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悪役令嬢になれると思ったらマフィアの娘に転生しちゃった話【全年齢版】  作者: 咲縞ゆう


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潜入調査・想定外

もうちょい潜入です


暖簾から顔を出したのは思ってもいない人物だった。


「オリーヴェの皆様、ご無沙汰してます」


姿こそ違ってはいたが声でわかった。


エマだ。


「アミィか、久々だな」

「あなたも一緒にどうです?」


ジェラルドはグラスの残りを一気に飲み干す。

どうやらここでは"表"の顔で通っているらしい。入り口の近くから私のことを一瞥し、ルチアの方を指差した。


「あの男、ちょっと借りてもいいかい?」

「おいてめぇ、ボスの邪魔するのかよ」


ばっと立ち上がったジェラルドに向けて、無言で指で3を示す。


「彼の方が一枚上手でしたね、ボスに伝えましょう」


ジェラルドとファビアーノが二人揃って席を離れ、少し離れたルチアとバルドがいる方へ向かう。エマは二人を見送ってからこちらへやってきた。


「酷くされたね、可哀想に。()()()()さん」

「いっ…大丈夫ですこれくらい」


一瞬痛みに顔を歪めるがゆっくりと身体を起こし、ソファーに身を預ける。まだ身体は火照ったままだった。


「その身体はどうするつもりだい?僕が手助けしてあげてもいいのだけれど、君は嫌がるだろう?」

「こ、これは…」

「おいアミィ!さっさと連れてこい」


わかってる、と短く返事をしてソファーから立ち上がり暖簾の奥へ消える。また戻ってきたかと思えば、後ろから三人の女性が一緒に入ってきた。

三人とも容姿端麗で控えめにしながらもとても美しい顔立ちをしていた。


「代わりに僕はこの子をもらっていくよ。ついでにその男にも用事があってね」

「…ついでって何」

「そんな顔しないでよ、()()。さぁ行こうか」


そのままエマに抱き抱えられ部屋を後にした。



─── 



暖簾をくぐりVIPルームに戻ってきた。壁際に並んでいる半個室のテーブル席にひとまず座った。


「どいうことだい?ルチア」


息つく間もなくエマが疑問を投げ掛ける。


「どうもこうもないよ、元からこれが俺らの作戦だ。多少の危険が伴うのは俺もこいつも承知だった」

「君ならもっと上手く立ち回れるだろう。どうして彼女をほったらかしにした?」

「さっきからごちゃごちゃうるせぇな…お前はもうファミリーの一員でもない部外者だろ黙ってろよ」


二人が言い争う声はなんとか聞こえているがだいぶ遠く感じる。すぐ目の前で二人とも見たことがない表情をしている。

ルチアもエマもあまり感情を表に出さないタイプだと思っていたが、今はどちらもだいぶ感情的になってる。


「僕が来なかったらどうするつもりだったの?君はのらりくらり上手くやるつもりだったのかもしれないけれど、独りならそれでいい。でも彼女がいたらそうはいかないことくらい理解できるんじゃないのかい?」

「もういい、ほっといてくれる?キミ、動ける?やるべきことはやったんだ、早くここを出よう」


無理やり席を立ち、ルチアに手を引かれ会場の出口へ向かう。ふと後ろを振り返ってみると、ボスの部屋へ繋がる暖簾が揺れた。


誰かでてくる。


ルチアの袖をきゅっと引っ張る。


「ん、どした」

「さっきの部屋から、誰か来る」


ルチアも足を止めて後ろを振り返る。そこには出会ったときの綺麗な顔立ちからは想像できなような表情をしたファビアーノが立っていた。


「まずいな、早く行くよ!」

「エ、エマは…!?」

「あいつは独りで勝手にやるよ、昔からそういうやつだ」


勢いのまま出口から飛び出すと外には数人のSPがいた。しかもおそらくこれはバレているパターンのやつだ。


「これはやるしかないね…おいルカいるんだろ?暴れる時間だ」

「言われなくてもいるもんねっ!」


ワイヤーでどこからともなく参上したルカがルチアと背中合わせで着地する。

私は何もできずただ呆然と立ち尽くすしかできなかった。


「っ…!レイちゃん伏せて!!」

「えっ?わかった…!」


言われたまま思いっきりしゃがむとどこからか銃声が聞こえた。恐怖を感じて辺りを見渡してみると、真後ろに出血する肩を押さえるファビアーノがいた。

目の前で起こる混乱とまだ少し残る薬で腰が抜けて上手く立ち上がれない。

と、ファビアーノの前にルチアが立ち塞がる。


「言ったろ、俺の女に手を出すなって」

「ふっ…目の前で自分のモノを汚された気分はいかがですか?」

「さぁ?まだ俺のじゃないしね、わかんないや」


ルチアの返答が気にくわなかったのか、ファビアーノが切れ長の目でルチアを睨み付ける。肩の出血は治まる気配もなく手と衣服を赤く濡らし続けていた。


「早く出血止めないと死んじゃうよ」

「殺すなら早く殺してください」

「…いや、お前はそのまま痛みに苦しみながら逝きな」


片膝をついているファビアーノの太腿を撃ち抜いた。甲高い銃声が響く。私は咄嗟に耳を塞いだ。聞こえたくないものまで聞こえてしまいそうで怖かった。


「う"あッッ…」


ファビアーノはそのまま後ろの扉にもたれ掛かる。少し虚ろな目だけがこちらを捉えていた。



「じゃあね、ファビアーノ様」



個人的に楽しく書いてました

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