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「もう学校行きたくない!」と妹が言いだしたので理由を探るため女子校に行くことになった俺

作者: 赤ぱん金魚
掲載日:2026/02/10

 高校に入学して二ヶ月経った頃。

 双子の妹、優花ゆうかが、制服を泥だらけにして帰ってきた。

 どうしたんだと理由を聞くと、「もう学校行きたくない!」と言って自分の部屋に閉じこもってしまった。

 それ以来部屋から出てこない。

 今日でもう一週間だ。


「学校で何かあったのかしら」


 夕飯時。

 心配する母ちゃんは、箸も進まない。

 優花が通うのは、中高一貫の名門、白蘭はくらん女学院。

 県内では、お嬢様校として有名だ。


「嫌がらせされたんだろ。だからお嬢様学校なんかやめときゃよかったんだよ」


 俺は、入学試験の時から思っていた。

 一般家庭の人間がお嬢様学校に行ったってうまくやっていけないって。

 可愛い制服に憧れ、頑張って勉強して高校から入った結果がこれだなんて報われない。


「そんなこと言ったって何も始まらないでしょう」


 母ちゃんは、箸を置くと、


勇樹ゆうき、あんた明日優花の代わりに白蘭に行ってきて」

「はあ!?」

「あんたたち見た目も声も同じだからバレないでしょ。優花に何があったか調べて、解決してきて」

「無茶苦茶言うなよ! 見た目が同じでも俺は男だぞ!」

「妹が可愛くないの!? このまま一生部屋から出てこなかったらどうするの!」

「ぐっ……」


 俺だって妹は可愛い。

 悩みに悩んで、俺は、白蘭女学院に行くことにした。



 ……



 翌日。

 徒歩と電車で四十分。

 俺は、優花の通う白蘭女学院にやってきた。

 着ているのは白いブレザーに赤いチェック柄のスカート。

 生まれて初めてのスカート。

 妹のため。

 我慢だ。


「よし」


 気合を入れて校門をくぐった。

 周りには、俺と同じ制服の生徒。

 女子校だから、もちろん女子ばかり。

 みんな清楚な容姿に佇まい。

 さすがはお嬢様学校。

 なんだけど、


「めっちゃこっち見てくるな」


 周りから俺へ不躾な視線。

 見ながら友達同士でコソコソと話して笑っている。

 男とバレているなら、通報一発アウトだからそうではない。

 だったら何なのか。

 まぁ、まだ答えはいい。


 昇降口に入り、優花のクラス一年一組の下駄箱へ。

 俺たちの苗字、反町そりまちの文字を見つけて蓋を開けた。

 上履きがなかった。


「ふぅむ」


 これもまだ答えはいい。

 気になる点其の二、ということで置いておこう。

 来客用のスリッパを履いて、昇降口を後にした。


 廊下を歩き、一年一組の教室に到着。

 ガラリと扉を開けて中へ入る。

 みんな、ピタリとお喋りをやめて俺に注目した。

 挨拶してくる女はなし。

 ここでもみんなヒソヒソ。

 俺と目が合うと、パッと逸らす。

 嫌な雰囲気だ。

 教卓に貼ってあった座席表を確認し、優花の席にきた。

 机に花が飾ってあった。


「もう決まりだな」


 答えを出していい。

 やはり優花はイジメられている。


 理由一。

 前庭を歩いている時にこっちを見て笑っていたのは、優花を嘲っていたのだろう。

 容姿のことか庶民という家柄のことか。


 理由二。

 上履きがなかったのは隠されたから。

 上履き隠しとかガキかよ。


 理由三。

 この花は、亡くなった生徒の席にするアレだ。

 もちろん優花は元気健康で生きている。

 最悪の嫌がらせ。

