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46話 鋼鉄銃人《アイアン・ガンマン》

 一方、その頃。

 シフレ達のグループも、ターゲットの一体に遭遇していた。


「アレは……」


 双子の兄の方、ゴルドは、短く切り揃えた髪の一房を指でくるくると巻きながら、目を細めた。


「土魔法で造られた魔力人形……多分、女神ガイアだ」


  ゴルドのその言葉に反応した、魔力人形――ガイアは。豊かに膨らんだ胸を揺らしながら、微笑みながら振り返った。


『……ア、ラ? ナ、ニ、カ?』


  その、ガイアの魔力人形らしからぬ色気と女らしさの前に。


「……わっ」

「……ッ!」


 ゴルドとシルバは、揃って顔を赤らめて目を背け。


「何食ったらあんなに大きくなんのよっ!」

「あっは〜委員長に同感(ど〜か〜ん)


 シフレとハルカは、謎の敵意を込めた視線でガイアを睨みつけた。

 二人は、同年代の女子よりも、身体の発育が遅れている傾向にある。そのため、最近それにコンプレックスを抱いているのだ。

 それをガイアは知ってか知らずか、片言の言葉で二人を指さして笑った。


『チイ、サイ、ワネー! ホホホホホホホ!』

「「喧嘩売ってんなら喜んで買うけど!?」」


 ガイアに煽られ笑われたシフレとハルカの二人は、顔を真っ赤にして激怒した。


「ゴルドくん、シルバくん。頼りにしてるね♡」


 ハルカは、仲良く揃ってガイアの豊かな双丘から顔を背ける双子の二人に、表面的に貼り付けた笑顔を向けた。その笑顔の裏には、煮え返るような怒りの感情が横たわっている。


「相手は女神様らしい、女みたいなナリしてるけど……だからって、倒せない理由にはならないわよね?」


  シフレもまた、ハルカと同じように表情だけの空っぽの笑顔を向けて、ゴルドとシルバに凄んだ。

  ちなみにシフレも、ハルカから説明を受け、ゴルドとシルバの二人が異性が苦手であることを既に知っている。

 トドメにシフレは、二人の背中を指先で突き、普段よりもやや低めの声で囁いた。


「あたし達とあの人形、二人はどっちの味方?」


  その言葉の裏に秘められた殺気――それに気づかないような、鈍感な感性を彼らは持ち合わせてはいなかった。

  ゴルドとシルバは、それぞれ声を恐怖で震わしながらシフレの問いかけに答えた。


「……聞くまでもないよぉ?」

「ああ……俺も兄貴も……アンタと同じチームなんだからな……」


 ガイアを視認したことによって紅潮していた二人の頬は、いつの間にか真っ青になっていた。それどころか、歯の根が噛み合わず、ガチガチと小刻みに振動すらしている。

  シフレは二人の返答に満足し、二人の背中から指を離した。

  ――彼女の手はその時、図らずとも、親指と人差し指を立てた……いわゆる、銃の形になっていた。

 それを見ながら、シフレは平静を取り戻し、この近くで戦っているのであろうリオに思いを馳せる。


「……リオは、大丈夫だよね……」


  彼女のその声は、臨戦態勢に入ったガイアの咆哮によって掻き消された。



△▼△▼△▼



 目の前まで襲い来るは、ウンディーネの放った無数の水の弾丸。

 僕は、生き残る術を探すべく、慌てて周りを見渡した。

 僕の前には、ランファくんとファイアくんがいる。ミィシャさんは、弾丸の射程圏内より少し離れた所にいるため、無事なようだ。

 ……魔導を目と脳に集中させることで、視界中がスローモーションのように見え、高速で物事を考えられた。


「チィッ」


 ランファくんは舌打ちをしながら、氷の刀を魔力を込めて振った。


「【氷魔法――剣舞――白澤吹雪乱はくたくふぶきみだれ】ッ!」


 氷の魔力が辺りに撒き散らすように放たれ、水の弾丸を凍らせた。凍ったことにより、少しだけ軌道が変わり遅くなった弾丸は、ランファくんの刀によって一個ずつ的確に打ち砕かれていった。ランファくんの右足は水の弾丸に撃ち抜かれているはずなのに、なんて魔法の冴えだろう。

 一方、ファイアくんは。


「【炎魔法――デラシウムウォール】!」


 地面に赤色の魔法陣を描き、そこから火の壁を現出させ、身を守っていた。

 二者二葉、それぞれの守り方で、身を守っていた――しかし、僕は。


(こんな量の弾丸を掻い潜れる魔法……なんかあるかなぁ!?)


 僕は、自分の魔法スタイルの最大の弱点に気づいてしまった。

 それは――範囲攻撃に弱いこと。更に言ってしまえば、防御力がほとんど無いということだ。

 僕のイメージシンボルは『銃火器』……早い話、銃弾で銃弾を防ごうとしても、普通に無理だ。物語に出てくるような凄腕のガンマンとかなら、自分の撃った銃弾で敵の銃弾を弾く、なんてことも可能なのかもしれないけど……僕にはできない。ちょっとした攻撃なら、ハリケーン・バズーカなどの高火力の魔法で無理やり相殺させれば問題は無いけど……今眼前に迫っているような範囲攻撃に対しては、バズーカ系の魔法では自分の身を守りきることができない。ランファくんのように刀で弾丸を弾き落とすことも出来ないし、ファイアくんのように壁を作り出すことも不可能だ。銃火器で出来た壁なんて、想像できないし……。それはただの鉄の壁じゃない?


(こんな土壇場で気づくなんて〜ッ!)


