第一話 〜恋敵〜
「俺さ、明香里のことが好きなんだ」
ジリジリと焼けるような陽の光が差す中、どこかでミーンミーンとセミが鳴いている。最近ますます暑さが拍車をかけている気がする。汗がポタポタと身体を伝う。さすがに待てなくなり、呼んだにも関わらず何も話さない貴斗に声をかける。
「それでどうしたの?こんな暑い中呼びつけてさ。」
ためらうように口を開いてはまた閉じ、そいつは少し間をおき話す。
「…俺、明香里のことが好きなんだ」
なんとも恥じらいを含んだような空気がすり抜ける。
「そっか…応援するよ!というか、私仲良いしさ助けになれると思う。貴斗ならできる!」
驚きと悲しみを悟られないようにできる限り明るい声で話す。まさか明香里が好きだったなんて、でも気付いていたけど目を背けていただけなのかもしれない。そんな私の心情を知りもしない彼は、
「本当か。ありがとう、俺頑張るわ!」
などと言う。混沌とした感情が体中を駆け巡り吐き気さえも感じてきたような気がする。ただでさえ暑いのにこんなことを聞く羽目になるとは思いも寄らなかった。いや、そもそも叶わないことだと感づいていたじゃないか。ああ駄目だ。胸の奥底から何とも言えないようなものがこみ上げてきてこのままでは口にしてしまいそうだ。帰ろう。そう思い別れの声を掛ける。
「じゃまた明日、明日から一層楽しみだね」
ニッと笑いかける。照れくさそうな顔をして少し俯く彼に背を向け家に向かう。明日から憂鬱だな。




