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第二編『間違い探し』/第三章「夜鷹」

九月。

空気中に夏の暑さを残しながらも訪れたらしい読書の秋。しかしなんとなく小説を読む気にもならず、天井を見つめながらお笑いラジオなどを聴いていたがそれも聴き終わり、いよいよやることがなくなってしまった。外へ行ったり小説を書いたりするほどの気力はなく、かといって眠たくもなく、ひたすらに退屈な時間が流れ、暇すらも癒しに思えた彼女とのあの日々のことを思う。彼女と別れてからいつの間にか半年が経過してしまった。間違い探しの答えは依然わからず、彼女が我がもとに戻ってくる様子も未だない。彼女はいったいなにをしているのか。俺はずっとここにいるというのに。

漂い始めた寂しさを振り払おうと気力を起こし、なにか暇を潰せるものがないかと押し入れを漁る。暗い押し入れにはあまり物が入っておらず、小学生の頃から使っているボロボロの国語辞典を見つけ開いたが、文字が多すぎてムカムカするという小説家志望にあるまじき理由ですぐに閉じた。そうして他になにかないかと漁ると平くて赤い箱があった。確かこれは写真が入っている箱である。最近はもう撮らなくなってしまったが、高校時代からそれなりに写真を撮ることが好きで、一年程前まではよく色々な風景などを撮っていた。どんな写真があったかなと箱を開けると、まず目に飛び込んできたのは猫の写真であった。そのめんこい猫の様に癒されながらもその写真を手に取って横に置き、次の写真に目をやるとそこには、なにか鬱陶しく自慢をしてきそうな少々顔の整った茶髪の男と、ピチピチの服を着た肉塊が写っていた。言うまでもなく芝と金沢である。この我が部屋での写真で、なにか二人で対戦型のテレビゲームをしているようであり、金沢は気持ちの悪い顔で笑ってこちらにピースをしていて、芝はこちらには目もくれずゲームに集中しているようである。もう二年程前の写真のようだったが、二年後の今もなにも変わっておらず、まるで成長がない。気持ち悪い二人の男など見たくもないのでその写真をどかし、他の写真を見ていくと、そこには綺麗な花や大きな鉄塔、夕暮れの公園や夜の街など、様々な景色が焼き付けられていた。そこまで前のものではないのに、こうして焼き付けられたものを見るとえらく懐かしく思える。そうして写真を漁っていると、橋の上から川を見つめる女性の後ろ姿が写った写真が出てきて、無論その女性とは白戸さんであった。



カメラのシャッターが下りる音を聞いて彼女はこちらを振り向き「今撮りましたね」なんて言って少し笑った。普段は物静かな彼女も、京都に旅行へ来ていることもありテンションが上がっている様子で、それがまた愛おしかった。

橋から川沿いの道へと移動する。鴨川沿いの道を少し飛び跳ねるように歩く彼女は、そのまま飛び跳ねて鴨川にドボンと落ちていってしまいそうな勢いで、いやはやさすがにそれは困るなあと思い、だから僕らは手を繋いだ。