 僕にできることなんて……そう。それこそ、魔導で全身を強化し、身体を頑丈にさせるくらいしか――ッ!?


(頑丈……?)


 その時、僕の脳裏に閃いた、瞬時の直感。それは、天啓のようにも思えるほど、僕の思考回路を駆け抜け、脈動と共に全身を駆け抜けた。


(銃火器の壁は……()()()


 先程の自分の心中に浮かんだ言葉を再び脳裏に巡らせ、イメージとして魔力に載せて全身に流す……!

 イメージを載せて放つのは魔法じゃない……魔導だ!

 ――僕は瞬きを一度だけした。そして、目を開けた次の瞬間には……全身を、水の弾丸で撃たれていた。



 △▼△▼△▼



 全身を水の弾丸で撃ち抜かれたかのように見えたリオ。

 それは、ランファやファイア、ミィシャの三人だけでなく、リアルタイムでの遠隔映像でリオ達の様子を見ていた、メグミや学園長ウルティオルも両の眼でハッキリと確認した、紛れもない事実だった。

 轟々と落ちる滝に舞っているような水霧が、撃ち抜かれたリオの姿を覆い隠し、リオのシルエットのみが霧に浮かぶ。

 その、シルエットは――


「……倒れて、ない!」


 ミィシャは思わず、そう叫んだ。

 そう。リオのシルエットは、全身を撃ち抜かれたにも関わらず、倒れることはなく、揺らぐことすらせず、その場に不動に直立し続けていた。


「――【特殊魔導】か」


 彼らの様子を遠隔映像で見ていたウルティオルが、確信して、そう呟いた。

 メグミは彼の言動に首を傾げた。


「トクシュマドー……? リオくん、撃たれてたよね? それが関係あるの?」


 そして、そんなメグミの疑問に答えるかのように。

 水霧が晴れていき――


「ッ……間に合ったぁ」


 ――傷一つない、リオの立ち姿が、彼の安心しきった声と共に、ハッキリと姿を露わにした。


「「「無傷!?」」」


 ランファ、ファイア、ミィシャの三人は口を揃えて驚いた。

 それは、遠隔映像を見ていたメグミも同じ。目を丸くして、口端から食べていたスコーンの食べかすが落ちるのにも構わず、呆然と口を開けた。


「何で……全身、撃たれたよね……?」


 メグミのその質問に、ウルティオルが涼やかな顔をして答えた。


「【特殊魔導】。使える者は限られる、魔導による自己強化の一種だ。リオくんは、土壇場でそれを編み出したんだろう」

「……それ、何?」


 メグミがその質問をしている頃。ランファも、ウルティオルと同じ結論――即ち、リオが特殊魔導を使った、という結論に至っていた。

 親指の爪を噛みながら、ランファは冷や汗を一筋垂らし、特殊魔導について自分の知っている知識を総動員した。


(【特殊魔導】……書いて字のごとく、魔導の特殊バージョン! 魔力はイメージッつーあやふやなモンで動かす……その過程で稀に起こる、魔力が身体に起こすバグ……!)


 魔法は、個々人のイメージ力によって使用される。しかし、そのイメージなどというものは、人によって千差万別であり、一つも同じイメージは存在しない。

 そして、肉体を魔力で強化する魔導も、基本的にはイメージによって魔力を動かして使用する技術。

 魔法も魔導も、イメージという不安定なものを土台として成り立っているのだ。

 その結果……魔力や魔導のバグを引き起こす者もいる。今の、リオのように。

 特殊魔導とは、そのバグを利用して肉体を魔力で異常強化する裏技のようなものだ。

 リオは、自身の身体に傷一つ付いていないことを確認し、はっ、と大きく息を吐いた。


「特殊魔導……知識では知ってたけど、まさか僕が使えるなんて……」


 リオは、魔導に使用する魔力に、イメージを載せた。彼のイメージシンボルは『銃火器』……銃火器は大抵、“鉄”でできている。そして、リオの魔法は、自身を銃火器に見立てて魔力を撃ち出すという方式を取っている。

 つまり。


「自分自身の肉体を、銃火器みたいに、鉄の塊みたいに頑丈にする……そんなことも出来るんじゃないかって、思ったけど……良かった、成功した……!」


 よく見ると、特殊魔導を使用中のリオの全身には、金属光沢が薄らと浮かんでいた。それが、彼の身体が鉄の塊のようになったことを物語っている。

 そして、彼は感じていた……ただ魔導を使用するよりも遥かに早いスピードで、残りの魔力が消費されていく感覚を。

 その感覚から、己の特殊魔導の特性を察知したリオは、確かめるようにそれを言葉にした。


「名付けて……【特殊魔導――鋼鉄銃人アイアン・ガンマン】! 魔力の消費スピードが上がる代わりに、全身が鉄のように硬く頑丈になる……僕の、僕だけの魔導!」


 手を握っては離して、グー、パーと交互に繰り返しながら、リオは強く鼻息を吐いた。


「これで、怖いものなんかない……突破口をぶち開けられるッ!」


 そして、リオは足に魔力と筋力を込め、ウンディーネへと跳躍した。その際、足の踏み場となっていた太い枝はべキリと音を立ててへし折れた。それはまるで、落ちてきた鉄柱でへし折られたかのような断面を残していた。


「テメェは……どこまで俺を置いて行けば気が済むんだよ……」


 自らの後方から跳び立ち、ウンディーネへと真っ先に向かって行く、そのリオの背中を見て……ランファは一言、そう呟いた。

 しかし、その呟きは誰に聞かれることは無く。ランファの表情に、悔しさを滲ませるのみだった。

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