理不尽な決定
人増えました
「1番最初に父親になった人が次のレオーネファミリーの当主、俺の跡継ぎだ」
ちょ、そんなこと急に言われても困るんですが?!
「え、いや、あの…」
「貴方はどうして当主から降りるんです?まだバリバリの現役でしょう」
私の父上が一体何歳なのかは検討もつかないが、同じく現役のウバルドがいうのであれば現役で渡り合えるくらいの実力の持ち主なのだろう。
「そろそろ隠居生活したくてさ、それだけ」
そんなんで娘の貞操を危機に晒していいのか、父よ。まぁ?たまたまいた愛人の娘だからいっか~みたいなノリならわからなくも…嘘、絶対わからない。こんなのおかしい!!
こんなことで貴重な処女を失いたくない!どうせならイケメン王子様がよかった!!
「…私以外にいなかったんですか?というか、そんなぽっと出の娘でもいいんですか?」
「ぽっと出だろうがなんだろうがお前が俺の娘であることに変わりはないからな。それにお前は俺の唯一の娘なんだ」
だからその唯一の娘が処女喪失しようとしてますけど、いいんですか!?
「俺の跡を継いでもらうなら俺の血縁がいいと思ってな。最初で最後の親の頼み聞いてくれるか?」
どうやって断るんだよ。親って言われても今日初めて会ったおじさんなんだよね…
もういいよ…私のはっぴー異世界ライフは急にエロ展開になっちゃったけど、自分の貞操は自分で守るよ…
「…わかりました」
「ありがとな!てことで、子供ができたら連絡ちょうだいね、よろしく」
軽っ。
「わかりました。では、今日はこれで失礼します」
───
別邸から出て車に乗り込む。時間を確認したくてスマホを開いてみると、エマからSMSが届いていた。
〖こんばんは、レイ。今度、1週間後に一緒にお茶しに行かないかい?きっと君も僕に聞きたいことが山ほどあるだろう〗
(1週間後…できればもっと早く会いたい)
〖こんにちは、エマ。急になりますが明日はどうですか?できるだけ早く会って話がしたいので〗
すぐに返事がきた。
〖ずいぶんと積極的だね、嬉しいよ。わかった、じゃあ明日の午後にこのカフェで待ってるね〗
メッセージと一緒にカフェの地図と店舗情報が送られてきた。オープンなテラスがあってとてもお洒落なカフェだった。
〖あ、もちろん君ひとりで来るんだよ。それじゃあ、また明日〗
またこの前みたいなことが起こる可能性は拭いきれないが、わざわざ人目につきやすい開放的なカフェを選んでいるあたりその心配はなさそうだと判断した。
ひとまず誰にも相談せずにひとりで乗り込むことにした。
それより今は私の人生最大の貞操危機をどう回避するかの方が大切だ。
「あの、ウバルド」
「なんです?」
「今日ボスが言ってたこと皆に秘密にすることは…」
「できませんね」
交渉決裂。早すぎる。瞬殺。
「私がボスのとこに行った日の夕方は基本的に会議をしているんです。なのでそのときに皆さんにお伝えしますよ」
これはもう私の貞操終了のお知らせには十分すぎる。それにしても私の人権なさすぎ。
「ふふ、貴方これから体力勝負になると思いますが頑張ってくださいね」
なっ…!こいつ他人事だと思って。ふふ、じゃないんだよ!!!まったくもう!
「あぁ…転生したい」
「もうしたんじゃなかったんですか?」
「どうしてそんなナチュラルに返せるんですか?」
───
それからレオーネの邸に帰り、夕方の会議の準備が始まった。
いつも食堂に集まりリベリオの淹れてくれた飲み物をお供にいろいろなことを話すらしい。これでやっとレオーネが全員揃ったらしいんだけど、顔も名前もわからない人が2人いた。
「とりあえずレイさんには、彼らの名前だけ教えておきますね。タブレットを持っているのがパオロ、そこの柱に寄りかかってるのがルチアーノです」
2人とも初めて見る顔だ。なんだかんだ会わないもんだなと思う。
「…よろしく」
「よっ」
軽く会釈をする。
「早速本題に入ります。今月はボスから直接のミッションはありませんでした。それとルカ、これボスから預かりました。いい加減珍しい道具集めるの控えたらどうです?」
「そんなの俺の勝手だろ?やった~♪ずっと欲しかったんだこれ、ボス大好き♡」
まだ開けてもいないのに段ボールにすりすりと頬を寄せている。どんだけ欲しかったんだ…?
「それでここからが大事な話です。ボスからの伝言というか、まぁ1つのミッションみたいなものですが…次期当主はレイさんとの間に第一子を作った人、だそうです」
「ほーん、なるほど」
「おう、まじか…」
反応は人それぞれだった。驚いてる人、なんか楽しそうにしてる人(腹立つ)、そもそも当主に興味がない人、そもそものそもそも私に興味がない人。
「ということで、今日から彼女と一夜を過ごしていただいて大丈夫なので」
バカやろう!!いいわけないだろ!!!
さっき名前を知ったばっかりの人もいるんだから、変なこと言わないでくれ本当に。全力で逃げるぞ、私は。
スーツで迫ってくる男の人から逃げるとかアレじゃん。
魂抜けた状態で机に倒れていると、リベリオに声をかけられた。
「お前、合意じゃないのか?」
「親の勝手な方針です…」
「ま、心の準備ができたらでいいんじゃねぇか?少なくともルカ以外は待ってくれる連中だと思うぜ」
リベリオは励ましてくれているんだろうけど、"ルカ以外は"という言葉が恐怖すぎて励ましにならない。
「が、頑張ります…」
「あんま気負いすんなよ、なんかあったら聞いてやるから。そんときは甘いもん作ってやる」
優しさが沁みる…薄情な細眼鏡と違って……
メタ発言に耐性あるウバルドにじわじわきている