その写真の下には旅館での写真があった。風呂上がりであろう、少し髪の濡れた白戸さんが、机の上に広げられた豪華な料理を前に、こちらを見て可愛らしく笑っている。



「早く食べましょ」

そう彼女が言うのを聞いて俺もカメラを置いて手を合わせる。二人で声を揃えて「いただきます」と言うなり彼女はすぐに食べ始め、たちまち可愛らしい笑顔になった。



溜め息を吐いてそれらの写真を箱に戻し、押し入れの奥にやった。彼女の、俺にしか見せないようなあの可愛らしい笑顔がまた目の前に映るように感じて、それを消すために違う人の顔を目に焼き付けようと思い、高校時代の卒業アルバムを久しぶりに開いた。クラスの集合写真のページを見やるといつものなにか鬱陶しく自慢をしてきそうな少々顔の整った男と、ピチピチの制服を着た肉塊が写っていた。その気持ち悪い様を見て俺はなにか安堵のようなものを覚えた。そしてそのページの右上を見やると、四角いワイプの中に可愛らしい顔をした少女が写っていた。久しぶりに見たその顔に懐かしさを感じた。少女は確か卒業前の十二月に事故で亡くなってしまった、朝川(あさかわ)という生徒だ。友達も多く、男子からの人気もそれなりにあった生徒で、クラスの端で醜い肉塊たちとクソみたいなことを語り合っていた俺からすれば無縁にも感じる人物であったが、そんな俺にも何度か話しかけてくれたことがあった。思えば今まで忘れてしまっていたが、俺が小説家を志したのは彼女の言葉がきっかけでもあった。確かその日は金沢が休みで、芝も他の生徒と喋っており、休憩時間に喋る相手がいなくて、一人で教室にいるのも落ち着かず、校舎の端の方へ行ったんだった。そしてそこで俺は彼女、朝川さんに会い、少し話したんだ。



「竹野くんって将来の夢とかある?」と尋ねてきた彼女に俺は「いやぁ、特にないかな。...い、一応趣味で小説とかは書いてるけど」と久しぶりの女子との会話に緊張しながら返答した。そしてそれに彼女は「へーすごい!どんなの書いてるの?」と言ってきて、俺は気持ち悪く照れて調子に乗った挙句「え、ちょっと見る?」と少し前に書いた小説を彼女に見せた。彼女は俺の書いた短い青春小説を大きな瞳で真剣に読んでくれた。はじめて人に自分の書いた小説を読まれているという状況に落ち着かないでいると、じきに彼女は読み終えたようで、俺に対し「すごい」と言って目を輝かせた。そして次に彼女はその可愛らしい声で「小説家になれるよ」と俺に言った。



今思えばそれはただ俺に気を使って言ってくれたお世辞だったのかもしれない。でも俺はその言葉がすごく嬉しくて、そこから小説家という夢を真剣に考え始めた。

結局俺がモテない男特有の勘違いを発動して惚れそうになっているうちに彼女は事故で死んでしまって、片想いの恋が始まることもなく青春は幕を閉じ、彼女のその言葉に導かれるかのように俺は小説家を志して東京へ来た。彼女が導いたと言っても過言ではないこの道が果たして正解だったのか、それはまだわからない。




十月。

金木犀の香りが風に乗る秋の中、金沢の通う大学で文化祭があるということで芝と二人で行ってみることにした。

大学に到着し「お前どこだ」と金沢にメールを送ったが何故か頑に教えてくれなかったので、金沢を探しつつとりあえず大学内をぶらぶらすることにした。屋台で見たことのないスイーツを販売していたのでそれを購入し、得体の知れない甘すぎるそれに二人して眉を顰めながらも歩いていると広い中庭があり、そこにはステージが用意されていた。なにか出し物があるようで既に大勢の人が集まっていた。空いている席に座って二人で金沢の悪口を言っていると、ステージで爆音の音楽が鳴りだした。なにが始まるのかとステージに目をやると、なんということか露出度の高い服を着たたくさんのおなごがステージ上に出てくる。「これはこれは」と心中で呟き凝視していると、おなごたちはえらく激しいダンスを始めた。会場にいるたくさんの人から歓声や拍手が起こる中、俺たちはナニカがチラリと見えるのではないかと期待し、じっと見続けていたが最後までそのようなことはなく、肩を落として投げやりな拍手した。おなごたちがステージからはけていくと今度は楽器のセッティングが行われ、じきにバンドの演奏が始まった。流行りのバンドの曲が演奏され、どうやら芝はそのバンドが結構好きらしく、なにか身体を揺らしていやがる。それになんだこいつと思いながらも知らぬ間に俺の身体も揺れていた。そうして演奏は続いて会場も大いに盛り上がり、俺も前のめりになっていたのだが、急に腹が痛くなってきたので仕方なく芝を置いてトイレへと向かった。