 ただ、小さな花瓶に一輪とかではなく、高級そうな大花瓶に花束が飾ってあった。

 さすが金持ちのお嬢様たち。

 嫌がらせも豪快だ。


「あら、優花さん。ごきげんよう」


 そこへ声をかけてきた女子。

 金色の長い髪の優雅な巻き毛。

 気の強そうな美女。

 こいつは知ってる。

 大財閥のお嬢様で雑誌なんかでたまに見る。

 一条いちじょう麗亜れいあ

 そしておそらく、先頭になって妹をイジメていた女。

 優花が寝言で、「れ、麗亜さんやめて。みんなを止めて」とうなされていたのを隣の部屋で何度も聞いた。


「そのお花、気に入ってくれたかしら?」


 机に置かれた花束を見てクスクス笑う。

 周りの連中もだ。

 これをやったことを隠す気もないってか。

 そして、他の連中もグルと。

 おもしれぇ。


「ええ、とても気に入ったわ。今度麗亜さんにも同じ形で花を贈るわね」


 宣戦布告だ。


「ま!」


 麗亜は、驚いた顔を赤くすると踵を返して自分の席へと戻った。

 ハハ、ほっぺた真っ赤にして怒ってやがる。

 少し溜飲が下がった。

 でもやることはそんなことじゃない。

 イジメを解決してやらないと。



 ……



 一時間目は体育。

 授業内容はバスケ。

 バスケは中学の時やってたから得意だぜ。

 試合開始から全力モード。

 相手を全員抜いてシュート。

 ポスっと軽い音を立ててボールがネットを通過した。

 みんな口をポカンと開けて俺のプレイに見入っていた。


 そうだ。

 優花は、運動神経がいいんだ。

 これ以上イジメをするなら仕返しがヒドいぞ。

 というメッセージ代わりだ。

 その後も相手チームを圧倒していると、


「痛っ!」


 と相手チームの女子が倒れた。

 足首を挫いたようだ。

 これもチャンス。

 倒れた子のそばへ行くと、軽々とお姫様抱っこで持ち上げてやった。

 どうだ。

 優花は、お前らを持ち上げられるくらい力があるからな。

 ちゃんと覚えておけよ。


「は、離してください!」


 抱っこされた女子が身をよじる。


「あ、あなたにお姫様抱っこだなんてわたくし、どうにかなってしまいます!」


 フンッ。

 イジメの相手に抱っこされるなんてどうにかなるくらい屈辱的ってか。

 知ったことか。

 俺は、唇が女の耳に触れそうなくらい顔を近づけると、


「絶対離さないわ。じっとしてなさい」


 冷たい声で囁いた。

 女子は、ブルルッと体を震わせた後、


「はい……」


 ふにゃりと体の力を抜いて顔を俯かせた。

 さぞかしビビったことだろう。

 お前たちが優花をイジメたから悪いんだ。

 ふと麗亜を見れば、赤い顔でこっちを睨んでいた。

 いや、抱っこされている女子をか。

 『何を怖がっているの!』と責めてるんだな。

 少しずつお前のイジメ仲間を減らしてやる。



 ……



 昼休み。

 みんなが俺を気にする中、一人堂々とぼっち飯を食っていると、


 ピンポンパンポーン

『一年一組の反町優花さん。生徒会室にお越しください』

 ピンポンパンポーン


 との呼び出し。

 飯を口に詰め込み、ご馳走様をして廊下に出た。

 生徒会室に着き、コンコンと扉をノック。


「どうぞ」


 中からの声を聞いて扉を開けると、そこにいたのは、長い黒髪にクールな眼差しの女子。

 この人、みんなが素敵と噂していた生徒会長だ。

 三年の水月みづき紗夜さやだったか。


「ようやく学校に来たのね、優花さん」


 知った仲のようだ。


「ひとまず服を脱ぎなさい」


 何!?

 服を脱げだと!?

 だが待て。

 今日は暑い。

 気を遣ったのか?


