暗い部屋の住人
少しずつ人が増えていきます
次の日、みんなで朝食を食べていると久しぶりに携帯が鳴った。もらった当初は喜んでいたけど実際のところあんまり使えていなかったから、携帯自体久々に開く。まぁ主な要因としては連絡をとる友達が一切いないから、かな。
『久しぶり。今度またレオーネに遊びに行ってもいいかい?ちょっと調べたいことがあるんだ』
連絡をしてきたのは案の定エマだった。遊びに行ってもいいかと聞かれても私の一存では安易に答えることができない。
『まだわからないので他の皆に相談してからまたお返事しますね』
それだけ返事をして朝食に戻った。やっぱり美味しいご飯は温かいうちに食べなくちゃ、うまっ。
「お嬢、昨日はありがとね」
「いえ、私は何もしてないですよ。ちゃんと私が言ったことを守ってくれればそれでいいです」
「はは、敵わないな」
ラウルは傷を負っていた左腕に包帯を巻いているが大した傷ではなさそうだった。お兄さんの話をしてくれているときは少し元気がなさそうに見えたが、朝になったらいつもと変わらず元気そうだった。
食べ終わった食器をカウンターへ運んだ。
「ごちそうさまでした!今日も美味しかったです」
「いつも律儀にありがとな」
「あ、それパオロの分ですか?」
片付け終わった食器の近くには以前夕飯を届けたときに使ったバスケットが置いてあった。
「あぁこれか?朝食っつーか昼かもしれないけど、毎朝片付け終わってから届けに行ってんだよ」
「私が行ってもいいですか?」
「また何か小言を言われるかもしれねぇぞ」
それでも彼とわかり合うには今はこれしか方法が思い浮かばなかった。どうにかして仲良くなりたいと思った。
「大丈夫です!機嫌を損ねないように頑張ります!」
「わかった、じゃあ頼んだよ」
そうして朝食兼昼食が入ったバスケットを持ってパオロの部屋へ向かう。途中でルカに奪われそうになったり、ルチアに悪戯されそうになったがリベリオに頼まれたとコステロが助けてくれた。
苦労してたどり着いたパオロの部屋の扉をノックする。
「パオロ、朝食を届けに来ました」
返事がない。もう一度ノックをしてみる。
「パオロ?」
ノブを回してみると鍵が空いていた。申し訳ないかなと思いつつ、何かあっても大変だから…と半強制的に自分を納得させて部屋に入ることにした。
「…お邪魔しまーす」
相変わらず部屋はほぼ真っ暗だった。ほとんど装飾のない部屋のベッドにパオロは寝ていた。
この前あまり顔を見れなかったから、枕元で顔を覗き込んでみる。全然暗くてわからない。
机の上にバスケットを置いて、もっと近寄ってみる。そんなパオロはすぅすぅと気持ち良さそうに寝息を立てている。
ほっぺたがモチモチしててなんだか小動物のように見えた。目は瞑っているからわからないけど睫毛がばさばさしていて、たぶん可愛い顔つきなんだろうなと勝手に想像する。
好奇心でほっぺたを少し触ろうと手を伸ばした。
「あんた人の部屋に侵入して何やってんの」
「あ、いや、あの。朝食を届けに…」
触りかけた手首をがっつり捕まれて現行犯逮捕されている。
「それはわかってる。じゃなくて人の寝込み襲うって何考えてるのか聞いてるんだけど」
「す、すみません…そ、そんなつもりは…」
実はちょっとありました、なんて言えない。
ほっぺたがモチモチしてて触りたくなっちゃって、なんてアホなことは絶対に言えない。
「次やったらあんたの部屋の鍵使えなくして閉じ込めてやるからね」
「ひっ…もうやりません」
でもパオロと話す機会を失うのは辛い。なんとかして彼と日常会話でもできるようになりたい。
「あ、あの!毎回私がご飯を届けに来るのはダメですか…?」
「なんであんたがわざわざそんなこと…」
「あなたと少しでも話がしたいからです」
整った目を見開いて驚いた顔をしていた。
「ふん、毎回寝込み襲われちゃたまんないんだけど」
「もう絶対しませんから!」
「…わかった、ほんとに届けるだけならいいよ。でも僕も忙しいからあんたと話してる場合じゃないから」
なんだかんだこういうところでOKを出してくれるパオロは優しいのかもしれない。
もしかしたら少しだけ距離が縮まったかもしれない。
「邪魔だから早く出てって」
…縮まってないかもしれない。
ぷにぷに