広いキャンパス内で少しばかり迷いながらもなんとかトイレに辿り着き「あのわけのわからん甘すぎる食べ物がダメだったんじゃないか?」なぞと心中で憤怒の声を上げながらも、便器に座りフンを出した。

安堵の息を吐きながらトイレから出て角を曲がると目の前にでかいホットドッグが立っており、俺は「ぬわわあああ!?」なぞという間抜けな声を出して尻餅をついた。目の前の巨大ホットドッグも同じような間抜けな声を出して後ずさっており、俺が見開いた目で何者かと確認するとそれはホットドッグのきぐるみを着た人間のオスであった。男はくりぬきの穴ところから顔を出しており、ホットドッグのソーセージとケチャップとマスタードの柄に合わせ、顔を赤と黄色に塗っているようであった。そのはち切れそうになっている着ぐるみから予想される体型といい、くりぬきの穴からポンと出されたまんまるな顔面といい、その男の正体はまるで見知った肉塊のようで、というか間違いなく見知った肉塊であった。しかし当の肉塊はこちらに気づいた様子はなく、おどおどと謝ったのち、こちらの顔も確認せずにそそくさとトイレの中へと消えていった。そうして俺は、これはいいものを見つけたぞと中庭の方へ早歩きで戻った。


中庭に戻るとステージにはセンターマイクが一本立っており、丁度俺が入ってきたタイミングで元気な声を出しながら二人の男が出てきた。そうして始まった特別面白いわけでもないその漫才に会場も俺も苦笑いを浮かべていたが、芝だけがゲラゲラと馬鹿みたいに笑っており、やはりこいつとは笑いのセンスもエロのセンスも合わないなあなぞと思いつつも、もっと面白いものを見せてやろうと、笑い転げる芝を引っ張り中庭を出た。そして少し探したのち見つけたホットドッグの屋台を指差し「あれ食おうぜ」と芝に提案して列に並ぶ。徐々に近づく屋台、じきに店の奥で恥ずかしそうにしている先程の巨大ホットドッグの姿が見える。まだ気づいていない芝の肩を叩き、ニチャアと笑みを浮かべながらその巨大ホットドッグを指差す。すると芝もニチャアと気持ちの悪い笑みを浮かべる。じきにようやくこちらの存在に気がついた金沢は今まで見たことがないような顔で驚き、恥ずかしそうに俯いた。金沢の顔は赤と黄色に塗られており、こちらから顔色を認識することはできなかったが、きっとその塗られた赤よりも赤い顔をしていただろう。

そうして俺と芝は「来てよかったな」と笑いながら、購入したホットドッグを齧って帰った。

後日笑い者にしながら本人に聞いた話によると、文化祭の少し前に突然おなご集団が声をかけてきたらしく、大学内に全く友達がおらず、今まで文化祭にもほとんど参加していなかった金沢はそれに舞い上がり、そのおなご集団に言われるがままにあの着ぐるみを着てしまったとのことで、その間抜けさにまた笑った。しかもそのおなご集団とは結局それ以降お近づきになることもできないままなにも起きず終わったらしく、俺は指パッチンを鳴らした。芝も指パッチンを鳴らしていた。俺の指パッチンの方が良い音をしていた。



バイトはというと変わらずコンビニで働いており、最近歌井さんの遅刻が酷く、それに少々の怒りを覚えつつも、歌井さん以外に話すような相手もいないので、暇な時間はよく二人で雑談をしている。歌井さんには彼女がいるらしく、最近はいつも彼女との惚気話をしてきていよいよ芝よりも鬱陶しくなってきた。