「ウフフフ」


 いや、違う。

 この女、頬を上気させている。

 興奮してやがる。

 やはりこれは全部脱げという意味の嫌がらせだ。

 イジメて興奮するだなんてとんでもない変態女じゃねぇか。

 まさか上級生からもイジメられていたなんて。


「さあ、優花さん、早く」


 舐めるなよ。

 たとえ相手が上級生だろうが権力者だろうが、ふざけた命令には従わないという意志の強さを見せてやる。


「お断りします」

「何ですって」


 眉をひそめる紗夜。

 それにかぶせて、


「会長こそ脱いだらどうですか?」


 言い返してやった。


「私が?」

「ええ。着ているもの、全て」

「と、突然何を!?」


 目を見張り顔を赤くする。

 予想外の反抗に怒り心頭か。

 だが容赦はしない。

 紗夜ににじり寄る。


「こ、来ないで!」


 紗夜が後退り壁に背をつけた。

 クールな眼差しでキッと俺を睨み上げてくるが、そんなくらいでビビるかよ。

 俺は、壁にダンッと手をつくと、紗夜の目を覗き込むように見下ろして、


「紗夜、脱げ」


 命令してやった。

 紗夜は、ビクリと肩を跳ねさせて、


「は……はい……」


 か細い声で返事をした。

 震える手でリボンタイをほどく。

 よしよし。

 これで優花は上級生相手でもひるまないと知らしめることができる。

 紗夜が、ブレザーを脱ぎ、ブラウスのボタンを外していく。

 下まで外し終えると、ブラウスをハラリと床へ落とし、キャミソール姿になった。

 ブラの白い肩紐が見えている。


「ゴクリ」


 思わず喉が鳴ってしまった。

 紗夜は、潤んだ瞳で俺を見つめながら、キャミソールの肩紐を右、左と外し、恥じらう表情でゆっくり下へと……これ、ダメだ。


「に、二度と変なことで呼び出さないでください!」


 あわてて生徒会室を出た。

 ヤバかった。

 男丸出しの顔になってしまうところだった。

 昂った気持ちを落ち着かせて教室へ戻ると、麗亜がこっちへきた。


「会長、何のご用でしたの?」


 イジメてる相手のそんなことを気にするなんて、さては会長を差し向けたのはこいつか?

