めに入ってくれたから、誰にされたかなんてわかってるはずじゃ…
「…コステロです」
「なるほど、仲が良いみたいで何よりです」
かまをかけて正解だった。やっぱりこの人はウバルドじゃない。ウバルドじゃないとわかったのはいいが、ここからどうやって戻るかが問題だった。
万全じゃない身体で男2人から逃げるなんて無謀もいいとこだ。それなら少なくとも痺れが収まるまでなんとか引き伸ばすしかない。
「あの、あなたウバルドじゃないですよね?誰なんですか」
「"僕"のことはご存じないですか?」
そういってウバルドが眼鏡を外しこちらを見て、口元を綻ばせた。私はその笑顔を見たことがあった。
「…エマ」
「おや、覚えていてくれたんですね。また名前を呼んでいただけて光栄です」
「おい、早くしろ時間ねぇぞ」
それはまずい。早く誰かに気づいてもらわないと…
コステロは?たぶん講義中で気づかない。あぁ、あと他には?こんなことになるならさっさと自己紹介してもらえばよかった。
「申し訳ないが、君には少し眠っててもらいたいんだ。これから行くところはいくら君でも教えられなくてね」
そういってエマが液体の入った瓶をこちらへ飲ませようとしてくる。あれを飲んだら今度こそどこへ連れていかれるかわからない。
まだ痺れが残る状態でなんとか立ち上がり、エマと距離をとる。
「ははっ、エマお前嫌われてんな。おもしれぇから手伝ってやるよ」
「全く…面白がらないでくれるかい?こうみえて真剣なんだ」
なんとか地下室の入り口にたどり着くも、扉は鍵がしまっていた。内側からもロックがかかっており、私には開けられそうになかった。
ガチャガチャしているうちに2人が近寄ってくる。
「残念だったね、ここは元々地下牢だったから。内側からは開けられないんだ」
「おい、俺にやらせろ」
少年がエマから瓶を受けとると、それを全て自分の口に含んだ。
最後の反抗で口を閉じていたが、指で無理やりこじ開けられる。口で直接流し込まれて、そのまま舌を絡めてキスをされた。
後ろが壁で逃げ道がなく、されるがまま全て飲み込んでしまった。
「はっ…はぁ」
「ふん、意外と可愛い顔するじゃねぇかお前」
目の前の不良くんは何事もなかったかのように、親指で唇を拭ってすぐ後ろのエマに話しかけている。すぐに眠気が襲ってきてもう目を開いているのも限界だった。
「おやすみなさい、レイさん」
自分で書いておいてなんですが、ピンチ早すぎると思う