そうしていらぬストレスを感じながらも、白戸さんへの送りもせぬ虚偽手紙を書いては小説を書かずに寝るという相変わらずな生活を送っているうちにまた月が変わった。




十一月。

芝が突然「青春ロードムービーみたいなことがしたい」と言いだしたので、バイトが休みの日に三人で集まってレンタカーを借り、なんの計画もないまま、唯一免許を持っている芝の運転で昼頃から宛てもなくとりあえず北へと走りだした。国道を走り、じきに見つけた国道沿いのラーメン屋に入って昼食をとり、その後コンビニで大量のお菓子やジュースを購入し、汚いパーティのようなものをしながら長く続く道を走った。勿論レンタカーの料金もなにもかも金沢の奢りである。

普段言い慣れない「うぇーい」なぞという言葉なのかもわからぬ言葉を発している男三人を乗せて、空を映した川やえらく綺麗な紅葉の道などを車窓に流しながらレンタカーは進む。そうして無駄に騒ぐのに飽きたらまたいつものようにエロ談議を始め、するとまたも俺と金沢で対立し、狭い車内で「ぶち殺すぞ!」なぞと罵声を浴びせていると運転中の芝がまたケラケラと笑いだし、途中笑いすぎて危うく事故を起こしかけたりもしたが、なんとかエロに対しての愛を分かち合って和解し、事故も免れた。そうして車を走らせていると道沿いになにかえらくレトロな感じの大人のお店があり、エロ談議でムカムカムラムラムクムクし始めていたこともあり、一か八か三人で行ってみることになった。


店内は少し古びてはいたものの、以前行ったおっパブと似たような感じのピンク色の空気が漂う雰囲気であった。そうしてそれぞれおなごを指名をし、バラバラに分かれて椅子に座り、ソワソワしながらそのおなごを待った。じきに登場したおなごは痩せ気味であるが割と綺麗めで、安っぽいナース服を着ており、これはこれは本当にありがたい限りである。おなごの「どこから来たんですかあ?」という質問に「と、東京です」と答えるとおなごは「えー、そんな遠くからぁ」と対して興味もなさげに言う。とりあえず注文したドリンクを喉に流し込むが、我が愛息子チン三郎は早くもそれどころではない。じきにナースは横へ座り、少しして俺の身体に触れてくる。身体中がみるみる熱くなっていき、思わず「ふう〜ん」なぞという間抜けな声が出る。その後シャツのボタンをゆっくりと外されていき、じきにベルトを外され、ズボンとパンツも脱がされる。そうしてナースの素晴らしき健診に「んぅ〜」や「どぅわぁ〜」なぞという声を漏らしていると、ビシッと起立していたチン三郎はいつもの焦り癖を発動し、すぐに歓喜の声を上げた。


腑抜けた顔で店から出るとまだ二人とも戻ってきていなかったので、そそくさと車の中に隠れようと思ったが鍵がかかっており、どうしたものか悩んだ挙句、人目を気にして、夕暮れ時、大人のお店の前で一人、ジョギングしているふりをした。じきに金沢が腑抜けた顔で出てきてそのすぐ後に芝も出てきたのだが、芝はなにか少し不満そうな顔をしていた。なにが起こったのかと話を聞くと、なんと写真と全然違うおばさんが出てきて、しかもなんたることかえらく下手くそで苦戦したのだという。その話に俺と金沢がケタケタと笑っているとなんたることか芝はこの愛おしき俺たちを置いて車で走り出そうとしやがったので、二人で必死に謝って止めた。


そうしてまた走り始めたレンタカーは、じきに高速道路に乗って夕暮れの風を切り始めた。夕焼けがえらく綺麗で、男三人、珍しく黙って見惚れた。

少しして日が暮れたのち、サービスエリアに入った。車が止まった途端「腹減った腹減った腹減った」と言って金沢は光の中へと消え、芝も「サービスエリアといえばソフトクリームだよなあ」と言って別方向の光の中へと消えていった。俺はトイレという名の光の中で小便をしたのち、車のそばに戻り、ボーっとサービスエリアの建物を眺めていた。静かな夜の中で燦然と輝くサービスエリアの光と秋の虫の声は俺を夜空へ浮遊させていくようで、気づけば目の前に二つのソフトクリームを持った芝がいた。「うい」と言って差し出してきたソフトクリームを受け取り、そばにあった花のない花壇の縁に二人で座った。