 服を脱がされたことを聞いて笑うつもりだったんだな。

 趣味の悪い。

 だが、お生憎様。


「たとえ何をされても、私は落ちない」

「何ですって?」

「逆にあなたを落としてみせる」


 女王様気取りのお前を、その玉座から落としてやる。


「わ、わたくしを!?」


 麗亜の顔が耳まで真っ赤になった。

 よほど腹が立ったと見える。

 周りの女たちは、対立する俺たちを恐れて「はわわわわ」と身を寄せ合うばかり。

 優花は屈しない女だとだんだんわかってきたことだろう。



 ……



 放課後。

 ショートホームルームを終えて席を立つ。

 すると、


「ゆ、優花さん、ごきげんよう」


 おそるおそるといった感じに女子たちが挨拶してきた。

 フフフ。

 早くも今日の成果が出てきている。

 そう、優花をイジメると後が怖いぞ。

 仲良くしておいたほうがいいんだ。


「ごきげんよう」


 微笑み挨拶を返すと、「きゃー!」と黄色い悲鳴。


「今のはわたくしに言ったのよ!」

「いいえ、わたくしよ!」


 言い争ってる。

 これは慕われたのだろうか。

 成果が上がりすぎな気もするが、悪いことではない。

 教室を出て、昇降口で靴に履き替え外へ出た。


「キャーーーッ!」


 今度は本物の悲鳴が聞こえた。

 あちこちで上がっている。

 何だと見てみれば、素肌にコートを一枚着ただけの中年男が校庭を走り回っていた。

 変質者だ。


「助けてーっ!」


 と追われて逃げ回っているのは、一条麗亜。

 おあつらえ向きだ。

 ここで麗亜を助けて、恩を売り、さらには俺の強さも見せつけて二度とイジメる気が起きないようにしてやる。


「麗亜っ、こっちに来い!」

「っ!」


 気づいた麗亜がこっちへ方向転換した。

 涙を流して無我夢中で逃げてくる。


「うおぉぉぉっ!」


 俺は駆け出し、こちらへ走ってくる麗亜とすれ違いざまにジャンプ。

 変質者に飛び蹴りを食らわせた。

 俺の足裏が変質者の鼻っ面にヒット。

 変質者は、後ろにひっくり返ってノビた。


「しゃ!」


 グッとガッツポーズをして振り返ると、麗亜が腰を抜かしたように地面にヘタり込んだ。


「わ、わたくし、ヒック、わたくし」


 泣いてしゃくり上げている。


「あ、ありがとう、ゆ、優花さん」


 感謝の言葉を言うなんてな。

 絶好のタイミング。

 片膝をついて手を差し伸べる。


「これでわかったでしょう?」


 俺をイジメたらお前もこの変質者みたいになるぞ。


「え、ええ、わかりました」


 麗亜が俺の手を取った。


「わたくしも優花さんが大好きです!」

「そう、そういうこ……はい?」

「わたくしもう落ちています、あなたに! わたくしたち、両思いだったの!」


 抱きつかれた。

 きつくきつく。

 周りから、


「きゃーっ! 王子が求婚したわ!」


 とわけのわからない歓声が上がった。


「れ、麗亜さん、何を言っているの? 私をイジメてたじゃない。机に花を飾って」

「優花さんが気持ち良く過ごせるようにと毎日飾っていたでしょう?」


 毎日……。


「生徒会長は何の用だったのって聞いてきたでしょ? あれは生徒会長をけしかけて」

「生徒会長はあなたを恋人にと目論んでいるのよ! 嫉妬するのは当然よ!」


 あれ?

 あれれ?


「あ、じゃあ、上履きがなかったんだけど」

「ご、ごめんなさい」

「ほら! やっぱりあなたイジメを」

「優花さんが学校に来なくなって、どうしても優花さんを感じていたくて、わたくし毎日持ち歩いていたの」

「……」

「でもあなたが大好きだからよ! 愛なの!」


 もしかして、イジメってのは全部俺の勘違いってこと?

 顔を赤くしてたのは、怒ってたんじゃなくて、恋してたから?

 この変態女が優花に?


「そんな愛認めないわ、麗亜さん!」


 生徒会長の水月紗夜がきた。


「優花さんは私を選んだのよ! げんに今日、服を脱げと命令してくれたのだから!」


 この人も優花が好きなだけ。

 紗夜が服を脱げと言ったのは、当初の予想通り暑いからというだけ。

 頬を上気させていたのも、暑かっただけ。


「違うわ! 優花さんはわたくしの王子様よ! 今日お姫様抱っこしてくれたんだから!」


 この子は、嫌がっていたわけじゃなく、喜んでいただけ。

 麗亜がこの子を睨んでいたのは嫉妬の目。


「いいえ、わたくしの王子様よ! 入学の時から好きだったんですもの!」

「いいえ、わたくしの王子様よ!」


 みんなも優花が好きでキャッキャと話して、ウフフと笑っていただけ。

 わたくしもわたくしも。

 後から後から止まらない。

 女子たちに揉みくちゃにされる。


 そうか。

 優花が学校に行きたくないと言い出した本当の理由が今ようやくわかった。

 イジメられていたからじゃなくて、その真逆、好かれ過ぎてて学校に行くのが怖かったんだ。

 異性の壁を越えるくらいの愛が。


「優花さん!」


 みんなの声がそろう。


「あなたは我が校の王子様よ!」



 ……



「た、ただいま」


 疲れ果てて家に帰ってきた。


「おかえりなさ……勇樹!? あんた、優花の時みたく制服が泥だらけじゃない!」


 優花が制服をドロドロにして帰ってきたのは、みんなの愛情表現で揉みくちゃにされたからなんだよ、母ちゃん。


「お兄! 本当にスカート履いて学校に行ったの!?」

「おお、ゆ、優花」


 やっと部屋から出てきてくれたのか。

 短い髪にキリリとした眉毛、双子の俺と同じ凛々しい顔。

 なるほど、王子様か。


「勇樹っ、その様子だと、あんたの言ってた通りやっぱり優花は嫌がらせされてたのね!?」


 と母ちゃんが聞いてくるが、それよりもまず、


「す、すまん、優花。お前、前よりモテモテになっちまったかも」

「うわーーーんっ、お兄のバカーーーっ!」


 優花の泣き声がご近所中に響いた。

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― 新着の感想 ―
読んだことないけど、「マリアさまがみてる」かな?妹ちゃんの話だけで単行本1本はいけそうなくらいなポテンシャルがありそう。
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