終わりと始まり
ムーンライトで連載していたものの全年齢向けに加筆訂正したものになります。
はじめましての方、はじめまして。ムーンライトでお会いしたことのある方、お久しぶりです。
内容や誤字脱字など直しながら、更新していきます。
少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
ねぇ、人は死んだらどうなると思う?
私は"どこか別の世界に転生する"と思う。数百年先の未来かもしれないし、人間ですらもないかもしれないね。
個人的にはできれば転生先は中世ヨーロッパとかの貴族社会がいいなと思っている。ほんとは死なずに転生したいんだけど。
と、考えているいま、私は死にかけている。
大学の最寄り駅に不審者が現れた。明らかに怪しい人物が視界に入ったと思ったその瞬間には、地面に倒れこんでいた。近くで複数人の叫び声や悲鳴が聞こえ、遠くで救急車やパトカーのサイレンの音がする。
床に広がる生ぬるいそれを感じながらゆっくりと目を閉じた。
─────────────
「…う、…じょう!」
誰かの呼ぶ声がした。今度は悲鳴じゃなく少し切羽詰まった声。
「おじょう…!」
お嬢様…?
ってことは、転生成功?私死んだの?
こんな状況にも関わらず少しわくわくしている自分に驚いた。少し行き過ぎた好奇心だと思ってほしい。
貴族社会のどこかに転生できるならもういっそ悪役令嬢でもいい。それはそれで楽しそうだ。
少し期待しながらゆっくりと目を開けた。
***
暗闇から開いた世界は、煌びやかで華やかで豪華な景色と私を取り囲む美しい顔立ちの王子様
ではなく、
なんの装飾もないわりと普通な天井と、いかついスーツ姿のハンター数人がベッドの周りにいる殺風景な光景だった。
え、ちょっとまって。豪華なシャンデリアは?やたらと装飾品のついている高そうなジャケットは?
「お嬢!よかったやっと目を覚ました!!」
「誰かウバルド呼んでこい」
…なんか期待してたものと違う。
けど、とりあえず転生したことはしたらしい。てっきり目覚めた瞬間に記憶がばーっと流れ込んでくるもんだと思ってたけど、何も起きない。
自分の名前すらもわからない。なんなら元の(?)名前を覚えている。
ここはどこで、目の前にいる人たちは一体誰で、今はいつの時代?わかるのは貴族社会ではないことぐらい。
「おはよ、僕のことわかる?」
1番始めに声をかけてきたのは右目に眼帯をした少年だった。短めの黒髪で前髪を少し邪魔そうに流している。
「え、えっと…」
なんとなく素直にわからないと言いにくくて口ごもっていると、部屋の扉が勢いよく開いた。
入ってきた人物は真っ先にこちらへ来るとベッドの真横にぴったりと付いて、私の手を握った。
「やっと起きた~!レイちゃん♡」
え…?どうして私の名前を…
本当に転生したのであれば私は私の名前でなくなっているはずでは…
「ウバルドを呼んでこいって言ったろ、どうしてここにルカがいるんだよ」
「しょーがないでしょ、途中で会っちゃったんだから。ウバルドもすぐ来るよ」
「あ、あの…どうして私の名前を知ってるんですか?」
そう聞いた途端、騒がしかった室内がぴたりと静まりかえった。
え、なんかまずいこと言ったかな。
「おい、うそだろ」
「お嬢が敬語でしゃべって…」
はい?敬語ぐらい私だって…
ちょっとまて、転生が成功してるってことは私は今別の誰かであるということで。
それで、その別の誰かが"レイ"という名前で、全く敬語を使っていなかったってことか?
「な、なんてね!冗談よ、冗談!」
適当に取り繕ってみたけど何も記憶がないんじゃちょっと無理が…
「はぁ、びっくりした」
「……やっぱレイちゃんはそうでなきゃね♪」
いまだに手を握っている金髪の男もご機嫌そうだ。我ながら素晴らしい適応力。
「お待たせしました。体調はいかがです?」
少し遅れて部屋に入ってきたこの眼鏡の細身の男がおそらくウバルドという名前の人だろう。
「見ての通り、なんともない」
取り急ぎ冷静を装って答えたが、それ以上の返事はなかった。
まだ「レイ」の性格も癖も何もわかっていないが、ひとまず気丈に振る舞っておけばなんとかなりそうだと思った。
きっとそのうち少しずつでも思い出すんじゃない?知らんけど。
「…ねぇ、レーイちゃん」
そういえばこの男、まだ私の手を握ったままだった。
「ん、何?」
何気なく返事すると、彼は耳元に顔を寄せて誰にも聞こえないように囁いた。
「このあとい・つ・も・の・しよ?」
はじめまして。こんにちは、こんばんは。
こちらの世界を覗いてくれてありがとうございます!
すでに連載中の作品になりますので、しばらくは毎日更新できると思います。
のんびり遅筆ではありますが、よろしくお願い致します。