「これからどうするよ」と言ってソフトクリームを舐めた芝に「どうしまひょ」と崩れた返答をして俺もソフトクリームを舐める。「さっきソフトクリーム買いに行ってる時に冷静になっちゃってさあ、俺明日の夜用事あんだよなあ」と言って芝はまたソフトクリームを舐め、それに「帰るか」と返し俺もまたソフトクリームを舐めた。

それから少しの間、お互い黙ってソフトクリームを食べ進めていると、遠くから「ねえ!ここの地面めっちゃ良い匂いする!」とよくわからないことを叫ぶ金沢の声が聞こえる。口調からして酒を飲んだのだろうということはすぐにわかり、なんか面倒臭そうだし俺も芝も無視をした。

そうして金沢の意味のわからない言葉をBGMに俺は「また調子悪いのか?」と芝に言葉を投げる。すると芝は「んーまあ大丈夫よ」と気持ち悪い口調で言葉を投げ返してきた。その返答でやっぱりあまり調子がよくないのだろうなと思った。

芝は毎年このくらいの季節になると精神的に調子が悪くなり始め、じきに冬になると冬眠するように大人しくなる。今回突然「青春ロードムービーみたいなことがしたい」と言いだしたのもその前兆なのだろうということはすぐにわかった。それはおそらく、今遠くで地面を舐める奇行をしながら「にげっ!」とほざいている金沢も察していて、金のない俺らの代わりに費用のほとんどを払うことになるだろうということをわかりながらもあいつがこの誘いに乗ったのは、きっとそれもあってだと思う。

そうして俺が察したのを察したのか「まあでも夢追ううえでこういうのは仕方ないんだと思うわ」と言ってソフトクリームのコーンを齧った芝に「まあなあ」と共感の気持ちを乗せて返して俺もコーンを齧った。すると芝は「今はもうやりたくてやってるって感じでもないし」と言ってきて、少し意外に思い「そうなんだ」と返すと芝は「いややりたいはやりたいよ?やりたくてやってるけど、っていうよりはもうなんか...ちょっと違う感じかな」と訂正しているのかどうなのかよくわからない返答をしてきた。でもなんとなく言っている意味はわかって、だから「じゃあなにが目的で、そんなしんどい思いしてまでやってんの?」と、前から己に対しても抱いていた疑問を芝に投げかけると、芝は「んー」と唸って少し考えたのち、呟くように言った。


「納得のいく人生にするためかな」


夜の中にその言葉が浮き、一つ風が過ぎ去ったのち、スッと腑に落ちた。大した努力もしていない俺が共感するのは少し烏滸がましいが、それでも、本当にそうだと思ったから。芝のその言葉が、身の程を知ったうえでそれでも夢を追うと決めた者の答えだと思ったから。



ソフトクリームを食べ終えた芝はトイレへ行き、俺は夜の中に取り残される。遠くからは依然、良い匂いのする地面を舐めたらしい金沢の「苦すぎる!うわあ!」という声が聞こえてくるがそれは無視し、なにか溜め息を漏らしながら携帯を触る。習慣のように白戸さんのSNSを覗くと一つ更新があった。つい先程投稿されたばかりの月の写真があり、俺は携帯の中の月から目を離し、実物の月を見上げ眺める。月には彼女の可愛らしい顔が縫い付けられており、俺は眉を顰めた。

広い夜の中で俺は眩しい芝と白戸さんの影に入って項垂れ、金沢はミネラルウォーターでベロを洗っていた。

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