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変わった客②


「そういや、あんた何者なんだ?」


イズターのその問いに、男は笑みを浮かべながら答えた。


「私はリフェル。普段はウルガノールで公務員を

 している者です。」


「?!あそこ魔物の巣窟だろ!!」


「それは東の入口の方ですね。都市の防衛の為に、

 わざとそのままにしてあるんですよ。

 世界連盟未所属国なので、何かあったら自分達で

 対処しなくてはいけないんです。」


 世界連盟とは、この世界の平和と安全を維持し、

大災害があった際の援助やそれぞれの国をよりよくする為の

会議等を行っている、人間界でいう所の国連の様な組織である。

この時代に未所属なのは数ヵ国だろう。


ソファで一息つこうとそこに向かって足を進める

リフェルだったが、ふとトートバッグが奇声を発し始めた。


「ギイィイイィ!」


「ああ、もう・・・。ルーゼ静かに!今出しますから

 待って下さい。」


リフェルが半分キレながらトートバックを逆さにし

上下に強く揺らすと黒い物体が床に落ちた。


床に落ちた少年───ルーゼは

外に出れたと分かるや否や、四足歩行状態で走り出そうと

したが、リフェルはそれも予測済み。

素早く彼の両足首を掴み、動きを封じた。


「センセッ!ハナセッ!メシ食エナイ!」


「全裸で出てくる奴がいますか!

 また服破って!」


「服イヤ!カサカサ、キライ!」


「せめてタマは隠しなさい!!」


リフェルの手を何とか振りほどこうと、ルーゼは思い切りジャンプ。

そして彼の思惑通り、足は抜けた・・・・・が、着地に失敗した。

しかも顔面を強打ため、かなり痛かったのか、ルーゼは床に

突っ伏したまま小さく震える。


「何やってるんですか貴方は・・・。」


「・・・痛イ・・・痛カッタ・・・。」


「お目汚し失礼しました。ほら、服着ますよ。」


先ほどまでの暴れっぷりが噓かの様に静かになったルーゼに

リフェルは素早く服を着せるのだった。


~~~


ポンチョのような服を着せられ、リフェルの膝の上でしょんもり

しているルーゼは、少し子供っぽく見えた。


リフェルによると、他の種族を襲って食べる

食人鬼(グール)に近い種族で、年齢は推定五歳。


炭の様に黒い肌と横に長いとがった耳、銀色の髪と瞳は、

その種族だけの特徴で、人身売買市場では高く

取引されることもあるそうだ。


「ルーゼは元々孤児だったようで、

 初めて会った時も一人でした。」


「どこで会ったの?」


 フレムがルーゼに金属のお盆を手渡し、ダイニングテーブルに

料理を並べながら、リフェルに聞く。


どうやらお盆は、気をそらす用に買ったらしい。

ルーゼはお盆を始めてみるらしく、持ち上げてみたり、

たまに嚙みついてみたりしている。


「三年ほど前、家の外で物音がしたので出てみたら、

 この子が私の自慢の庭園を、そりゃあ酷く荒らし回って

 くれてまして・・・。そこを捕まえたのが出会いですかね。

 ふふふ・・・。」


「なに?そんな悪い事してたの?」


「ジャリジャリ、キラキラ、イッパイアッタ。」


「そっかぁ。気になったんだねぇ。

 ・・・相変わらず大変だね、()()。」


「トリスタン様と貴方に比べれば、マシですよ。」


「ひっどー。」


二人の会話が少し引っかかり、首を傾げるイズター。

それを見たトリスタンがぼそりと。


「あいつ、俺の家庭教師でさ。遊びに来てたフレムにも、

 勉強教えてた時期があるんだよ。二人して、

 ロクに勉強しなかったけど。」


「ああ、なるほど?」


~~~


 そうこうしているうちに準備が出来たらしく、

実家で妹(一歳)の初めて立った記念日パーティー中の

エレーナとエリーナを除くこのメンバーで、夕食会が始まった。


「ほらルーゼ。ご飯・・・やめなさい!」


「ガァウ・・・。」


「そんなに食べたいの?僕の料理。

沢山あるから大丈夫だよ♪」


ルーゼの食い意地は凄まじく、目の前に置いてある

取り分けて食べる用のハンバーグに必死に食らいつこうとしている。


堪らずリフェルが取り分けてルーゼに近づけると

九センチ四方ほどの塊が一瞬で彼の口の中へ。

頬袋に餌を貯めているリスの様な状態にも関わらず、

目線と手と体はもう別の料理に向いている。


「ルーゼ!いけません!せめて食べ終わって

 からにしなさい!」


「ンムグ・・・。」


「そうそう、よく嚙んで・・・って飲み込めば

 いいって事ではないですよ?!」


「超元気じゃん、ルーゼ君。」


「そうなんですフレム様。すっごく元気なんです。

 だからこそ大変で・・・ああ掴まない!」


「ンマー!」


「美味しい?良かったぁ♪あ、皿はブンブンしないでね~?」


いつもとは違ってカオスな食卓に、イズターとトリスタンは

引き気味だ。


「フレムの奴、この状態でも通常運転ってすごくね?」


「俺なら、あのクソガキの首根っこ掴んで外に

 放り出すな。」


「・・・マジでやりそうで笑えねぇからやめろ。」

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