趣味の範囲
改めて読み直すと変なとこあるな~と思いながら加筆修正してます
レンガ造りの路地に模様なのか見分けがつかないくらい擬態した扉をあける。なんだかRPGの秘密基地とかシークレットエリアみたいなところだ。
「おい誰だぁ?こんな時間に」
店内はバーと言うよりは酒場のような場所で、いかにも隠れ家といった感じの雰囲気だった。出迎えてくれた男性は怖い見た目と怖い声をしていた。
「こんばんはじゃなくてこんにちはですね、マスター。少しお邪魔しても?」
「なんだ、アミィかよ。その女はどうしたんだ」
こいつ、いくつ偽名があるんだ?
「アミィは芸名だよ、覚えといて」
そっと小声で耳打ちされる。なるほど、てことはアミィで調べればエマの芸能活動が見られるということか。今度調べてみるか。
「僕の愛してやまない恋人ですよ」
「ははっよく言うぜ。ま、愛人かセフレってとこだろ」
やっぱこの人怖い!
「本人の前でそういうこと言うのやめてもらえますか?そんなことより、少しだけここお借りしますね」
「おい、女とヤるならホテル行けよ」
「誤解しないでください、ちょっと居座るだけです」
この店に入ってからマスターと呼ばれる人はずっと私のことを見ている。見定めるような強い眼光でずっと見ている。怖い。
「先ほど彼女とお茶をしていたら、マフィアの抗争に巻き込まれそうになりまして。危ないので逃げてきたんです」
「そういうことかよ。最近ブルーノファミリーが度を越えるようなことまでするようになったからな」
なんとなくエマはこの人に自分の素性を明かしていないんじゃないかと思った。と、いっても私だってマフィアの彼、一緒にお茶をした彼、俳優をしている彼、どのエマが本当の姿なのか、なんてわからないけど。
もしかしたら私の知っているどの彼も全て精巧に作られた姿かもしれない。
「そういえばこの前いただいたターゲットの追加情報とても助かりました。お陰様で1日早く仕事が片付きましたよ」
「そうかよ、そりゃあよかった。ところで、あの女は俺たちの話をしっかり聞いてるけどいいのか?」
自分の素性を明かしていないのかも、とか思った矢先仕事らしき話を始めた。
親指で刺され、びくっと体が反応する。普段みんなといるときには感じない威圧感がある。
「大丈夫です」
「お前が手にかけられねぇってんなら、俺が殺ってもいいぜ?」
一難去ってまた一難とはよく言ったものだ。安全なところに逃げ込めたと思えば、また命を狙われている。
「あ、あの!私エマのこと知ってます!!あ、えっと、知ってるって言っても、あの、夜?の方の仕事をしてるってくらいで、えっと…」
「度胸あんな嬢ちゃん。まぁいい、"エマ"の方を知ってんなら大丈夫か」
「だから大丈夫だと言ったでしょう…」
それから誤解が解けてもなお、マスターの視線は痛く、最後の最後まで怖かった。そのあとらしばらく会話をしてから店を後にした。
騒ぎはある程度落ち着いたみたいで、パニック状態だった大通りは大方日常を取り戻していた。
「エマは俳優とマフィア、どっちのお仕事を先にしていたんですか?」
「もちろんマフィアだよ。俳優が裏社会に堕ちたらなんて言われるかぐらい君でも想像がつくだろう?」
この話題をきっかけに少しだけエマの過去を聞くことになった。
「僕は元々レオーネでは色恋沙汰を担当していてね。議員の不倫だったり、俳優や女優の乱交パーティーだったり」
やっぱりこういう話は何度聞いても想像できないものだった。
「そういうことを段々していくうちに、自分が俳優になった方が効率が良いんじゃないかと思い始めたのさ。僕は人より身長がある方だったし、演技力もその辺の人よりは上手かったと思うよ」
こっちを見て、顔もそこそこいけてたと思うしね♪なんてご機嫌そうに覗き込んでくる。私が思っている以上に自己肯定感が高そうだ。
「まぁそれももうしなくなったから俳優続ける理由がなくなったんだけど。今は趣味で続けてるってだけかな」
趣味で俳優続けられるくらいの実力が彼にはあるんだろうなと、なんとなく納得させられた。
いつか彼の出演している舞台を見に行こうと思う。
「…俳優をしている僕はあんまり好きではないけれどね」
「え?それってどういう…」
「さ、ほら。そろそろレオーネ邸だよ」
ぐいぐいと背中を押され駆け足になる。
「ちょ、そんな押さなくても!」
「皆心配しているだろ?早くおかえり」
もう皆のところに私の身バレのことはもう伝わっているかもしれない。それなら早く戻って安心させてあげなくてはいけない。
「またお茶しましょう、今度はコステロも一緒に」
「彼は学業が忙しいからね、またそのうち時間が合えば」
そうしてレオーネ邸の門が見えるところで別れた。1日歩き回って、走り回って疲れた。早く休みたい。
倒れ込みそうな勢いのまま玄関を開けた。
自分で書いておきながら登場人物多いな…?となってます




