彼の目的
もっと出番あげたいと思ってます
「じゃあコステロは昔からエマと一緒にいたんですね」
「そういうことになるね。時折、コステロが僕と出会わなければと思うことはあるけれど」
持っていた本を元に戻して、また書斎の中を歩き回る。たしかにエマと出会わなければ、コステロは普通の大学生になれていたかもしれない。でも、エマに助けてもらわなければコステロはこの世にいない可能性すらある。少なくともあの瞬間は、コステロからしたらエマは救世主だったことには間違いない。
「きっとコステロはあなたに出会えて良かったと思ってると思いますよ」
「ふふ…君は少し優しすぎるね」
間違いなく褒め言葉なのに少し皮肉めいた感じがした。
「そういえばなんでレオーネの書斎に用があったんですか?」
わざわざ昔話をするためにここまで来たわけじゃないことぐらい私にだってわかる。
「そうだね、一つはここに忘れていった本の回収。もう1つは残念だけど君には言えないことなんだ」
「どうして言えないんですか?」
「本当に君は素直だね。もう少しわかりやすく言った方がいいいかい?」
少し前を歩いていたエマが振り返り、私の襟元をぐっと掴む。穏やかな所作の彼からは想像がつかない行動だった。
「俺はもうレオーネではなくて、別のボスがいるから。無駄な詮索をすんな、小娘が」
今までに聞いたことがないくらいの低く重たい声だった。彼の見たことのない姿を目の当たりにして動けないでいると、パッと手が離された。
「なんて、怖がらせちゃったかな?僕は舞台役者だからね、たまにはこれくらいするさ」
「…どっちが」
どっちが本当の"エマヌエーレ"なんですか?と聞こうとして、ぐっと言葉を呑んだ。
「最後のセリフは今度実際に演じる役のセリフなんだ。もしよければ僕の舞台も見に来てくれると嬉しいな」
「ぜひ、コステロと一緒に見に行きますね」
そう言うと彼は少し困ったような表情をした。学ばないな、と言われてるような気がした。
気づいたらエマはいくつか本を手に取っていた。きっとそれらが忘れていった本なのだろう。
「よし、これで最後かな?レイ、付き合ってくれてありがとう」
「いえ、昨日のお礼ってことにしといてください」
結局、もう一つの目的とやらは分からずじまいのまま書斎を出た。
書斎には窓がないからわからなかったけれど、もう昼を過ぎた頃で夕方になりかけるくらいの時間になっていた。廊下を歩いてるとリベリオに遭遇した。紙袋を抱えているところを見ると、たぶん買い物帰りだ。
「あ、リベリオ。おかえりなさい」
「ただいま。お、ちょうどよかった。エマ、お前夕飯食ってくか?」
「いいのかい?リベリオの料理を食べるの久々だな」
そのまま食堂へ向かってリベリオのご飯を待つことになった。
と、玄関の扉の開く音がした。ルカかウバルドあたりがどこから帰ってきたのかな?
「ただいま~」
「戻ったよ」
おかえりなさいと言おうとして振り向くと、ラウルとコステロがいた。あれ、帰ってくるのは明日だったはずじゃ…
「あ、お嬢!いろいろ大丈夫だった?パオロが焦ってたから心配してたんだよ」
「私は全然大丈夫ですけど…あのパオロが?」
「そうそう、俺らが連絡しても今無理!ってめっちゃ拒否られた」
コステロはけたけた笑っているが、張り込みからの連絡拒否って随分と大胆なことを…
「ま、レイちゃんが元気そうで何よりだけどね」
「お嬢が無事で良かったよ」
二人とも優しすぎる。優しさが身に沁みて涙が出そう。私がラウルと話しているうちにコステロがエマがいることに気づく。
「エマ、久しぶり!この前の舞台はどうだった?」
「久しぶりだねコステロ。あれはまぁまぁかな」
思ってたより普通に会話をしていて安心した。まぁエマは役者をやってる分感情を表に出さないというか、常に余裕綽々というか…ちょっとのことで動揺したりしないイメージがあるから、なにかを隠すことは得意なのかもしれない。
「あれ、そういえばなんで一日早く帰ってきたんですか?」
「それがさ…」
亀更新ですが少しずつ話を進められるように




