潜入調査・VIP
進みます
久々に酔ってるなという感覚がした。部屋の中に充ちている甘ったるい重い匂いも相まって、頭が重く感じた。
「キミちょっと酔った?あんまり長居もしたくないし、さっさと済ませちゃおうか」
「ちょっとだけ。でもこれくらいなら大丈夫」
長居したくないのも、さっさと済ませたいのも同意だ。さくっと終わらせてさくっと帰りたい。
「そうだ、はいこれ。キミにも渡しておくね」
そういってルチアは薬のような見かけをした白い錠剤を渡してきた。おそらくこれは…
「わかってると思うけどこれは毒だから絶対飲まないでね。俺でもちょーっと危ない量のものだからキミは即死だよ」
「わざわざ怖いこと言わないでよ」
「ま、危ないってことがわかってくれれば十分」
ターゲットの持っているグラスに錠剤を入れることができたら、ひとまずお互いに報告をする。できない距離であればウインクを左右1回ずつの合図を決めた。
現ボスで元ボスの弟バルド、その側近のファビアーノとジェラルド。特徴こそ聞いていないが、VIPの奥には三人と許可された人間しか入れない空間があるらしい。
入り口であろうところにいるウェイターに話しかける。
「ボスに挨拶がしたい」
「カードを見せろ」
「ほら、これでいいでしょ?」
どうやらカードには今までの功績とかそういうのをまとめておけるシステム的なものがあるらしく、細かい部分までパオロは再現してくれたみたい。あいつ天才か?
「どうぞ」
暖簾のようなものを潜り、ついにオリーヴェの幹部と対面した。
そこにはさっき偽の連絡先を渡した優しげな男がいた。革張りのソファーに腰かけてパイプをふかしている。あのときのあいつってまさか幹部だったの…?
「バルド様ファビアーノ様ジェラルド様、お初にお目にかかります。ルゥと申します。こちらは長らく共に行動しているフィーナです。以後、お見知りおきを」
「フィーナと申します」
できるだけ目を合わせないようにお辞儀をする。緊張かはたまたずっと吸い続けている甘い匂いのせいか体が熱く火照るような感覚に襲われる。内側からじわじわと熱くなるような、運動をしたあとのような内側に籠るような熱さだった。
「フィーナと言いましたか?随分と顔色が悪そうですが体調が悪いのですか?」
さっき会った男がソファーから立ち上がりこちらへ向かってくる。たしかに体調は悪いかもしれないけれど、そんなことは今気にしている場合ではない。
「ファビアーノ、お前その女知り合いか?」
「さっきここへ来る前に連絡先をもらいました」
ゆっくり距離を詰めてくるファビアーノと呼ばれた男から庇うようにして、ルチアが私との間に割り込む。
「…俺の女に何か用ですか?」
「おいルゥ、そんな気を張るな。お前にはワインを注いでやるから、その女は一旦ファビアーノとジェラルドに預けておけ」
一瞬ルチアがこちらを見て無言で確認をしてくれたが、ここでボスの機嫌を損ねる訳にはいかない。ひとまずバラバラになることにした。
体調はどちらかといえば悪化する一方で熱さで呼吸も浅くなってきた気がする。できるだけやるべきことを早く済ませたい。
ルチアたちと少し離れた大きめのソファーに私を挟んで、ジェラルドとファビアーノが座っていた。それぞれワイングラスを持っている。距離が近い。
「おい、俺先でいいか?」
「は?僕が先に目を付けたんですよ?僕が先に決まってるじゃないですか」
私を挟んで座っているにも関わらず、おもいっきり私を無視して口論を始めた。少し立ち上がらないと届かない位置にあるグラスに錠剤を入れなければいけない。自分がワインを飲む仕草を見せながらすっと両脇に置いてあるグラスに錠剤を落とす。ありがたいことに赤ワインだったおかげで錠剤が溶けるまでの間、あまり目立たずにいられる。
「あなたはどちらが好みです?」
「お前が選べ」
「な、何の話ですか?」
気づいたら私に話を吹っ掛けられている。ルチアの方を見てみても、向こうが話し終わる素振りは全くなさそうだった。
頭がぼーっとしてきて身体の内側が熱い。
「そんなのどっちとヤるかに決まってるだろ」
「ところでそろそろ効果が出始める頃だと思うんですけど、いかがです?体調、悪くないですか?」
名前いっぱい




