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39.5話 リオくんってムッツリだよね

時系列的には、リオが泳ぎの練習をしている辺りから、リオの泳ぎの練習にシフレとネミコが合流するまでの間です。

よろしくお願いします。

「……ぶはっ!」


 僕は水面から顔を上げた。

 今は、魔導の特訓のために、このロンリュー湖で泳いでいる所……なんだけど。

 僕はそもそも泳げないから、魔導の特訓の前に、まず泳ぎの特訓をしなければならなかった。

 そして今、ファイアくんとメグミさんに、その泳ぎの特訓に付き合ってもらっている所である。

 僕はファイアくんに手を引いてもらいながら、バタ足の練習をしていた。真っ直ぐに両手を頭の方に伸ばした状態で水面に浮き、足をバタバタと動かす……たったこれだけが、まだ僕はファイアくんに両手を持っていてもらわないとできない。もっと泳ぎの特訓をしておくんだった、と今更ながらの反省をした。

 メグミさんはそんな僕とファイアくんを見て、唇を尖らせて文句を言っていた。


「ぶー。あたしにだって、リオくんの手を引くことくらいはできるってのにさ。なんでそれすらやらせてくれないのさ!」


 メグミさんの不満は、主に僕へのことだ。

 僕がメグミさんに手伝ってもらうことを拒否している、という点にメグミさんは不満を抱いているのである。

 いや、まぁ、厳密には拒否している……って訳ではない、んだけど。だけど……。

 例えば、今、僕はバタ足の練習のためにファイアくんに手を引いてもらっている。そのまま顔を水につけて、息継ぎの度に顔を水面から上げて、前を見ながら息を吸う訳だ。

 その時、視界いっぱいに広がるファイアくんの胸筋を見て、思ったのだ。

 ――これ、メグミさんに手を引いてもらったら、息継ぎの度にメグミさんの胸が視界に入るんだな……と。白のビキニを着たメグミさんの、多分標準よりも大きいであろう胸が、視界いっぱいに……。

 そのことを想像した瞬間、僕は頭の中が雑念塗れになっていくのを知覚した。そして、想像だけでこの様なのだから、実際にその状況になってしまった時、僕は泳ぎの特訓に集中できなくなってしまうであろうことが懸念された。

 それは困る。泳げるようにならなければ、魔導の特訓もできないからだ。

 だから、メグミさんの厚意には申し訳ないのだけれど、一旦全てをファイアくんに頼んでしまっている、というのが現状なのである。

 ファイアくんは伸びをしながら言った。


「うっし。一旦、休憩しようぜ」

「えっ。でも、まだ……」

「泳ぐってのは、結構パワー使うからな。まだいける、まだいけるって思ってたら、いきなりドッと今までのツケが押し寄せてくる……それが泳ぎってもんだ。俺はそれで小さい頃、何十回も溺れかけた」

「何回も、じゃなくて、何十回も……? 最初の何回かで学ばなかったの……?」


 ファイアくんの言葉にしては、珍しく理路整然とした筋が通っていた。しかし、その背景に、ファイアくんが何十回も溺れかけたという事実があり、そこにやっぱり僕は、何て言うか……ファイアくんだな、って思った。

 休憩になると、またメグミさんが己の存在をアピールしてきた。


「よっしゃリオくん、それならばマッサージで疲れを癒してやろうぞ! 横になれい!」


 僕は言われるがままにうつ伏せの形で横になる。

 メグミさんの細い指先が背中に触れ、少しくすぐったさを感じた。

 その時。メグミさんが突然、僕の耳元に唇を近づけて、囁いてきた。


「ねぇ、ねぇ。リオくん。もしかしてだけどさ……あたしがバタ足練習参加させてもらえなかったのってさ」


 ……僕は横目でメグミさんの表情を見た。

 その表情は、明らかに悪戯を仕掛ける子供のような、今にも揶揄からかってやると言わんばかりのニヤケ面だった。

 あ……これ、気づかれてるな。メグミさんの胸が気になるから断ったこと、バレてるな。

 僕はそっぽを向いて、言った。


「……好きに思えばいいじゃないですか」

「……リオくん、段々、潔くなってきたね。もういっそ認めちゃえば? リオくんってムッツリだよね」

「そっ、そんなことはないですが!?」


 ちょっと待って、それは話が違う!

 確かに僕はメグミさんの胸が気になって、彼女の手助けを拒否した、それは事実! でもそれは、魔導の練習に集中したかったからだし、その他にも、そんな目で女性を見るのはいくら知り合いでも失礼に値するんじゃないかなとか、そういう、何て言うか……思いやり、とまでは増長しないにしても、それなりの考えがあって拒否した訳で!

 ていうかそもそも、思春期真っ盛りの男だったら、胸の谷間とかが視界に入れば嫌でも意識してしてしまうのもまた事実! それは僕個人の性格とか性欲がどうこうじゃない、生物学的な、人間の本能としての部分!

 それだけでどうして僕がムッツリスケベということになるのか!

