別邸への訪問
だいぶ話が動きました
「おはようございます、レイさん」
扉をノックする音で目が覚めた。
毎朝、目が覚める度に実は夢だったんじゃないかとか、起きたらボロくさいアパートの天井が見えるんじゃないかとか思ってた。だけど、何度目が覚めても"いつもの"天井だった。
最近はいい加減慣れてきた。
「レイさん?起きてます?」
あ、やべ。ウバルドは怒らせると怖そうだ。
「今行きます!」
ドアノブに手を掛けたところでこの前のことを思い出した。部屋の扉を開けたとしてウバルドじゃない人がいる可能性も…
「貴方…殺されたいんですか?」
扉の向こうで撃鉄を起こす音がした。
「あー!開けます開けます!!開けますから撃たないで…」
すこーしだけ扉を開く。
「お、おはようございます…」
「おはようございます。あと30分ぐらいしたら出発しますよ、遅れないようにしてください」
30分…!それはかなりやばい。
「急いで準備します!!」
────
最速で支度をして中庭にでる。なんかちょっと高そうな車のすぐそばで懐中時計を持って立っていた。
「10時59分52秒。ギリギリですよ」
ひえぇ…
「…大変お待たせ致しました」
「貴方は助手席に乗ってください」
日本では右ハンドルだったから助手席なのに右に座るのはなんだか新鮮だ。そう考えるとなんだか異世界というよりは海外に来てるような感覚だ。
「どれくらい走るんですか?」
「そうですね、隣街のタルクまで行くので20分ぐらいです」
「街の名前も覚えるのか…」
タルクはイトロスの中でもフロズ寄りの西側に位置しているらしい。
「イトロスの西側、特にフロズの近くは少々治安が悪いですからね。私とはぐれないようにしてください」
「わ、わかりました」
そういえばレオーネの邸から離れるのは初めてだった。街並みはとてもおしゃれで白を基調とした建物が多く、ヨーロッパにいるみたいだ(行ったことないけど)
「この街はとても美しいですね」
「ええ、中身はともかく建造物や自然など景観はとても美しいところですよ」
"中身は"とわざわざ言うところがウバルドらしいと思う。
もっといろんなところに行ってみたいな。と、思っていた矢先、運転手は市街地のど真ん中で車を止めた。
「到着しました。ここが別邸です」
「え、ちっさ」
ウバルドが指差した先はただの一軒家の戸建てだった。ふっつーの家じゃん。うちの実家と大きさ変わんないんじゃない?ってぐらい。マフィアのボスがそんな質素な生活をしてるとは思わなかった。
小さな家を前にして口をあんぐり開けている私を横目にインターホンを押す。
「ウバルドです」
返事はなかったが近くにある小さな門の鍵が開く音がした。
「では、行きましょうか」
ウバルドに続いて家の中に入ると、やっぱり普通の戸建てと対して変わらない大きさだと思う。
リビングにある階段を上るといくつか部屋があった。そのうちの1番奥の突き当たりの部屋をノックする。
「失礼します」
「…失礼しまーす」
そこにはもうボスらしきガタイのいい男性が1人座っていた。横にはスーツを着た細身の美女。秘書かな?家政婦さんかな?
「レイ、よくきたね」
「はじめまして、こんにちは」
「そんな仰々しくするな…一応父親なんだぞ」
たばこを吸いながら苦笑いしている。
「ウバルド、これルカに渡しといてくれ。あとはレイ、今日は君に大事な話があって呼び出したんだ」
大事な話?
「レイ、君にはレオーネの次期当主を懐妊してほしい」
「あ、あの!ちょっと飛躍しすぎてわからないです…」
「つまり、私たちの中の誰かとの子供を産んでくれということです」
いや、わからないけど、そういう意味のわからないじゃなくて!!
「1番最初に父親になった人が次のレオーネファミリーの当主、俺の跡継ぎだ」
今見ても突飛すぎてファンタジーです、としか言い様がなく。