 僕はそう言った内容のことをメグミさんに反論した……が。


「ムッツリくんって、皆、そんな感じだよね。やたら饒舌にベラベラと、失礼とかジェンダー論とか生物学とか本能とか、小難しく捻くり回した長いだけの言い訳をし続けるよね」

「はっ、そっ、そんなつもりじゃないんですけどっ!」


 メグミさんは前屈みになって、わざとらしく胸の谷間を僕に見せつけるようにした。

 彼女の腕に押し上げられた胸が、柔く揺れる。

 それだけで僕は、その旨の柔らかさとか重量とか、色々なことを考えてしまい、咄嗟に目を逸らした。

 そんな僕に、メグミさんは言った。


「いいか、リオくん。キミがあたしのおっぱいを気にしているのは事実だろ?」

「……それは、まぁ……えっと……その」

「リオくん。もし今あたしが『おっぱい揉んでもいーよ♥』って言ったら、どうする?」

「えっ……ッ!? えっと、えっ……えっと……ッ!?」


 僕は突然のメグミさんの言葉に驚き、目線をメグミさんに戻してしまう。

 すると、必然的に彼女の胸に目線が行き……僕は気恥ずかしさで顔が赤く熱くなっていくのを知覚した。

 そんな僕を見て、メグミさんは勝ち誇ったように笑った。


「遠慮も否定もしないね?」

「ッ……!」

「揉めるもんなら揉みたいんだね?」

「そっ……それは……!」

「まぁ、揉ませねーけど」


 メグミさんは見せつけていた胸元を隠すように、姿勢を前屈みの状態から元に戻した。

 そして、更にメグミさんは言った。


「今、ガッカリしたね」

「して……ないですけど」

「オーラでわかる。前言わなかったっけ? あたし、オーラ見ればその人が何考えてるかとかも、何となくわかるって」


 ……厄介な眼だ!

 僕は、メグミさんのその特殊な眼とマッサージ技術のおかげで、今魔力が使えていることを一瞬忘れて、そう思ってしまった。


「……ほら、ムッツリのリオくん。ムッツリオくん。マッサージ、してあげるから、おいで?」


 ……僕は敗北感に包まれながら、無言で渋々横になった。


「……あの、その呼び方。ムッツリオくんってのだけ、止めてもらえます?」

「いいよ。ごめんね?」

「……ムッツリじゃ、ないので」

「あっはっは、まぁ、そういうことでいいよ」


 その時、一瞬、背中にメグミさんの胸が当たった……そんな感触がした。

 メグミさんは言った。


「あ。当たっちゃったら、ごめんね?」

「……ムッツリじゃないので、全然気にならないので、大丈夫です」


 僕がそう言い返すと、また、メグミさんは笑った。

 ホント、いいオモチャだよ僕は……。

 僕はそんなことを思いながら、今の一連の出来事をシフレに見られていませんように、と心の底から願ったのだった。

 やっぱり、僕は、多分……メグミさんの言う通り、ムッツリなのかもしれない。そんなこと、シフレにバレたら……合わす顔が無いよ……。



 △▼△▼△▼



 シフレとネミコは、魔導の特訓の合間に休憩していた。

 二人共、魔導を調子良く身につけている。後もう少しで完全に自分のモノにできるだろう。

 そんな合間の休憩中、シフレが顔を真っ赤にしながら、ネミコに相談した。


「……ねぇ、ネミコ。恥を忍んで聞くんだけど」

「うん? なぁに? そんな顔を赤くして」

「……改めて今日、水着姿の皆を見て……思ったの。あたしも、胸……もう少し成長してもいいんじゃないかなって」


 周りで魔導の特訓に勤しむ同級生女子の胸は確かに個体差こそあれ、基本的に膨らみがわかる程度には膨らんでいた。

 ネミコは、そんな周りと、周りよりも少しだけ大き目な自分の胸と、その横で膨らみが全く見受けられないシフレの胸を見比べて、精一杯の言葉を選んで言った。


「……なだらかだもんね、シフレちん」

「……言葉を選ばれた感じが、逆に辛い」

「じゃあ、言葉を選ばずに。胸無いもんね、シフレちん」

「何で二度刺したの!?」


 シフレは目をかっ開いて突っ込んだ。

 そんな、周りと比べて自分を卑下して落ち込み気味なシフレに、ネミコは元気づけるように言った。


「ま、まぁまぁ、シフレちん! 結局の所はさ、リオちんにさえモテればいい訳でしょ! リオちんが大きいおっぱいが好きとは、限らないんだし――」

「限るのよ」

「……え?」


 ネミコは、遠い目をし始めたシフレに、聞き返した。

 シフレは遠い目で湖の水面を眺めながら、語り始める。


「幼馴染だからわかる。リオは……ムッツリよ。胸の大きな女性にリオの視線が行くのを、何度も確認している」

「……そ、それはそれは」

「あ、誰にも言っちゃダメよ。ネミコだから話したの。信じてるから」

「あ、はい」

「リオにも言っちゃダメだからね。リオ、あたしに気づかれてないと思ってるだろうから」


 ネミコは、魔導の特訓ついでに魔導で視力を強化して、やや離れた場所で魔導の特訓……の前の泳ぎの特訓をしているリオに視線を移し、苦笑いを浮かべた。


「リオちん……将来、シフレちんに尻に敷かれそうだね」


 ネミコは、シフレの肩に手を置いて、言った。


「……まぁ、さ! 女の価値なんて胸だけじゃないぜ! ほら、早く魔導身につけて、リオちんの特訓手伝ってあげよ!」

「ネミコ……」


 ネミコの言葉で火が点いたのか、この後シフレは一〇分も経たない内に魔導を身につけた。

 そして、ネミコにもコツを教え、二〇分ほどでネミコにも魔導をマスターさせ、リオの元に合流したのだった。

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